強すぎるを因数分解するのは無理である
第二章 数少ないダンジョン攻略配信者をやってみる編
※ 強すぎるをわかりやすくするのは無理である
強すぎて参考にならないと言われた。しょぼん……。というのも、ダンジョンに出てくるモンスターの倒し方をライブ動画配信で教えながら攻略を進めていたのだが、その際にそれが出来るのはお前だけだ、とか早すぎてイミフとか、強すぎワロタとか要するに参考にならないらしい。なので、今度はナイフ一本で倒すシリーズとしてガーゴイル、バジリスク、キメラなどナイフ一本で倒してみせたのだが、これもまた技術高すぎとか、まず攻撃を避けますが出来ない奴がどれだけいると思ってるとか散々だった。
しかしながら、ナイフ一本で倒すシリーズは高評価を得ており、ライブ動画配信時は数千万人の同時接続数を保ち、アーカイブ化されてからも動画は再生され続け、平均アベレージでも数億再生されるコンテンツとなっている。
動画時間は平均して２時間から３時間という長時間である。ご飯を食べているだけの３０分から１時間の動画の方が再生数が少ないのは当然なのだが、それでも数百万回という再生数を保っている。動画に対するコメントで美少女の大食いは見てて美しいという理由のわからないコメントもあるが、まあそれはそういうものなのだろうと放置している。
そして本日は、動画を開設して初めてのコラボ動画である。
その相手はダンジョン攻略界隈で有名なD４８とのコラボだ。当然、ダンジョン攻略配信もする。だが、ダンジョンに入る前にどうやら座談があるらしい。俺はD４８のメンバーをよく知らないし、活動していたことを知ったのはつい最近である。
今回は、ダンジョン攻略に参加するメンバーしかいないらしいが、それなりに強いはずである。たぶん。
異口同音。多くの人がみな口をそろえて、同じことを言うことであるが、この時は二人であった。
「あ」
と声が揃った。一人はレペンであり、もう一人はD４８のメンバーであった。ダンジョン攻略界隈ではこう呼ばれている。合法ロリBBAのルシファと。
「オゴッ……ゲグゥ……ゼェハァゼェハァー」
容姿としては１２歳程度の背中に羽をつけ、頭にはエンジェルリングが浮いている可愛らしい女の子が吐き気を我慢しているような嗚咽と過呼吸気味な呼吸をしていた。それもそのはずで、ルシファことルシファーは堕天使であり、元は神の元におりレペンの神殺しは天界で知らないものはいないのだ。そして数多くの神を殺し、神に仕える天使も殺された。そんな中で生き残るには、神に反逆するか、逃げ切るかレペンに敵対しないかであり、ルシファーは神に反逆した天使の一人であるが、数多くいた堕天使は人間界ではなく天界にいる。そう、神のいない天界で自由に暮らしているが、遥か昔、天界そのものを破壊したレペンが目の前にいるのである。その天界破壊時になんとか生き延びたのが、ルシファであり、天界破壊の理由はわかっている。天使が神を求めてしまったからである。二度とそのようなことがないように、ルシファと同様に生き延びた天使が後世に伝えた甲斐もあって、今の天界は"存在を許されている"のだ。
「ルキフェル・ルシファー・ルキキじゃん。久しいな」
「い、いいいい、今ではぁる、るるる、ルシファです」
D４８の中でも見た目はともかくとして、実年齢でいえば最高齢であるルシファがビビっていることにビビるD４８がいた。
形而上的に、ルシファはレペンを感覚的経験を超えた現象と思っているし、感じている。言うなれば雷や地震といった自然災害はある程度の規模であれば経験上、これはやばい、これはセーフなど感じ取れるが、レペンに対してはそれすらも出来ない。抽象的概念といえばそうなるだろうが、破壊という概念そのものが生物として確立している。言葉にするのであればそう言うのが適切ではないか、とルシファは思っている。
そして、ルシファからすれば概念破壊の神をも殺すドラゴンがなぜダンジョン攻略なんかをしているんだという疑問を抱いていた。
「ダンジョンは放置しておくと、ダンジョン内からダンジョン外へモンスターが排出されることはわかってるだろ？ 稀にダンジョンから神族が生まれることがある。というか、神そのものも生まれることもある。神殺しの代名詞としてはダンジョンが成長して神を生み出すというのは許し難いことだろ？」
それは本当に極稀にだが、神や神族は生まれる。生まれる前や生まれたばかりで滅ぼされるのは相手が相手なだけにしょうがないと思うこともあるが、理不尽の権化ともいえる存在なのでどうしよもないだろう。
日頃は威風堂々とした外見に見合わない合法ロリBBAのルシファが常に子鹿のように震えながらダンジョン攻略していく動画配信はなぜかバズりにバズり、一気にD４８の名前とルシファの名前が世界中に広まった。レペンの方は言わずもがなである。
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