人間社会のことは人間が解決する
第一章 ドラゴン放浪記編
※ 人間社会のことは人間が解決する
夜王討伐のため光の国レインから進軍した軍隊は、夜王の軍勢と戦いあと一歩のところまで夜王の軍勢を追い詰めた。そこに、突如として現れたドラゴンが夜王を含めその軍勢を消滅させた。その事実が映像付きで余す所なく全世界に公開された。そしてそのドラゴンの正体は、伝説や神話に残っているエンシェント・ドラゴン・レペンであるということを、教皇キュクー・レインが保証しており、彼女の逸話は全世界に知られているし、嘘はつかないことで有名であるためにその事実が本当であるというのが世間一般の認識である。
夜王討伐とドラゴンの出現事件から数週間が経過していた。その間に光の国が公式に映像付きの戦闘とドラゴンの登場を公開し、そのドラゴンの正体はエンシェント・ドラゴン・レペンであることを全世界に通達。その後、各国の首脳はどうするべきかを考えるべく、世界政府に対して緊急世界首脳会議を要望。ありえない速さで要望が承諾され、完全中立国クラフクにおいて緊急世界首脳会議を執り行うことが決定された。
勇者王サトウ、巨人王タイタン、ヒノモトの帝、南大陸を統べる魔女のマレフィ、世界政府代表取締役のジョン・マーティンに加え、アドバイザーとして教皇のキュクー、ハイエルフであり元エルフ族長のフレイ、エルダーダークエルフのデク、エルダーオークのオルフ、始祖の吸血鬼、メアリーがいる。
各国の首脳とエンシェント・ドラゴン・レペンを知るアドバイザー達による緊急世界首脳会議と公表しているが、古代から存在している者たちは久しぶりの邂逅となっており、プチ同窓会みたいな雰囲気はある。事実として、レペンを知る者たちにとっては対策を講じるにもどうにもならないというのが暗黙の了解で認識されているのでしょうがない部分はある。だが、それを知らない者たちにとっては真剣に対策を講じることを前提としており、その認識の差をどう埋めるかが、アドバイザーの役割とも言える。
各国首脳の考えとしては、伝説や神話に出てくる所謂、伝説上の生き物というのはあくまでも作り物だという認識がある者もいる。実際にこの伝説や神話に出てくる生物が今なお生きているとしてもそれを簡単に信じれるという人間は少ないだろう。そう、歴史にありがちな「とされている」、「と考えられている」を事実として認識ができないように。それは悪魔の証明と言われるものになってくるので、実際にその場にレペンを連れてくるのが一番手っ取り早いのだが、レペンはキュクーの元を旅立っておりその消息は不明である。招集しようにも居場所がわからない上に、自由に生きているレペンを呼び出すという行為はアドバイザーたちにとってはかなりまずいことになると思われている。
歴史的にも経験的にもレペンが人間社会に積極的に関わるというのは少ない上に、政に関してレペンが関わったという記録は皆無である。しかし、今回のキュクーが行った軍事行動に関わっているために、首脳陣はつじつまが合わないと感じている。彼らの感覚では国の運営をするのが政治だ。政策を決めることも軍事行動を行うことも政治なのだ。これに対して言えば、たまたまレペンが夜王を滅ぼそうとしていたタイミングに、たまたまキュクーの軍隊が先陣を切ることになったという偶然の産物であり、決してレペンが人間社会のために協力して夜王を滅ぼしたわけではないのである。ということをキュクーを含めたアドバイザーは過去の記録や経験からうまく首脳陣に伝えている。
会議の休憩時間というのは記録に残らないオフレコ時間という感覚はある。そこで各国の首脳陣であるものの、その実力も高い者はいる。勇者王サトウや巨人王タイタン、魔女のマレフィはその実力は世界中に知られている。
「ところであの映像をみて勝てると思う?」
とヒノモト産の煙管を咥え、紫煙を吐きながら声を出したのはマレフィであった。彼女は魔法に関して右に出る者はいないと言われるクラスの超一流の魔法使いである。そんな彼女は映像とはいえその実力を垣間見ていた。
「無理だ。あんなの勝てるわけ無いじゃん」
と言ったのは、勇者王サトウ。勇者の国というのは代々勇者の血を入れていたり、他国で勇者が生まれたら保護をしたり、勇者に関するエキスパートが集まる国の代表であり、その実力も勇者に匹敵するが、断言して勝てないというのはオフレコの時間であるからこそだろう。
「先祖代々、敵対はするなと厳しく言われている」
巨人族の歴史は長い。その歴史の中にはレペンと敵対したこともある。その巨体から受ける印象とは異なりかなり謙虚で聡明な巨人王タイタンは優しい心を持っているが、戦いとなればその力を発揮するのだが、レペンと敵対するということには慎重であるようだ。
各国首脳陣とアドバイザーが悩んでいるとき、レペンはパスタ巡りをしていた。
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