第3話 東へ
「よし、ここまでくればもう山は抜けただろう」
イルネミアが地図で場所を確認する。
「あぁ、ここから〈マグナ・ドレイン〉までは少し遠回りだが〈シルバーロード〉を通って行こう」
渚達は馬を走らせる。〈シルバーロード〉は中央から東への商業の一番大きい道だ。この道には合計32の村、町がある。二人はここから〈マグナ・ドレイン〉までを2日間で渡り切る計画だ。通常この距離を移動するには商人は6日、冒険者は3日だ。そのためには馬を使ってところどころの町は飛ばして、必要な町のみ寄る必要がある。渚達はまずここから一番近い村で食料を補給し、ここから5分の2程度進んだ場所にある町〈クスキ〉で泊まり、そこから〈マグナ・ドレイン〉に行く。〈クスキ〉はこの道の町の中でもかなり大きい方の町であり、イルネミアの知り合いが宿屋を経営しているため、信頼できるそうだ。
渚達は村で主食や野菜等を必要最低限買ったあと、すぐに東へと進んでいった。
「イルネミア〜お前どうして東行くの?旅人だからとはいえ、〈マグナ・ドレイン〉に行くのは流石にきついだろ」
渚が疑問を投げる。
「そうだな…今話すか?」
「話せるんだったらいいよ、そんな慌てる時間じゃないから」
イルネミアが話を始める。
「僕は〈マグナ・ドレイン〉の天才魔術師〈想像の魔法〉マグナムート・シークさんに弟子入りするんだ。だから渚とは〈マグナ・ドレイン〉についたら一旦お別れということになる。まぁそこからは頑張れよ、渚」
イルネミアは渚が落ち込むかと思ったが、渚は落ち着いていた。
「頑張れよ、イルネミア。お前とはあと2日でお別れだが、いつかまた会おうぜ」
「いや、お前が生き残れば普通に会えるからな?勝手に殺すなよ」
イルネミアが渚にツッコミを入れる。
このような会話をしているうちに景色はだんだんと暗くなっていった。しかし暗くなっていくにつれて目的地〈クスキ〉がだんだん大きくなっていった。
「よし、そろそろだ。駆け抜けるぞ!」
「おうよ!」
・・・・・・・・・・・・・・
渚たちは宿屋でのやることをとりあえずはすべて終わらし、あとは食べて寝るだけとなった。イルネミアが料理を作ってくれるとのことだったので、渚は暇になっていた。その時外から木刀の素振りの音が聞こえた。渚が二階のベランダから覗き込むとそこには1人の素振りをしている少年とそれを見守る少女がいた。年齢は15と14程度だろうか。そう思っていたときだった、少年が周りを見回して視線が渚を向いた途端木刀で渚を指して
「そこの人!俺と勝負してくれない?」
といった。少女は止めようとしていたが、渚はそのまま部屋に戻るつもりだったので驚いていた。だがまぁ少年の成長には大事だろうと手加減込みで勝負しようと思った。
「いいよ」
といい、渚は宿屋から木刀を借り少年のところへ行こうとした。その時外から知らない声が聞こえた。
「ちょと!大丈夫なの!そんなことして!」
渚はさっきの少女だろうと思った。だがしかし少年も反論した。
「いいじゃないか。少し腕試ししたいからね」
だんだんヒートアップしていくのを防ぎたかった渚は宿屋を出た。その瞬間少年は即座に反応した。
「来たね。俺の名前はラインハルト・ティル。君と勝負したい」
「あぁ。いいよ。ただ周囲に迷惑にならないために近くの公園でやろう」
「わかった。あそこの公園で勝負しよう」
渚たちは公園についた。二人が木刀を構える。
「さあ、始めようか」
二人は同時に足を前へ出した。