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面倒事は他人に押し付けるに限る

 第三章 異世界召喚されてしまう編


  ※ 面倒事は他人に押し付けるに限る


 スキルというものは、基本的に長い時間をかけて習得するものであるが、生まれた時から持っている先天的スキルや特殊な経験を積んで得られる後天的スキルなどが存在しており、ある程度になるがスキル習得の再現性は把握されている。スキルに関しての説明はされた。例えば剣術スキルを持っていたら剣を持ったことがない者でもどのように剣を扱えば良いかが理解できる上に身体が勝手に動いたり反応するといったものであり、本来ならば剣の修行や訓練をして習得できるスキルなのだが、異世界召喚という特殊な魔法で召喚された勇者たちの殆どにこの剣術スキルが備わっていた。

 しかし剣を握ったことすら無い人間がこのスキルを自由自在に扱えるかと問われれば否と答えられる。事実として、当然ながら剣を振るうには体力、筋力が必要になってくる。スポーツや剣道でもそうだが一対一の格闘や喧嘩ならば、基本的に勝負自体は一瞬で決着することが多いだろう。お互いの命のかかった殺し合いの実践となると動き回りながら剣を振るうというのが基本となる。1キロから2キロ程度の鉄の棒を動き回りながら振るうというだけでも、日常的に運動している者でも疲れるものである。そこに、魔法による攻防も加わる上に相手の命を奪うという心理的負荷のかかる状況が生まれるので、勇者達の戦闘訓練は一定の成果はあるものの、命あるものを殺めるという心理的側面の問題が解決できていないのであった。


 俺は勇者達の動向は一応把握している。召喚されて半月も経過していないが、既に二割ほどの勇者が逃げ出して消息不明になっている。ある程度の訓練でどのような力を持っているのか、自分の能力がどこまで通じるのかなどを確かめた上で抜け出して異世界で自由に生きることを選んだということだ。王城での暮らしは比べるまでもなくこの世界では快適な生活だろう。しかし、逃げ出すというのは魔王討伐は他の誰かがやるだろうと思ったのか、状況的に魔王に負けると判断して早めに沈む船から脱出しておこうと思ったのかはわからない。王城のお偉方は逃げ出した勇者達に対して特に何かしようとは思わなかったらしい。戦力は減るが、人手を割いて勇者達を追って始末したり、連れ戻すということは無駄な労力と考えたのだろう。実際は、何もしないと舐められるので、人相書きの指名手配はされたが見つかることはあっても捕まる希望は薄いとわかっているようだ。それだけ勇者達のスキルは優秀だったりする。

 それに、もう勇者達は不要なのだ。

「魔王とっ捕まえてきたけど、どうする?」

「え……」

 ――魔族、亜人族連合と人族、巨人族同盟はそれぞれ目的が異なる。連合の目的は同盟の人間達を絶滅させることで、巨人族に対しては講和なり協定を結んで良いという考えであり、同盟の目的は魔王討伐で連合を崩壊させることにある。人族は昔から亜人族を奴隷として使っていた歴史があり、亜人族達の奴隷解放運動に乗じて魔王が動いて亜人族達の奴隷解放を大義名分に軍事行動を起こしたのが、戦争の始まりである。その後、亜人族達と手を結び連合として勢力を広げたのだ。一方で、人族はそれらの動きは魔王の策であり亜人族達は魔王に扇動されたとしている。奴隷経済とも言うべきか、多くの奴隷を安い労働力としてこき使っていたために、人族の生活は奴隷解放運動に乗じた魔王の宣戦布告により経済的大混乱が起き、あれよあれよと奴隷達はその姿を見なくなっていった。その間にもどんどん生活が悪くなる一方であり、宣戦布告もされたので戦争もしなければならないという状況であり、全ての原因は最大悪である魔王の責任であり、魔王討伐さえすれば奴隷達を取り戻せ、魔族も奴隷にして魔王の領土さえも奪える。というのが、人族の考えている戦略構造であった――。

 巨人族としては、人族が魔王の支配下になると勢力図として2つの国が統一されることになり、魔王は世界統一を狙っているとも噂されており人族との戦争が落ち着けば遠くない未来に巨人族の国にも攻めてくるだろうと考えていた。よって、巨人族は人族と同盟を結び魔王国と相対することにしたのだ。

 だが、戦争が長く続き消耗も激しくなったために、魔王は世界統一をするという考えは捨てていないものの、軍事行動の結果による植民地化の方が楽ではあるが、外交や交渉でも統一は可能だとも考えている。正直な事を言えば休戦期間で回復した軍事力では同盟を潰すことは難しい――。

 ――そして本来ならばお互いに生きる状態で対面することがなかっただろう者達が対面していた。


 戦争にしろ、話し合いにしろ決着はいずれ着く。俺としてはどう転んでも良いのだが、殺さずに生かしたまま捕まえて来たのは世界を救うためである。話し合いによって講和なり妥協点を見つけて平和になるならそれはそれで世界を救ったことになる。駄目だった場合は同盟領土内にいる魔王は無事に帰れないだろうし、殺されることになるので世界を救うことになる。あとは放置しておけばどちらに転んでも俺は世界を救うことになるということだ。

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