表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

七不思議奇譚

作者: なと
掲載日:2020/03/23

ちょっとした、散文…なんだか不思議な小説を読みたい方、どうぞ。

懐かしい風に吹かれて、黄昏の町にたたずむ。

時計の針はさかさまに周り、人々は過去を歩む。

サイダーの底のただよう過去の記憶に人は、ロマネスクの時を味わう。

入道雲に、青々しい木々。ヤカンの鈍い光りに、古い家。

背の高い木々に、狭い路地。黒い壁の醤油蔵、味噌蔵。

水頭症の子、牛目の子、赤痢の子、関わるな、彼らは異形の子。

ただ、彷徨う。

夏の家無し子。


彼岸の境目に、逢魔が時。

線香の匂いがしてきたら、包帯の匂いがして、座敷牢に隠れていたくだんの腐臭と花の香

花腐し。

隠れていた姫の頭に角。

隠されていた春が、あの春が、あの遠い日の、あの懐かしくも、呪わしい。

陰翳礼賛。

部屋の隅に櫻の花弁の散ったものがほのかに桜色に光っている。


夏の供養

西瓜に、麦茶が、畳の上には、ビー玉とおはじきが転がっている。

陽だまりはゆらゆら揺れて、人影が妖しい。

何処の家からも線香の香りがして、遠い過去を思い出させる。

空にはB29が飛び、町中戦火の炎。

あそこの影に防空壕があるよ。

人が大勢、亡くなったってね。

着物姿の自分が訪ねてきて、「君は誰?」と。

まったく自分とうり二つの顔をして、ひそやかに笑っている。

逢魔が時に、やってくるよ。

真っ赤な糸と紐。

ゆらゆら、木陰に揺れて、いつの間にか、小指に巻かれている。

たしかに、彼女は昔の私。

ニヤニヤ笑って、「帰れなくなるよ」、と、驚かしてくる。


宵には祭り。

あのお面はなんていうの?

般若?能面?なんで境内に飾ってあるの?重要文化財?

なんだか、黄泉に連れていかれそうな面だ。

踊り出す。

今夜は祭りだ祭りだ、鬼も妖も踊りだす。踊れ踊れ、エーヤレコーラ、ホーヤレコーラ。

炊きあげられた炎の中で、ゆらゆらと、亡くなった婆様の顔が踊っている。

苦しかったのかい?あの夏の日々。一緒だったね、おばあちゃんは手を引いて、あの座敷に連れてきて。

誰かいたような気がする。

なんだか運動帽をかぶったお兄さん。

それとなんだか、わけの分からない、不気味な妖が居たような気がする。

隅の方。

それで、すごい冷や汗と、それから、ふっつりと記憶が途切れて————、

なぜか、そのあとの日に、運動帽が、家の前の白けた道に転がっていたよ。

人込みの中、ほら、迷子になっていると、鬼の手が、引っ張っていって、

神社の裏に連れていかれてしまうよ。

神隠し。

遠い所に連れていかれるよ。


夜の潮騒、貝殻の打ち合わせる音が聞こえてきて、アーシャカクーシャカ。

さっき見ていた花火が瞼の裏に弾けている。

なんだか尻がむずがゆい。

部屋の隅に、禅僧が立っていて、「六文、貰い受けに来た」

と囁いている。

死んだおじい様だ。

いや、なにかの亡霊か。

海の潮騒の音に紛れて、遠い過去に連れ戻される。

防空壕の中で、驚く昔のお兄様と、驚く私。

時彷徨い。

夏の幻想にそそのかされて、時飛び。


は、と目が覚めた。

黄昏幻燈が、位牌の横でくるくる回っている。

そうか、今年も、供養の時期—————————…、


完結




こういう物語もいいかと思って…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ