3話 屑野郎の匂い
大統領の執務室から出ていく私。
はぁ、嫌になっちゃうわね。「魔法研究所」って何なのよ。魔法を使えない人が魔法の研究をして何になるのよ。
「どうされました?タカリナ様、顔が真っ青ですよ」
いきなり出てくる騎士団長のユリエル。大統領はコイツを私のお世話役に選んだようだが、どう考えてもミスマッチだ。こいつは私の平騎士殺しを憎んでいて、私に対して刺々(とげとげ)しい態度を隠そうともしない。
正直言って苦手だ。
「いえ、この国の“大統領”と出会ってたのよ。誰だって緊張して、真っ青になるものではなくて?」
「確かにそういうモノですね」
と騎士団長のユリエルは無愛想に言った。
「私が貴方の親友を殺してしまった事、まだ気にしてるの?」
「はい。こういう事は割り切れるものじゃあありませんから。太郎は、女性である貴方に剣を向けるような男じゃなかった。貴方は“嘘”をついている。そう考えています」
「えーっ?!そんな…。私がそんな人間に見える?」
「はい。貴方からは“屑野郎”の匂いしかしない」
そういえば、最近、肩の怪我のせいで、お風呂に入っていなかったことを思い出す。そのまま、騎士団長のユリエルとは一言も会話をせずに、官邸の離れの客室まで案内されて、簡単な書類を渡された。目を通せという意味だろう。
中には給与面やら就業規則について書かれていた。
私は、官邸の離れの客室へと入る。
そして、そのままベッドへとなだれ込んだ。
疲れた。