第一話 始まり
「渚!右からもう一体来るぞ!」
「了解!」
イルネミアに渚が答えると今戦っていた2体の〈狼牙〉を左へ蹴り、参戦してきた〈狼牙〉を剣で切り裂く。
「いつの間にそんな強くなったんだ渚?」
「これでも2年間修行してきたんでね!」
渚に蹴り飛ばされた2体の〈狼牙〉が立ち上がる。
「じゃあ僕も今までの成果見せないとね!」
イルネミアの杖に魔力が溜まっていく。
「これでも喰らえっ!〈ラウンド・スパーク〉‼」
2体の〈狼牙〉に電撃が走り、動けなくなった。今の魔法は初・中・上・超・極級のうち上級の雷魔法だ。攻撃力は少ないが、並のモンスターなら行動不能になる。
「渚!決めろ」
渚の指輪から魔力を出し、剣が銀色から赤色に光る。
「灼烈龍剣・一式・灼龍斬!」
赤く光る剣が横に振られると、2体の〈狼牙〉が倒れ、泡に包まれて消えた。そして彼らの魂はこの世界の中心の樹…〈ユグドラシル〉の元に返る。
「すまない。東へ行くにはこの山道を通るのが一番近いからな…」
渚が謝る。そして2人は首に吊るしてある笛を吹き、馬を呼び出す。そして、また走り出した。
・・・・・・・
二人はかなり速く、東へ向かって走った。
「渚〜お前東に行って何するの?東はあいつらがいるから特にいいこともないし、むしろやられるぞ〜」
イルネミアが疑問を投げる。
「だからだろうな。国から俺個人に命令されてな、あいつらとの戦争に参戦するためにまず東の都市〈マグナ・ドレイン〉に行って準備をしろと…まぁ邪魔だから戦争で……」
「渚!馬から降りろ」
イルネミアが唐突に馬から降り、歩いて前へ行く。渚も前へ行くと馬を止めた理由がすぐにわかった。かなり大柄なモンスター一体と、それと同じ見た目をした5体のモンスターが橋の前で陣取っていたからだ。
「あれは俺の推測があっていれば…〈スケルトン〉だ。そしてあの大柄なやつがリーダー。あいつらは最近狼牙族と争ってることが多い。だから〈狼牙〉の警戒が高かったんだろう」
この世界には多種類のモンスターがいる。その中でも遠距離攻撃ができるものは少ないが、〈スケルトン〉は使うことができるものもいる。つまり、強行突破はここはできないことはないが、領地に入ったら危険だ。
「どうします?参謀」
「うーん…っていや僕が参謀なの!?」
イルネミアの慣れたようなツッコミに答えずスケルトンを見つめる渚。これを見て本当に参謀をやらなきゃならないことを理解した。
「まぁ…前作戦会議したとき考えたのと同じだ。ここで川に沿って山を下って平地を通りたい。しかし、その通り道をがっつり〈スケルトン〉が塞いでいる。そしてあたりは狼牙族の領地だからスケルトンを避けるならば狼牙族の領地に入って川に行くか、もしくは来た道を戻って平地に下りるか」
〈スケルトン〉6体と他の種族の領地に入ることのどっちが危険かは明白だった。
「わかった。あいつらを倒して山を下る」
「OK!じゃあ行くぞ!」
イルネミアの返事とともに二人は構える。そして合図に合わせて二人は飛び出した。