違和感
第二章 数少ないダンジョン攻略配信者をやってみる編
※ 違和感
異常に気が付いたのは、ダンジョンギルドであった。最近は、バトルトーナメント優勝者のダンジョン攻略参入で、ダンジョン攻略数は前年比から考えるとうなぎ登りであり、レペンやD48の人気もあってダンジョン攻略に参入する人数は格段に増えた。その結果、ダンジョン破壊数も増え始めていた。
しかし、ダンジョン核の持ち込み報告のあったダンジョン破壊数と、実際のダンジョン破壊数が一致しないということがあった。これは報告漏れだったり、ダンジョン破壊から帰還する際に何かしらの問題が発生して報告が遅れたりするということは稀にあった。1つや2つくらいの誤差ならそれほど問題ではないが、この半年で22ものズレが出てきている。これは明らかにおかしい数値であり、何らかの異常現象が起きているかもしれないと判断を確定させるためにも調査が必要であった。
世界中に存在するダンジョンの数は完全に把握出来ているのか、と問われれば否と答えるしか無いが、それでもかなりの精度でダンジョン数は把握出来ている。少なくとも人間社会に影響のあると考えられるダンジョンに対しては完璧に把握されているし、新しくダンジョンが生まれた場合でもそれを観測できるシステムは構築されている。また、ダンジョン破壊された場合でもダンジョンギルドが把握しているダンジョンであればその破壊されたという事実を観測できるシステムは存在している。だからこそ誤差が出ているとわかるのである。なおこのシステムはダンジョンギルドは知っているが、ダンジョン攻略に参加している者たちには知らされていない。観測システムは時折、エラーをだす。そのため、ダンジョン破壊の報告は義務化されているのだ。
しかし、ダンジョン破壊のスピードは異常だ。確かにレペンのダンジョン破壊スピードは早い。一年に一つ破壊できれば儲けものという以前から考えれば、ひと月に一つくらいのペースで破壊してくれているので、人類に安心と安全を感じさせてくれている。ダンジョン核も有効活用すれば莫大なエネルギーを生み出すものになるし、研究者たちからもダンジョンの仕組みを研究したいと言われ続けており、ダンジョン核を求める声は所々から聞こえてくのだ。
ダンジョン核というのは、簡単にいえば膨大な魔力を秘めている魔石と言われるものである。それこそ自然環境を書き換えることが出来るほどの魔力を秘めており、一説には、賢者の石はダンジョン核のことではないか、という与太話もある。しかしこのダンジョン核に関しては人類の英知を持ってしても、得られている数が少なすぎるために研究は殆ど進んでいないとも言える。
とある研究者は熱心なレペンファンであり、ダンジョン攻略の動画配信も毎回見ているし、ダンジョンギルド本部にもファンレターを送って渡してほしいというレベルの変態性を持っている者だが、そんな彼が動画配信中に疑問を投げかけた。ダンジョン核とは、何か、と。
「ダンジョン核を抜き取るか破壊するとダンジョンは崩壊するのは知っての通りだけど、破壊するとダンジョン核に内包されていた純粋な魔力を得られるから劇的に強くなる場合があるぞ。魔力を入れる入れ物自体を大きくする効果もあるから膨大な魔力を得て爆発四散することはない。核のまま体内に取り入れることもできるけど、破壊してその効果を得ることをおすすめするけどな。あと一攫千金狙いなら普通に核を売れば良いんじゃないか? あれ高いし」
研究者は苦笑いをしつつこれが事実かどうかを調べる断固たる決意をした。レペンの言葉が事実であることを証明するために。
フリークスはダンジョンモンスターを食べる。自分が強くなるのを感じるが、貪欲な強さへの信仰と、強迫観念が魔力を含むものを見分ける術を体得させた。それにより、ダンジョンモンスターを食べることもそうだが、ダンジョン核を食べる方がより強くなれることを実感した。ダンジョン核を食べるとダンジョンが崩壊するが、完全に崩壊する前にダンジョンを移動して別のダンジョンにいけば良い。そこでより強いモンスターを捕食して、強さの伸びが悪くなったらダンジョン核を喰らい、また別のダンジョンに移動する。これにより飛躍的に強くなれることが判明した。フリークスの知性も自身の成長と共に高くなっており、とあるダンジョンで人間を捉えてその脳を解析して言葉やダンジョンの外の世界を知ったのだ。
少なくとも、まだ今の自分ではダンジョン内の方が強くなる効率が良いだろう。外の方がまだまだ外敵となる存在がいる。情報が足りない。人間や知的生命体が足りない。そういったことを考えながら捕食者はダンジョンを巡る。
俺の感知から逃れている何かがいる。
「この違和感は何だ?」
ダンジョン内部から生まれようとする神の気配すら感知できるはずの俺の感知魔法と感知能力から何者かが逃れているような、否なにかがこちらの感知魔法や感知能力に先に気付いて勘付かれる前に逃げている、そういった感覚があるような、無いようなそんな違和感を感じている。言うなれば視界の端に虫が見えたと思ったが、虫はいなかったみたいな変な感覚だ。最強生物ドラゴンの感覚から言えば、何かがいるのは確かだ。
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