表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/48

プロローグ

よろしくお願いします。

 

 父の――あの人たちの最期が目に焼き付いて離れない。

 結局のところ。

 わたしは、何も救えず。

 約束も、守れず。

 願いも、叶わなかった。


 300年振りに蘇った、銀色に輝く巨大なスライム状の生命体、〈厄災〉。

〈厄災〉が常時噴出していた毒霧によって、身体の自由どころか、最早呼吸すらままならない。

 

 ――あーあ。このまま死なせてさえくれればいいのに。


 二筋の風が吹き抜けるのと同時に、わたしの両腕が斬り飛ぶ。


 ――痛。


 本来なら、泣き叫ぶほどの苦痛がわたしを襲うところ。

 だけど、『苦痛耐性』能力スキルのお陰で〝麻酔抜きの抜歯〟程度の痛みしか感じない。

 それでも、呻き声くらいはあげてしまいそうなものだけど、この程度の痛みは散々経験していたせいか、痛みに対して鈍感になってきた感がある。


「ごめんねトリア君。やっぱり〈七英雄〉に8人目はいらないって話になってね」


〈厄災〉は倒された。わたしの目の前にいる7人、〈七英雄〉の手によって。

 そして、その内の1人であるクルズが、優し気な笑みを浮かべながら、神速の如く振るった剣を鞘に納める。


 わたしと同様に、厄災の毒を浴びていたはずの彼が普通に喋っていられるのは、彼の横に並び立つ、優しい微笑みを浮かべたフレアラーベによる『治癒魔法』によるもの。 

 なお、クルズに限らず、わたし以外の7人は既に解毒済らしく、誰も毒に苦しむ素振りを見せていない。


「――『鎧精製クリエイトアーマー、トリア』


 うわ、重……。


 クルズに代わって、わたしに接してきたのは〈七英雄〉兼〝幼馴染〟兼〝元婚約者〟のユーステス。

 とてつもない重い鎧を、いきなり纏わされされ、受け身も取れずに地に倒れ込んでしまう。

 

「……最後に……一つだけ……いいかな……」

「……ああ」


 生き残るなんてバカな希望はとっくにない。むしろ〝彼ら〟全員が死んでしまったのに、わたしだけが生き残る意味も必要性も感じない。

 だけど、このままじゃ、終われなかった。

 

「ユーステス……。わたしは、貴方を、認めない」


 息も切れ切れながら必死に紡いだその言葉に、ユーステスの口元が僅かに歪んだのがわかった。

 直後、彼は、何かを口にした気もするけど、毒による呼吸困難に加え、血を失い過ぎたせいか、まともに意識も保てない。


 ――すごい……真っ暗だ。 ……そっか。 これで終わり、か。


 みんなの期待に応えること、できなかったな。

 わたしの役割果たすこと、できなかったな。

 みんなを助けてあげること、できなかったな。

 友だちとの約束を守ること、できなかったな。

 

 ――ああ、本当に、後悔ばかりだ。

 ――もし、また次に生まれ変わることがあったら……その時は―――きっと―――――――――

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ