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1 ファンタジーなら魔法くらい出てこないと

一旦完結にしましたが、むちゃくちゃありがたい感想をいただけたので調子にのって続きを書くことにしました。とりあえず軽いSSのようなお話で。


ヤツカドさんは、やっぱりラノベとか読まない人なのです。


 過日、魔王城内に設立したばかりの『八角法律事務所やつかどほうりつじむしょ』。


 窓口を閉鎖したのに、今日も仕事でいっぱいだ。

 この調子では、しばらく窓口は閉鎖したままだな……。


 さてと。

 今は魔物の教育水準を底上げするためにマニュアルを作成しているが、やはり全部僕がやるのは無理がある。

 ある程度任せられる人材を育てるのも並行しないと。


 教育に際しては、文字の読めない魔物達の対応として絵の描けるクリエーターが必要だ。

 そういった人材をまとめられる者が欲しい。

 四天王から何名か推薦してもらっているけど、どれくらい使えるかな……。


「ヤツカド! お茶どうぞ!」


 マニュアル作成のために執務室で机に向かっていると、今日もクイがお茶をいれてくれた。


「ああ、いつもありがとな。

 クイの入れるお茶は美味うまいよ」


と、毎度のサービストークを繰り出しつつクイを見ると


「お!クイ!すごいぞ!」


「へへへへ!だろ!だろ!?

 コレでいいんだよな?」


 クイはしっかりとレディーススーツを着こなしていた。

 髪型もバッチリだ。素晴らしい!

 これぞ虎ノ門オフィスのパラリーガルじゃないか!


「化けてみたぜ!

 ヤツカドの見せてくれた見本だとこんな感じなんだろ?」


 物理的に服を仕立てる方も進行させているものの、とりあえず僕が人間やってた頃のパラリーガルの女性に化けて見本になったんだよな。


「まさに『仕事出来るパラリーガル』だな!」

「そうか? 仕事出来そうか!?」


「やり手ってカンジだ!

 それにクイに似合ってる!かわいいぞ!」


「か、かわいいか…?

 う、うん…えへ」


「普段はいつもの姿でいいんだけど、今度から来客があったらぜひその恰好して見せてやってくれよ。

 うちのパラリーガル自慢したいしな!」


「まかせとけ!」


 チョロい。

 いやホント、誉め言葉って魔法だよなぁ。



 そうそう、魔法といえば


「クイ、そういえばさ、ダメ元で聞くんだけど、魔法使えるヤツに知り合いっているか?」

「なんだよ突然」


「いやな。先日もセバダンに仕事頼んだときに

『魔法を使える者はつい魔法に頼るけど、セバダンはこうやって物を加工するのが好きなのさ』

って言ってたんだよ。

 僕は魔法なんて非科学的なものは信じてないけど、もし本当にそんな便利なもの使えるヤツがいるなら人材として確保したいなって」


「何をいまさら」


「今更じゃないだろ。

 魔物が便利に魔法とやらを使えるなら活用して科学文明の足りない部分を補えるじゃないか。

 魔法なんて存在しないと思うんだけど念のため聞いてみようかと思って」


「ヤツカドだって毎日使ってるじゃないかよ」

「は?」


 魔法を? 僕はそんなものを使った覚えはないんだが。


「化けてるじゃねぇか」

「え?」


 僕は今、人間の八角人志やつかどひとしの姿に『化けて』いる。


「これ? 魔法なの?」

「そうだと思うけど」


「いや、魔法って非科学的なヤツだろ? ハリポタ的な。

 だけどコレはメカニズムがあって実現するものだから魔法じゃないよ」


「そう言われても分かんねぇけど……。

 あ、ヤツカドは鬼眼きがんだって使ってるじゃんか」


「あれは催眠術みたいなもんだろ?」


 確かにこっちの世界に来てから、謎の多い現象を色々目にしてきた。

 しかしそれは単に僕が知らないだけで、何かしらのメカニズムがあるんだろう。


 科学だってそんなもんじゃないか。

 ほとんどの人間は科学の原理もメカニズムも知らずに利用している。


「ヤツカドは納得してねぇみたいだな。

 まあ大した問題じゃねぇと思うよ。

 それより折角化けても自分では見れねえからつまらねえな」


 クイは自分の胸元を見下ろしている。


「ああ、それならコレ使えよ」


 僕は指先で円を描く。


 大気中にある水分の光屈折率を体内のエネルギーを使い変化させる方法で一時的に『鏡』が出来る。

 僕がこの世界に来たばかりのときに魔王様が僕の姿を見せるためにやって下さったやつ。

 どうしても鏡が欲しかったから魔王様にやり方を教わり最近出来るようになった。


「ヤツカド、それも魔法だと思うぞ」


 またまた。

 これが魔法だって?それはないだろ。


 クイは鏡に映る自分の姿を見て喜んでいる。

 本人が満足そうなら何よりだ。


 それにしても。

 もしもこの手のヤツが『魔法』だとしたら、超常的な現象というよりは『日常』じゃないか。


「ん……ひょっとして……」


 ようやく自分を納得させる説明を見出した。


 魔法って、僕の思ってる意味のマジカルなヤツじゃないのかも。

『魔物』が使う『方法』だから『魔法』って言うだけなんじゃないか?


 つまり、magicマジック ではなく、魔物の methodメソッド ってことか。

 なんだ。



 ともかく利用できることが分かったことだし。

 今後積極的に活用に組み込んでいくことにしよう。



 そして僕のTODOリストに『魔法についての実態調査』が加わった。


 しかし仕事が増える一方だな……。






感想むちゃくちゃ嬉しすぎて、感想欄のリプで著者が狂ってますが、リアルでそんな感じです。

呪文の詠唱すらないし、こんなファンタジー小説許されるのかよと思いつつ書いていたので、読んで下さる方がいらしたのが正直意外でした。

本当にありがとうございます。

もうちょっと続けます。

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