第一級魔術師
「はいはい」
俺がどうというより、マカの金稼ぎに付き合わされているかんじか。
適当にクエストの詳細を見る。やはり事前情報通り、魔王軍幹部は皆殉死しているようで、大したモンスターは残っていないようだ。
「簡単そうだな。マカ一人で十分なんじゃないのか?」
およそ俺の護衛が要るとは思えない。むしろステータスアップしていないタイミングを狙われたら、俺の方が危ない。
「今回の真の敵はモンスターじゃない」
「どういうことだ?」
さっき言っていた、『世界の闇』どうこうと関係があるのだろうか?
「あまり大きな声では言えないけど、今回のクエストには第一級魔術師も参加するの」
「第一級魔術師か……」
世界に三人しかいない、魔術師の頂点たる存在。その動向は国際情勢にも影響を及ぼすという。
「研究にばかり勤しんでいる連中かと思ったが、このタイミングで最前線に出て来るとはな」
「そう! そこなのよ! 殆ど学者みたいな存在の第一級魔術師が出張ってくる時点で、何か企んでいるのは間違いない。だからあんたに護衛を頼んだってわけ」
「なるほどな。でも、人類最強なお前なら、連中が襲ってきても余裕で倒せるだろ?」
「それがそうもいかないのよ……私がカンストしているのは攻撃力、防御力、体力、素早さだけ。魔力は58しかないのよねぇ。それに、簡単な魔術も使えないし」
カンストということは9999ということか。知っていたとはいえ、その程度で人類最強を名乗れてしまうのは、なんだか不思議な感覚だ。
「まぁ確かに。9999程度じゃ心許ないよな」
「あのねぇ、これでも才能と圧倒的努力をしなきゃ手に入らないステータスなのよ? あんたみたいにズルしてステータス上げた奴には分からないでしょうけど」
ズルとは失礼だな。
「すまんな。スキルポイントの複利増加は、生まれつきの才能だ。ズルと言われても困る」
「そういうところが嫌味なのよねぇ」
そんな会話をしながら、俺たちは先遣隊クエストを受注した。