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召喚と契約

 第三章 異世界召喚されてしまう編


  ※ 召喚と契約


 思いつきではあったが、異世界召喚をされても世界を滅ぼさない、世界を救わないどどちらも選ばないという現状維持をした場合どうなるのか、の問の回答は今の所ではあるが成功していると言える。異世界の魔王を誘拐して異世界に移動させて現状維持をすることで、俺は異世界召喚に巻き込まれることはなくなったのだ。

 いや、世界を救ったのか? あの姫様の言葉から考えるに、魔王討伐が世界を救うことだったので、魔王討伐はしてないが、その驚異を取り除いたという結果、世界は救われたとも言える。

 魔王は死んでないが。

 そう、魔王は死んでいない。世界を救えば新たなる異世界の召喚に巻き込まれるという可能性の実験と検証は出来ていないが状況証拠的に今の所は異世界召喚は行われていないのは確かなのだ。

 様子見状態ではあるが、魔王が死んだ場合どうなるのかわからないので何気に魔王はこちらの世界で強化されている。また勇者召喚された世界にも何気に行き来している。あちらはあちらで突如として魔王を含めた魔王国首都が消えたことで大混乱状態なのだが放置している。敵対勢力が理由もわからず消えたということをうまく利用するだろう。たぶん。

 あちらとこちらを行き来するのは向こう側の魔法道具やアイテムなどを調達してこちらの世界に持ち込むためである。当然、お金を払ったり盗んだり無断で借りたりしているが、必要だとされる逸品は同行者の魔王プゥータおすすめ品を回収しているだけである。

 異世界のアイテムやスキルはそう遠くない未来、こちらの世界で有効的に使われるようになるだろう。有能な研究者や頭のネジが外れている探求者などが日々がんばっており、プゥータもなかなかの適応力を見せている。


 スキルの研究と共に、異世界召喚の研究も何故か進んでいる。俺が魔王城を含めた城下町まで召喚したのが刺激になったらしい。元々異世界の研究やダンジョンの研究はしていたらしく、俺とプゥータで召喚魔法を教えたので好き放題に研究するだろう。

 そして、その間にも魔法無効化の魔法道具の研究を進める。外部からのあらゆる魔法干渉を無効化してしまえば異世界召喚魔法も無効化できるはずなのだ。極稀にダンジョンの宝箱から出てくることもあるらしいが、期待は薄い。だが、何もやらないよりはマシだ。

 案外スキルとの融合でなんとかなるかもしれない可能性もある。しばらくは思いついたことは何でも試していくしかない。

 異世界召喚にブッキング制度があるのかは知らないが、今の所ダブルブッキングは発生していない。その理由を明らかにしたいのだが、答えは近くにあった。

「それは召喚は契約みたいなものですから。二重契約は出来なくは無いと思いますが、通常の方法では不可能ですよ」

 それは意外と言ってはなんだが、プゥータの仲間の参謀長リップが答えを持っていた。

「通常の召喚であれば、呼び出した召喚者が死ぬか、呼び出された者が死ぬかで契約は解除されますが、勇者召喚に関してはおそらく世界を救ってほしいという契約の元に召喚しているので、世界を救うか救えないかで契約が解除される、されないが決まるのではないでしょうか? まあ想像の域を出ませんが、詳しい資料があればもう少しわかると思います」

 この世界の召喚魔法も似たようなことになっているが、俺は最強生物のドラゴンであるために従者を召喚するという考えはなかった。魔王達を召喚したといっても、どちらかというと空間転移魔法の要素が多く、正確に言えば召喚魔法とは言えないだろう。

「待てよ? それならこの世界に自分自身を逆召喚したらどうなるんだ?」

「私達の世界なら普通の使い魔を召喚するような召喚魔法なら自分自身が主人であり使い魔という状態になりますね。異世界召喚で使い魔を召喚するというのは事例が少ないですが、勇者召喚もそれと同類か似たようなものであるなら……いや自分自身を逆召喚できるレベルの魔法使いなら自分の世界に還ってしまうのでは?」

「むしろこの世界で異世界召喚を使ってあちらの世界から俺を召喚してしまえば異世界召喚の輪廻から抜け出せるのでは?」

 参謀長リップはほんの少し考え込んで答えた。

「既に勇者召喚されて世界と契約している状態といえるのであまり意味はないと思いますが……」

 しょぼん……。


 取り敢えず、思いつきを試すことにしたが結果としては何も変化はなかった。

 この時、俺は問題が解決するまでに2年もの時間が経過するとは思ってもいなかった。

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