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3 魔物のスキンシップ

後日談、本作でおしまいです。

ありがとうございました!

 先日、また人間の国の領土を広げた。


 ちょっと人間って油断し過ぎじゃないかな。こうやって魔物が虎視眈々と狙っているのに気が付きもせずに人間同士で相争って。

 その争いを利用してこうして僕が中枢に入り込んでしまったじゃないか。


 スタキオ国が簡単に僕の支配下に収まったのだって、そもそも国が乱れていて内乱が起こりそうだったからそこに隙があったわけだしね。


 勿論、油断をさせるためにも魔物の存在を頑張って隠し続けているというのはある。

 下手に僕らが表に出てしまって共通の外敵排除のために人間が団結しちゃったら、こっちはやりづらい。


 ともかく人間の国の領土が広がれば…僕はより多くの人間の生命を税金として頂くことが出来る。そしてそれはいては魔王様を満たすことになる。


 僕はあくまで中間貯蔵施設みたいなものでね。別に僕自身は生命とか食べたいわけじゃないから。食べるならやっぱり肉の方が好きだから。





「そう考えると魔王様はゆくゆくは世界の覇者ですよね。影の支配者的な?」

「なんだいきなり」


 今僕は魔王様に膝枕をしていただいて、頭を撫でていただいている。

 頑張っている僕のためのご褒美タイムなんです。最高に幸せ。


「いえ、僕の愛する方は世界の支配者なんだなーって思っただけです。こんなすごい方の顧問弁護士なんて、僕も出世したもんだなぁと」


「私は単に美味そうなおまえを食べてしまっているだけなんだが」

「どぞどぞ。まだ食べます?」


「いや、少しダイエットを考えているんだ」

「え!? まさか! なぜですか! 魔王様は究極のプロポーションだと思いますよ!」


「食べすぎるとな、私の容量が上がってしまうだろう。今までの量では満足できなくなってしまうのは困る。やはりバランスというのは大事だ」

「そうですか。魔王様がそれを望むのであれば僕はそれに従いますよ」


「それにあまりおまえに領土拡大のために働かせ過ぎるのもどうかと思ったんだよ」

「働くのは全然問題ありませんけど、魔王様にお会いする時間が減るのはイヤですねぇ」


「ふふ。愛しのヤツカド? がんばっているおまえに褒美を与えたいが何か希望はないか?」

「これ以上、僕の望むことなんて…。あ」

「何かあるか?」


 ちょっと思い出した。


「以前、クイとケルルに散々顔を舐められたんですよ」

「ほお?」


「なんでもそれも魔物のスキンシップのひとつのやり方みたいで」

「そうなのか」


「魔王様はご存じなかったですか?」

「私は長いこと誰も愛さないでいたからな。当然誰ともスキンシップなど…」


 なんと


「じゃあやりましょうよ! 僕たちも。今まで出来なかったならその分も」

「あ…ああ。まあ、やってみてもいいな」


「では舐め合いしましょ。先攻後攻、どっちが先がいいですか?」

「ヤツカドの褒美だからな。おまえは舐めるのと舐められるのではどっちがいいんだ?」


 悩むぞ…


「え…じゃあ…舐める方…?」

「分かった」


 ど、どうしよう…。本当にいいの? 魔王様舐めちゃって…。


「あの、僕の舌って消化液が分泌されちゃうんですけど…大丈夫…」

「問題ない。よくおまえの舌には触れているが、ほんの少し刺激を感じる程度だ」


 ああ、僕のこと食べてるときね。


「じゃあ舐めちゃいますよ? 本当にいいんですね?」

「構わないが…、だが顔はやめてくれ」


「顔はダメですか?」

「顔を舐められたら、お前を食いたくなってしまっていけない。ダイエット中だ」

「ああ…。分かりました。じゃあ顔以外で…」


 って、どこ!? 顔以外のどこを舐めるの?

 ちょっとそれマズくないですか?


「…やっぱりやめません? なんかちょっとその、身体とか舐めるのエロくないですか?」

「? なぜだ」


 うーん…。確かに動物の毛づくろいを考えれば別に…。

 ただ、表現的にはどうなんだろう…。表現を抑えればいいか。

 って僕は何を気にしてるんだろうね。


 僕は青く長い舌を出しましたよ。

 それを魔王様の身体に這わせてみます。

 

 この長い舌は、魔王様を包んじゃえそう…。

 首のあたりや鎖骨のあたり、腕とか足とか…あちこち…。ペロペロ…。

 わあ、魔王様の味がする…。


 何かに耐えるような魔王様のご表情…心なしか紅潮なさっているような…。


「あ…」


 魔王様…? 



「あ…、あは、あはははははははは…! く、くすぐったいな! は、ははははははは」


 おお。魔王様の大爆笑だ。初めて見ちゃった。

 かわいい。もっと舐めちゃおうっと。ペロペロペロ…


「は、ははっ、ははっ、あははは! くすぐったい! あはははは、ははっ」


 かわいい、かわいい!

 美味しい…魔王様かわいくておいしい…っ

 もっと! ペロペロペロペロペロ・・・



 ・・・ぶち。



 痛いです。

 魔王様、その手に持っているのって、僕の舌ですよね…。

 切れちゃった…。


「あ、すまん、ヤツカド。大丈夫か?」


 ごめんなさい魔王様。舌が切れちゃったから喋れません。

 くっつくまで少々お待ちください。


________________



「お待たせしました。舌、治りました」

「…すまないなヤツカド。くすぐったくてつい…」


「いえ、貴重な体験が出来ましたから…。魔王様の味、美味しかったです」

「…今度は逆で行かないか? 私がヤツカドを舐めてやろう」


「それなんですけど、それこそ危なくないですか? 僕食べられちゃうんじゃないでしょうか。魔王様ダイエット中なのに」

「口のあたりを避ければ大丈夫じゃないかな」


「それに魔王様の舌…ですよね。僕の皮膚とかぎ取られて化けの皮が剥がれちゃう未来しか見えないんですけど」

「では最初から元の姿でいればいいんじゃないか?」


 うーん…。


 広い場所へ移動すると、僕は八足の姿に戻った。


「じゃあ、舐めていただこうと思います」

「ああ。ではまず尻尾から…」


 尻尾…。

 ・・・・しっぽ!!


 そ、そうだ、しっぽ!!!

 思い出した!!


 だ、ダメ、ダメです、そこ…


 毒物鑑定のアレ、なんで僕は忘れてたかな。

 魔王様が僕の尻尾を舐め始めた…。


 あ、ああああああああああああ

 ああっ、ああっ、ダメ…ああああ…


 もだえちゃう…、勝手に身体が…

 一番敏感なのは尻尾だけど、背中も、足も、とにかく全部ダメみたい…


 分かった、分かったぞこれ…


 魔王様、僕の表面からその凶悪な舌で僕の生命をこそぎ取ってるんだ。

 つまり結局のところ、僕は食べられてる!

 僕は魔王様に食べられてるときに最高の快楽を感じる体質なんですってば…。


 ああ、もう…

 ダメ、これ、ゾクゾクするし、なんというか…感じてしまう…


 ああ!ああ…

 ダメだ…



 出ちゃ…


 尻尾の先の毒針から、毒液がぶしゅぶしゅと…


 うあ…

 やだ毒液止まらない…


 こんなに毒液出したの初めて…


 もうダメです…。

 れちゃう…


______________



「やはり舐めるのは私達には向かないんじゃないか? 特にヤツカドのダメージが激しすぎる」


 実際それは正しい。

 僕の方が圧倒的にダメージを受けている。

 舌は切れちゃうわ、毒液出し尽くして涸れちゃうわで…


 今僕は動けなくなっちゃって床に突っ伏しているよ…。


 僕がいただくご褒美なのに。



 でも…。


「いえ! また是非お願いします!」


 消耗がすごいので、たまにで良いので!



 魔物のスキンシップ、悪くない!!



読んでくださってありがとうございます。

宜しければぜひ↓下の★評価お願いします。

次作への励みになります。



次話は『あとがき』となっております。

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