フリークス事件中編
第二章 数少ないダンジョン攻略配信者をやってみる編
※ フリークス事件中編
「戦闘ではなく、一方的な蹂躙だな。背後からこう、ばくっとやった感じ」
「ばくっとって、もしかして消息不明って食べられたのですか?」
「丸呑みという表現が正しいかもな」
厳重な警備体制が形成されており、よほどの実力者でもなければ教皇キュクー・レインを襲うことは不可能だろう、という布陣であった。ボーン・ナイトと古代格闘戦士ミノタウロスは暇なのか?
「勇者が増えた理由はそれだな……」
勇者王サトウもいる。勇者王の名前は世襲制であり開祖の勇者がサトウという名前であったことからずっと勇者王になるものはサトウに改名される。どんまい、サトウ。
名探偵ではないが、消息不明となった場所が判明した犯行現場で検証した結果は、犯人は被害者を丸呑みにしたというものだ。物理的な痕跡はない。しかし、過去を再現できる魔法はある。といっても、過去を再現するのはかなり制限される。術者にのみプロジェクションマッピングみたいに、映像を見れるが他の者には見えないということもあり、信頼関係がないと本当に魔法で過去を見たのか信頼されないという難点もある。そもそも過去を見れる魔法を使える者も少ないので数人で同じ魔法を使い、嘘をついていないかを確認することが難しい。また、過去を見れる魔法は昔になればなるほど魔法の成功確率が下がる。一年以上前だとほぼ見ることは出来なくなる。現在では一流の使い手でも10日前が限度と言われている。
「犯人は魔族にも見えるが、外来種だな」
「異世界の者ということですか」
「異客か?」
「ダンジョン産じゃね? 俺も知らんとなると、そう考えるのが自然だろう」
俺が知らないとなると異客か異世界からの外来種になる。異客でモンスターが来るというのは殆どないし、この強さはダンジョン産と考えるのが自然だろう。おそらく、ダンジョンで起きている事件もこいつが犯人だと考えれば辻褄が合うし。
何よりもダンジョン内部で相当鍛えたか、強くなった――。
「――そう言い切る根拠は?」
「ダンジョン内部のモンスターの気配が混ざってる」
薄くはなっているが、一方的な蹂躙とはいえ捕食の動きからでもわかることは多い。もう一つは、ダンジョン攻略組のあの動画が根拠である。そういって、その動画を見せたところ、納得した様子であった。
しっぽは掴んだ。しかしうまく俺から逃れている。その事実だけでも現時点で数名しかこいつと対等に戦える者がいないのではないか? と思っているが、ここにいる奴らならば食われることはないだろう。たぶん。
人間も弱肉強食の世界の生き物だ。生物ピラミッドの頂点が自然界ではルールになる。人間もその理に従って、数々の生物を絶滅させてきた歴史もある。弱肉強食の世界でいきなり強い生物が生物ピラミッドに横槍を突きつけてきたとしても、文句は言えないだろう。例えるならば、その地域を支配していた生物たちに別の地域から来た更に強い生物たちが支配するようなことだ。人間たちは自然界の生物ピラミッドの頂点にいると思うのは勝手だが、人間以上の存在が突如として現れて支配されると思わないのはただのバカである。人類たちはモンスターの驚異と戦ってきた。そして、理不尽な暴力に対抗できるよう力ではなく技術と知恵で戦う選択を取るようになった。
核魔砲は指向性のある莫大なエネルギーをただぶつけるだけというシンプルなものであるが、シンプルであるが故に強力だ。過去に、世界を恐怖で支配しようとした魔王ですらこの核魔砲に敵わなかった。
一つの都市は確実に滅びる破壊力を持つので、そう簡単に打ち込める代物ではないが、条件さえ揃ってしまえば人類が束になっても敵わない相手でさえ屠れる。
更に言えばもう一つまだ試験中の兵器があるが、それを使う可能性は核魔砲が通じなかったときのバックアッププランとなっているが、暴走の可能性が捨てきれない代物であるために、誰がその失敗したときの責任を取るかで揉めている。
戦闘能力の高い者たちが襲われているということで、単独行動中に襲われることを防ぐためにも、また失ってしまうことにより多大なる被害を被るであろうバトルトーナメント主催者が、闘技場を防衛場所として貸し出すことを提示し、教皇キュクー・レインを筆頭にヒノモトに移住した元エルフ族長のフレイやフレイが認める実力者たち、更には、古代格闘戦士ミノタウロスとその仲間たちや、ボーン・ナイトなどその業界をよく知る者が見ればオールスターといえるメンツが集まっていた。
勇者王サトウもそこにいた。その理由は彼が勇者であることだ。勇者は人類が滅びる驚異を感じ取ることができる。いや、正確には既にその可能性を感じ取っている。人類の守護者的存在とも言えるだろうが、彼自身も相当な実力を持っている。そう、ここに集まった殆どの者は近い……そう数日以内にここが襲われることを感覚的にだが確信していた。
ただ、レペンはその場にはいなかった。レペンから見れば闘技場は餌場である。そして釣れる獲物が確実に釣れたら確実に捕らえるつもりなのだ。
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