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第1章

 木々がそれぞれの色を身に纏う秋、

とある地域の公民館で、老人と高校生の孫が双六に興じていた。

ところが、場の雰囲気は和気あいあいには程遠い。

「6が出ればゴールじゃな」

皺の刻み込まれた掌から放たれた賽子(サイコロ)は、願い通りの出目を見せた。

「よしよし」

ほぼ新品の白い駒をスタート付近に取り残し、

年季の入った傷だらけの黒い駒がいそいそとゴールに到着。


 「くそ、また負けかよ」

秀一(しゅういち)は本当に双六が下手じゃのう」

「双六はただの運だから、下手とか上手とかないよ」

老人は駒を片付ける手を止め、嘆く孫を語気を強めて諭した。

「まだそんなことを()かしておるのか。

 それでは、いつまで経っても強くはならんぞ」

「じゃあ、あと他に何があるって言うんだよ」

ゆっくりと開かれる老人の口。そこからはいつも決まった言葉が出てくる。


「精神を落ち着かせてみるんじゃ。それが極限に研ぎ澄まされた時には、

 賽子が自ずと応え、狙った出目になる」


「いい加減にしてくれよ、じいちゃん」

その話は聞き飽きたと言う風に、秀一はまるで取り合わず玄関へ向かう。

「明日が全国大会の決勝戦じゃろ? 日本一になって帰ってきておくれ」

彼はろくに返答もしないで、そのまま公民館を後にした。


「俺にとっちゃ、双六なんてただのお遊びさ」


 秀一は目指す場所へ歩きながら、何とか自分を傷つけまいと言い訳をする。

けれども実際、彼の胸中は虚ろな不安に満ちていた。

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