プロローグ
「さて、お前が魔王エルディムか」
魔王の湾曲した角、膨れ上がった胸筋。黒の翼。
全てが威圧的だ。
そして、気を抜けば気絶しそうな圧の魔力が常時放たれている。
「引き返すなら今のうちだぞ? 羽虫が」
魔王はニタニタと笑いながら嘲る。
シド・ルーラオムこと俺は、規格外の魔力を前に戦慄……していなかった。
分かってしまう。
俺の持つ圧倒的スキルポイントを前にしては、大した問題ではないと。
「ステータスオープン」
俺は現在の自分の能力値を確認する。
レベル2
攻撃力:10
防御力:8
素早さ:6
魔力:4
体力:15
幸運:1
平均以下のステータス。これでは魔王どころか、そこらの野犬に襲われても勝てるか怪しいレベルだ。
だが、俺にはまだ振り分けていないスキルポイントがある。
実に、5億4211万8415ポイント。
「さて、250万ポイントほど使っても、元本に影響はないか」
防御力に100万ポイントを振り分けた俺は、防御力が1000008に上昇した。
「暴王の咆哮」
闇属性の魔力が集束し、俺に向けて放たれる。一都市が灰燼に帰すという高威力の攻撃。
だが、俺は一切の回避行動を取らず、それを真正面から受け止める。
「くだらんな。あっという間に終わってしまった」
魔王は残念そうに呟く。
「くだらんな。最高出力でこの程度とは」
俺も負けじと言い返す。
「なに?」
魔王は無傷の俺に驚いているようだ。
当然か。防御力は9999が人間の限界。1000008などという桁違いの防御力を誇る者など、どのような種族にもいないだろう。
「さて、終わりにしよう」
150万スキルポイントを攻撃力に全振りした俺は、威力1500010の殴打を放った。
後に残ったのは、魔王の山羊のような角のみ。
魔王の体はおろか、玉座の間もろとも消し飛んでいた。