主人公の相棒
一度フラッと別の子と始めるとなかなか手がつかなくなりますね…頑張りたいなぁ…
それとタイトルを変更しました。
視線を向けてみるとそこには同い年ぐらいの少年が腰かけていた。毛先数センチだけ墨汁で染めた筆のように黒い白髪に緑色の目、目付きは鋭くキツイ印象を与える。
顔はかなり整っておりまだ幼さがあるがだいぶカッコいい、これはもてるな。
こっちには気づいてないよう、というかなんで他にも席空いてるのにとなり座ったのか。いつも座ってるのかな
「いつもの」
少年が財布から財布を取り出そうとしたら財布の口が開いていたのか私の足元に転がってきた。それを拾い上げて隣の少年に渡すために少年の方を向く。金貨だ、そこそこお金持ってるなぁ…この子。私はそれを持ったまま少年の肩を叩く
『落としましたよ、どうぞ』
「ん? なん…うおっ!?」
覗き込むように少年の視界に入るようにマジックボードを向けながら硬貨を渡すと少年は思いっきりのけぞって椅子ごと倒れた。
倒れた少年は後頭部を押さえて呻くが私の姿を確認するとすぐに起き上がろうとする。
『大丈夫ですか?』
「だ、大丈夫だ! 気にするな!」
手を伸ばしてみると倒れてしまったので照れたのかそっぽを向きながら私の手を取らずに立ち上がる。
店主が「なんだ坊主照れてんのか?」とからかうように呟き少年は「うっせぇっ!」とぶっきらぼうに返答する。
それにしても背中に携えた大ぶりのナイフといい、割と鍛えられた体といいこの子も冒険者なのかな。
しばらくぼーっと見ていると少年は少年は頬を染めながら頭をがりがりとかきむしり、吐き捨てるように言う
「キルクだ」
『…はい?』
「俺の名前、キルクだ。俺も名乗ったからお前も名乗れよ」
『…え?……あ、えっと…シノンフェード・ヴァンヴィーラと申します。シノやシノンとお呼びください』
「ところでなんのようだよ」
『あ、先ほどお金を落としたよ?こちらです』
「あ? ……あぁ、ありがとな」
自己紹介しながらぺこりと会釈するとキルクさんは私が手に持っている硬貨を見て自分の財布を確認する、すると口が少し開いていたのに気づき手のひらを出してきたのでその手に硬貨を乗せた。ケーキも食べ終えたので店主さんにぺこりと頭を下げてから外に出る、宿はギルドの宿泊施設を使おうと思ったけどキルクさんと自己紹介した時からカタカタ揺れ始めたこの本が気になるからどこかで宿をとろう。
というかこの本は一体何なんだろうか…なんか怖くなってきた…
近くの安いけどそんなに汚くもない宿に入り、ベッドに腰を下ろす。
これで銀貨二枚と半銀貨一枚。二千五百円ぐらい、だいぶ安い。まぁそれはいいか、と私は閉じていた本を開く。最初に書いてある魔法一覧を流し見しながらページをめくると魔法一覧の次のページに新たなページが現れていた。
「これは…キルクさんの」
そこに書かれていたのはキルクさんの首から上までの人物画、そして名前と…
「肩書…主人公の相棒?」
名前の下には『肩書:主人公の相棒』と記されていた。確かに彼の顔や雰囲気を思い出すと少年漫画に出てくる元気な主人公にツッコミを入れたりする相棒って感じがしていた。でも主人公の相棒? もしかしてこの世界って漫画みたいな世界なんだろうか…? 考えてみるが分からない。
「そもそもなんで私はここにいるんだ」
よくあるような神様と会うとかもないし ―まぁ神様が一個人と会うというのもおかしいする気がするけど― それに第一何かがあってここに呼ばれたとしても自分のことを何も覚えてないとかそもそも目的が分からないとか
「せめてこの本にその辺が書いてあればなぁ…」
といってページをぺらぺらめくっていると一番最後のページに変なことが書いてあった。
【目標】
異物から守れ
…いや、私の方が異物じゃないか?
異物ってなんだ、私のほかに転生者とか元の物語があるとしてそれを破壊しようとしているのなら私の方になるんじゃないだろうか。異物ってなんなんだ、説明不足が過ぎる…
んー、とりあえずキルクさんに被害が及ばないようにすればいいのかな。そもそも何を守るかも書かれていない…追加されているのがキルクさんだからキルクさんを守るのか。キルクさんが主人公の相棒なら主人公は誰なんだ。それとも原作の物語を守れとかそんな感じだろうか。
「あー、もうわかんないな…寝よう。明日は仕事までにギルドに行ってキルクさんのことを少し聞いてみよう」
そう私は決めると枕に頭をうずめる。すぐに睡魔がすぐに来たので目を閉じて意識を飛ばした。
シノンの枕元に置いてある本がひとりでに開きページがぺらぺらとめくれ、とあるページが開かれる。
すると白紙だったページに文字が浮かび上がってきた。
『異物は 今のところ 三人 【特典】により 正気を失う 君には 【因子】がある』
意味深な伏線らしきものを張っていく