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順応するのは楽じゃない

 第三章 異世界召喚されてしまう編


  ※ 順応するのは楽じゃない


 魔王と魔女が手を組むことで生まれたものは魔法と魔術の勃興期であった。今この時、この瞬間、最も魔法と魔術が熱いのは南大陸である。

 科学の有用性は認めつつも、魔法を捨てきれない者、科学と魔法の融合を推し進める者、便利な魔法、魔術を生み出したい者などなどそういった研究者や探求者の動きは早かった。いや、早すぎたとも言える。

 魔王達が住む区画を、私有地から経済特区に切り替えた魔女のマレフィの経済的手腕も見事なものであり、移住者の待遇は住宅の無償提供、仕事が安定するまでの生活支援等ではっきりといって高待遇。普通に自国で働く以上のものを提示した方が良いだろうというレペンの意見を大いに取り入れた。

 これにより、自国の仕事を捨ててまで南大陸に移住する者が多くなってしまったのだ。幸か不幸か大人数の移民を受け入れる領土と文化が南大陸にあったのだ。


 魔王の心情としては、全てはレペンの手の平の上で動いていると感じているが、間違ってはいない。相手の強さを知るスキルを恨んだことはなかったが、今では多少恨んでいる。桁違いの強さを持つ存在というのは予測の範疇だったが、次元が異なるというのは予想外であった。

 最強の魔王を自負していたが、世界が異なるだけで最強の座から転落しっぱなしである。化け物、怪物、異形種……。強さに上限はないという事実を何度も突きつけられているが、それは良い。まだ理解の範囲内の強さだからだ。

「5000億はねーだろ……」

 それに、それは表面化された強さであってその奥、深淵まで覗くことはしなかったし、直感であったがそれは正解だと思っている。アレは人の形をした化け物だ。自然現象に強い、弱いはあるがそれらを数値化して戦えるかどうかを判断するくらいに馬鹿げている。何よりもこちらを支配するつもりもなければ殺すつもりもない。いや、誘拐されたし、殺されてもおかしくない状況に追い込まれたし、最終的に異世界に移住することになったのだが、結果だけみれば悪くはない。

 俺を信じて異世界にまで付き添ってくれた部下達や民達は思ったよりも異世界に順応しているが、それは悪いことではない。今や魔王城も観光地となっているが、それも悪いことではない……。


 魔王プゥータは魔女のマレフィが支配する国の首都にいた。プゥータ達が住んでいるのは首都から離れているが、移転装置で一瞬で首都に着く。

「転移装置にも、天駆ける馬にも慣れたもんだな……」

「科学、というものはなかなか便利ですね、魔王様」

 参謀長リップはそういうが、異世界初日はなかなか面白い反応をしていたはずだが、今では落ち着いている。そもそも戦える者達はある程度相手の強さを感じ取れる。魔族であるリップも魔王直属の部下なので相当強いが真の強さは知略にある。

「こちらの兵器と魔法それらを手に元の世界に戻れば世界征服も楽勝でしょうねぇ……」

「あちらの世界はもう知らん。逃げ勝ちとしておく」

「戦ってもないので勝ち逃げと言えませんからねぇ」

 参謀長として立派である。こちらの世界で、と言わないあたり。慈善試合で幹部達が剣聖一人に大敗したのが効いたのだろう。魔法を斬る程度は幹部でもやるが、残像がはっきり残るレベルで回避されたり魔法を剣で打ち返してきたりと奇抜なことを平気でやってくるあたりあの剣聖も頭がおかしい部類だ。剣術だけで言えば勇者を超えるだろう。

 そんなことよりも、戦争のことばかり考えていた頃よりも、魔法の開発や知らない魔法を知る今のほうが楽しいのは事実だ。


 魔王として敬意というものは、恐怖や畏怖が含まれていたことが多い。純粋な敬意を感じる方が珍しいことであったが、今ではむしろ異世界の魔法と魔法の理解力に対して敬意を示されることが多い。そしてそれは魔王としてではなく、ただのプゥータに対しての敬意である。役職や役割に関係なくただの個人として扱われるのにも慣れてきている。

「スカウた……じゃなかった。戦闘力計測装置はできそうなのか? というかスキルを科学と融合させることは出来るのか?」

「スカウなんたらは知らんが、こちらの世界でもスキルは機能していることから考えるに、こちらの世界でもスキル習得が可能かどうかの実験と検証、そしてその結果から考えるに、理論上は可能だろう。魔法というよりも魔術になるだろうが、まずは簡単なスキルからになるだろう。そもそも相手の強さを知るスキル自体が希少なものだ」

「スキルって譲渡したり出来ない?」

「無理だ。経験を他人に譲渡できないように、スキルもある意味では経験みたいなものだ」

「じゃあスキル譲渡、或いは複製して添付できるような魔法か魔術を開発すれば良いんだな」

 その発想はなかった、と魔王として感心した。レペンは常識外の存在なのでそういった発想も可能なのだろうとプゥータは考えたが、そもそも異世界の存在であるために自分にはない考え方や発想が生まれるのではないか、という結論に至った。


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重大なお知らせ。

活動報告にも書きましたが、仕事をクビになるので次の仕事を探す転職活動をしなくてはならない状況になりました。よって、仕事が決まり生活が落ち着くまでの間ですが、毎日投稿が難しくなると思います。来月から不定期投稿になると思いますが、どうかご了承の方お願いします。

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