ドラゴンの捕食者
「お疲れ、マカ」
「ありがと。別に大して疲れてないけどね」
マカは平然と言ってのける。さすがは体力9999なだけあるな。
こうして目下の脅威は取り除かれたわけだが、一つ心配なことがある。
俺のスキルポイントが尽きないかということだ。
魔王領に入って約四時間。俺は五分経つごとに体力、防御力に100万ずつスキルポイントを割り振り続けている。万が一魔王以上の脅威が現れたときのための予防策だ。
四時間だから、9600万ポイントを消費したことになる。まだおよそ4億ポイント以上残っているとはいえ、このペースで消費していてはいずれポイントが無くなってしまう。日を跨いでも2000万ポイントしか増えないんだからな。
さっさと掃討任務が終わってくれることを願うばかりだ。
「にしても、早速三人も死ぬとはね。魔王亡き後も……いや、魔王が死んだことでここはより危険になっているのかもしれない」
不吉なことを言うなぁ。
「早速といっても、もう四時間経っているからな。それなりに深いところまで来てるんだろ」
「そうね。クリスタルドラゴン以上の脅威が出ないことを願うばかりね」
とは言ってもなぁ。
クリスタルドラゴンがわざわざ岩肌に擬態していたということは、それ以上の天敵がいるということ。それもすぐそこに。
「そうも言っていられないと思うぞ」
俺はすかさず、「素早さ」に100万スキルポイントを振り分ける。
「え?」
刹那、天空から針が伸びてきた。恐ろしく速い。だが俺は素早く飛び上がり、皆の盾となるよう身一つで受け止めた。
もちろん俺の身体は貫かれず、逆に針の方が砕け散った。
直後、重低音の唸り声とともに、雲の中から、巨大なウニのようなモンスターが現れた。それもかなりデカい。そいつは、クリスタルドラゴンの意外に無数の針を突き刺すと、そのまま空中へと持ち上げ、バリバリと音を立てて噛み砕いた。
「な、なにあれ……」
さすがのマカも驚いているようだ。
まぁそうだろう。ドラゴンすらも捕食するモンスターがいるなんて普通は考えない。生態系の頂点と言えばドラゴンなんだからな。
俺は攻撃力に100万スキルポイントを振り分けた。
「じゃ、奴が魔王より強いか、ちょっと確かめてくる」
「え、ちょっと待……」
俺は思い切り足に力を込め、飛び上がる。奴のもとにはすぐにたどり着いた。無数の針……いや棘か……が襲いかかってくるが、全て俺の1000008の防御力の前では無意味。全て折れるか砕けた。
「さぁ、ぶっ飛べ」
攻撃力1000010の殴打を放つ。触れてはいないが、余波でモンスターは消し飛んだ。
なんだ。
魔王より弱いとは拍子抜けだな。