異世界召喚って面倒だよね
第三章 異世界召喚されてしまう編
※ 異世界召喚って面倒だよね
一瞬であれ、世界に認識されるというリスクを考えてなかった俺は世界の因果に巻き込まれることになっていた。
勇者として世界を救ってください、魔王として人間を滅ぼしてくださいといった異世界召喚に巻き込まれることが多くなった。呼び出される度に召喚者含めてそのあたりにいた奴らを消滅させては、元の世界に戻るの繰り返しである。
『――勇者様どうか、我々の世界を――』
『いやだね、滅べ』
『――どうか人間どもを――』
『うるせー、滅べ』
何回かは世界そのものを滅ぼしてみたものの、週一レベルで召喚されるのである。平行世界なのか、多世界なのかは知らないが世界は無数にある。全てを滅ぼし切ることは実質不可能に近いだろう。いや、長い時間をかければなんとかなるかもしれないが労力に見合わない。それに元の世界に戻れる。起点となる世界に戻れるだけであって前世の日本がある世界に戻れるかはしらない。
レベルやステータスの概念がある世界には少し興味がある。俺がいる世界はレベルやステータスはないとされているが、そういった概念を持ち込めばおそらく世界が改変されるか、そういった概念は必要ない、或いは無理のどちらかだろう。おそらく後者になると思う。
異世界召喚特典はあったような気がするが、説明をまともに聞いていないし説明中に帰還するための魔法を構築したりしているので知らん。何かを得た感覚も殆どない。強いて言えば異世界からの帰還が楽になったくらいだろう。
異世界召喚は傭兵を雇うみたいな考えに近いかもしれない。自分たちでは解決が無理なことを、解決できそうな方法と人材に任せるというのはビジネス的な観点から言っても間違っていない選択ではあると思えるが、しかしそれを双方の同意なく一方的な強制でやらせるのは間違っているのだが、そういった法律もなければ倫理観もない文化レベルならばしょうがないとも言える。とは言え、異世界召喚される際に何故かチート能力や特典がつくのは謎だし、異世界から召喚するとそういったものが付いてくるのか、召喚するだけで付いてくるのかも謎である。勿論、付いてこない場合もあるが、その場合は別世界や異世界の知識や技術が欲しいという目的があるのかもしれない。
いずれにしても不意に呼び出されるのはそれなりに迷惑なのである。
本来ならば使用された魔法を解析して無効化させるのはそれなりに時間がかかる。ドラゴンは最強生物なのでレベルの低い魔法は自然と無効化されるし効かないものも多いが異世界の魔法というのは世界干渉系になるので防ぐというのは困難になる。俺は強いがあくまでも生物として最強であり、世界そのものを相手にするということはその世界を破壊する必要が出てくるのだ。だからこそ召喚される度にその世界を消滅させているのだが、きりがないのは確かだろう。誰の意思という訳ではないが、これは地味な嫌がらせ行為だな……。
それに召喚者の望みを叶えたところで意味がないんだよなぁ……。基本的に人間側に呼び出されたら元の世界に帰るか、目的を達成したら何かしらの褒美を与える的なふわっとしたものが得られるらしい。魔王側というか人間側を滅ぼしてほしい的な方は世界制覇できますよ、地位も魔王ですよみたいな感じで旨味は特に無い。
異世界を冒険するとか、探索するとか、お宝や珍しいものを得られるという微々たる面白さはあるだろう。危惧すべきことは、本来のドラゴンの姿で暴れすぎると神格化されそうなところくらいか。
そもそもレベルやステータスの概念はゲームシステムの枠組みなはずだが、異世界ファンタジー世界でそのシステムが働いているというのはいかに。ゲーム世界が現実世界になりました、ならまだわかる。またゲームシステム的な概念なので、世界によっては上限など存在する可能性もあるだろう。レベル99が上限なのに、それ以上のレベルだった場合はどうなるのだろうか……と考えてもあまり意味はないが、目の前のご都合主義全開な召喚魔法を使った術者の説明をまともに聞いているよりかはましだろう。誘拐同然に強制的に日常生活を奪った事実があるのにも関わらず、異世界召喚により力を与えられているから魔王討伐をしてくれ、帰る方法は魔王が持っているとされている秘宝を使わなければ無理みたいな話を聞き流していた。
というか、そこまでわかっているとは思えない。魔王が持っている秘宝というのは誰がどのようにその秘宝の存在を確認したのか。呼び出す方法があるのだから帰す方法もあるのだろうが、ではその秘宝を使えば帰れるという保証はあるのか、そもそも帰した実例はあるのか、などなど。いっそのこと、自分たちではどうにもならんからなんとかしてくれ、帰す方法は知らんと素直に言ったほうがまだ誠意があるかもしれない。
ともあれ、為政者としての厚かましさというか生き方なのかもしれないが、俺の疑問はそう言い伝えられているという感じで追求を躱していた。
当然、その世界は滅ぼしておいた。どれだけ生物が死のうが知らん。俺には関係ない。そう、召喚した奴らがこちらの生活と人生に対して何も配慮していないように、俺も何も配慮していない。
高評価&ブックマーク登録お願いします。




