10000001の幸運
「さて、村の復興支援のため、それなりの戦利品は持ち帰らないとな」
「それなら、私がさっき討伐した炎竜の鱗があるけど……」
炎竜の鱗はS級のレア素材だ。防具屋にでも売ればかなりの金になる。だが、
「いや多分それだけじゃ足らん」
俺は幸運ステータスに1000万ポイントを振り分けた。
10000001の幸運を手にした俺のもとには、突然空から金塊の雨が降ってきた。もちろん、俺を避けるようにして降ってくるので、頭にぶつかることはない。代わりに、マカが金塊の集中砲火を浴びる羽目になった。
「ちょっと! 何なのよこの露骨すぎる幸運の顕れ方は!」
ミスリル製の籠手で頭を守りながら、マカは文句を言う。
「そんなことを言われてもな。幸運ステータスを上げたのは初めてだし……」
なおも金の雨は止むことがない。どうやってこれだけの量を持ち帰れば……などと考えていると、ゴブリンの群れが現れた。
皆武器は持っていない。魔王が死んだことで恭順の意でも示しに来たのだろうか?
などと考えていると、ゴブリンどもは金塊を持ち去ろうとする。
「ちょっ、何してる! それは私たちのものだ!」
マカがゴブリンに斬りかかろうとするので、俺は慌てて止める。
「待て、様子を見よう。何か訳がありそうだ。この出来事も幸運の一部なのかもしれない」
俺たちがゴブリンを追っていくと、一週間後にはルーラオム村に着いてしまった。
「なんだ。途中からもしやと思っていたが、金を運搬してくれていたのか」
ひょっとして、幸運ステータスを上げれば、大体のことは解決できてしまうのではないか? そう思ってしまうほどの無茶苦茶な奇跡だった。
ゴブリンたちの持ち帰った金塊の山は、時価総額200億ベルに相当することが判明し、魔王軍による略奪を受けたルーラオムは瞬く間に復興を遂げた。といっても、失われた命は返ってこないが。
幸い、俺の家族は無事だったが、多くの友人を失った。俺が留守にしていなければ、こんなことにはならなかったのかもしれない。
いや、それ以前に、早くスキルポイントを振り分けて、最強の称号を手にしていれば、魔王軍など寄り付かなかったのかもしれない。
もうこれからは、出し惜しみはなしだ。
人類最強のマカはクエストで忙しいし、俺は冒険者登録せずに名を上げていくべきなのかもしれない。