動画配信と雑談と魔法
第二章 数少ないダンジョン攻略配信者をやってみる編
※ 動画配信と雑談と魔法
広大な大地を地平線の彼方まで埋め尽くす蠢くモノたちがいる。
「ゴブリンの群れだな」
一面に広がるのは、ゴブリンでありその数は軽く数万を超えるだろう。一歩でも入り込めばゴブリンたちはこちらに気付いて襲ってくる。
「というわけで、今日は広範囲撲滅魔法の使い方だな」
火の魔法の初歩ファイアーボールを創り出す。更にファイアーボールを重ねてつくる。
「ファイアーボールを重ねて作りつつ、魔力の密度を高めていくと当然魔法の威力も跳ね上がるわけで、ここに更に風の魔法を使って範囲を広げるのがコツな」
圧縮されたファイアーボールは温度を急激に高めており、その色は既に青色まで達していた。
「ここで炎と風の魔法を留めるのも威力を高めるために必要だ」
そして、青白い炎の塊を開放した。
「すると、扇状に炎が広まってご覧の通り広範囲撲滅魔法の出来上がりだ。え? 魔力が足りるわけない? このくらいなら鍛えれば出来る範囲内だぞ」
乾燥した芝生に火を放つ如く、ゴブリンの群れは燃え広がる炎に焼かれていく。骨も残さず炭素の欠片となって連鎖的に消滅していく様は、ゲームでも見ているようだと言われる。
ごっそりとその数を減らしたゴブリンだが、まだまだ多くいたので、次々に広範囲撲滅魔法をレクチャーした。
再現性はともかくとして、やろうと思えば出来なくないレベルの範囲内で魔法を教えたのだが、無理だという意見が多かった。もう少し昔の時代であればこれくらいやってくる人間もいたのだが、鍛えないと魔力は増えないので鍛える必要のない時代ということなのだろう。
二足歩行の人型のそれは、全身が爬虫類のような皮膚をもち、文明を感じさせるものは何一つ身につけることなく、顔は魚のような作りをしており、目以外の生体的機能がなかった。それはガーゴイルだと間違われやすいが、全く異なる存在である。前世でいうところの地球外知的生命体のグレイにも似ているとレペンは思うだろう。
それはダンジョンで生まれた。顔には目しかないように見えてちゃんと口はある。パカリと、首元からへそあたりまでが開き、捕食する。雑食のそれはモンスターを食べる。人間も異種族も食べる。そして、その存在の強さを取り入れることのできる特性を持っている。他生物の良い所を取り入れることが出来る上に、成長速度は勇者を超える潜在能力を持っており、土壇場で強さを急激に向上させる覚醒という能力も持っている。知性はかなり高く、強さを擬態しながら徐々に力を付けていき、その存在に気が付いた時には手遅れの状態になる。
とある異世界でフリークスと呼ばれるこの怪物は、様々な怪物の特性を取り入れ強くなる正真正銘の化け物であり、怪物である。
ダンジョンは別の異世界に繋がっているという説が出たのは、近年のことである。魔法と科学が発展し、融合させてきた人類はその技術発展により様々なことを調べてきた。その探求欲は宇宙にまで及び、月への到着までそう時間はかからなかった。一方で、人類未踏の地は探索機を出してその様子を確認した上で、脅威度が高い生物が多くいるために、立ち入りを制限するのが良いだろうという判断を下した。その後は防波堤代わりの壁などを建設し、モンスターが出てくるのを防ぐ目的ではなく、勝手に侵入しないようにする目的で壁が建設されていった。
ダンジョンの探索は進みが悪かった。というのも、遠隔操作をしようにも深くまで行くと操作が出来なくなることが多発したのだ。長い間、探索を続けて様々な研究をした結果として、ダンジョンの中には世界を渡る場合もあるという結論に至った。また全く生態系のことなるモンスターや鉱石などの発見によりその結論を裏付けた。この世界に存在していない異世界のものがダンジョン内では発生する、という発表はその当時、様々な分野の研究者たちにセンセーショナルな波紋として伝播していった。
そして現在に至るまで研究は続けられているが、未だに詳しいことはわかっていないのが事実である。
今日のダンジョン攻略の動画配信も好評であった。広範囲撲滅魔法の講座から始まった魔法を教えますシリーズは、初心者でも真似できる魔法や、その応用などが特に高評価を受けた。魔法を代用する魔法道具や補助効果のある魔法道具などの紹介もしてみたところ紹介した商品はあっという間に品切れになったとか。わかったことは、魔法よりも魔術の方が人気があるようで、その理由は魔術の方が比較的覚えるのが簡単で扱う魔力も少ないからというコメントが多かったのでそういうことなのだろう。
「移動系魔法、魔術は完全に資質と魔力に依存してるから空間魔法を覚えても魔力が少ないと移動量も少ないぞ」
それに、魔力消費量も多いので資質があって、努力できる人間が相当頑張れば10年ほどで100メートルくらいは瞬間移動魔法で移動できるんじゃない? とコメントの質問に答えておいた。
数百年の間、ダンジョンからダンジョンへ移動は不可能とされていた。しかし、フリークスは長い時を経て、その不可能を可能にしていた。何百年、何千年を生きたかはフリークスは数えていない。知性はあるものの、興味のないことであったためだ。自身の成長と進化に重きをおいているので、より強い獲物(餌)を求めてフリークスは今日も餌を食べる――。
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