新たな仲間と唐突の来訪者
三日後、僕はルイン様沈静化メンバーの顔合わせということで応接間で待機していた。歴戦の強者が集まるのかと、ドキドキしながら待っていると扉が開いて、僕は目をやると
「お、早いな。パスト。」「おぉ~、昨日ぶりだね~。」
いつも通りのテンションのアザゼルさんと鬼神さんが入室。
ホッとした様な、少し残念な様な気をしつつも僕はアザゼルさんに気になる事を聞く事にした。
「そういえば、お二人以外のベテランの方ってどんな人何ですか?」
「そんな奴はいないぞ、お前を含めて全員が今回初参加だぞ。」
「……really?」
「マジだぞ。経験者は別の仕事があるからな。」
「僕達も随分と久しぶりだからね~、本気でやるよ。」
あ、鬼神さんが目を薄く開いて笑った。この時の鬼神さんは結構本気の時だ。
アザゼルさんも僅かながら手に力が入っている。
緊張が高まる応接間にコンコンとノックが響いた
アザゼルさんが、どうぞ、と返事するとガチャリと扉が開いた。
現れたのは若干童顔で鎧を纏った騎士とこちらも幼気な顔をした灰色の人型スライム、少々不機嫌そうにそっぽを向いている竜人の三人が入ってきた。
向かい合って着席した後、童顔騎士が立ち上がって自己紹介を始めた。
「初めまして。僕はデュラハンのモル。『次元に関係なく攻撃出来る』能力者です。」
モルは男性にしては小柄だが、鎧を着慣れている様なオーラを纏って鎧と彼の金髪がお互いの良さを引き出していた。僕はモルに詳しい説明を求めた。
「えっと、その能力の具体的な例ってあるんですか?」
「そうですね……例えば、空間魔法で水晶に対象の人物に対して斬撃を与える事が出来る、かな」
暗殺しまくりじゃないですかヤダー。なんて冷や汗をかいていると、隣のスライム娘が立ち上がった。
「私はスライム。能力は無い。最前線に投入しても構わない。どうせ私は消耗品だから。」
スライムなだけか彼女は服を着てなかった。別にすっぽんぽんという訳では無く不透明な膜が覆ってるので服の替わりなんだろう、と自分に言い聞かせた。だって男の子だからね、仕方ないね。本人の意思と関係なく自己主張するもんね。だが、そんな浮ついた感情は彼女の『消耗品』という言葉で収まった。自分を大事にしない姿勢にカチンときたが、その前にはっきりさせないといけない事がある。
「貴方、名前は?」
「スライム。」
「いや、それは種族名だから…」
「これから死にゆくモノなんかに名前なんて要らない。」
「その間の呼び名が必要だ。」
「じゃあ、決めて。」
「…名前は自分で決めるもんだ。」
「そういうお前だって俺が名付けたから人の事言えないんじゃないか。」
「うぐ……」
アザゼルさんからのツッコミを受け、この娘も考えるつもりはなさそうだ。あまりネーミングセンスに長けている訳でもないが少し頭を捻った。彼女の体は灰色、灰色か……。
「グレー?」
「却下。」
「流石に女の子の名前にグレーは無いと思うよ~。」
「ごめんなさい、初対面だけどその名前はあんまりだと。」
「嫌だ。」
「ハッ。」
満場一致の否定。うん、知ってたさ。僕もこの名前はどうなんだ、と思ったけどさこの程度しか思いつかなかったんだよ。
「それじゃあパストの考えた(笑)名前を少し弄って『グレイス』なんてのはどうだ。」
「「「「賛成」」」」
もう次からアザゼルさんに命名させよう。
最後に竜人の娘が座った状態で
「我は銅。『物質を鉱石化させる』能力者だ。」
銅はチャイナドレスが驚くほどに似合っていた。黒髪の彼女は長身で大人びた顔立ちをして、困ったら助けてくれそうな"お姉さん"というよりも、配下を連れていそうな”姉御”の様な気品を醸し出していた。そう言うと銅は手の平から、翠玉の原石を生成した。この能力あったら裕福な暮らしをするには申し分ない程の能力だな。
「だが、残念な事にこの能力は『原石』しか生成出来なくてな、『鉱石』は生成でしかな。」
薄く笑った銅は、それこそ微笑以外の言葉は相応しくなかった気もした。
対面側の席の自己紹介が終わり、今度はこちらの自己紹介を待っている様子の三人。うぅ、昔から自己紹介は大の苦手なんだけど。そんな気も知れずアザゼルさんから始まった
「お前らにはもうしてるからパスで、名前分かるだろ。」
……たったの数秒で終了した。でもしてたのなら仕方ない、と自分に言い聞かせる。そんな中今度は鬼神さんが口を開いた。
「初めまして~鬼神で~す。えっと~『身体能力のみを限界突破出来る』能力者だよ。」
おい、初めて聞いたぞ。ということはだ、あの模擬戦ではまだ能力は発動してない……?なんて恐ろしい事を思案していると、モルからの質問が出た。
「限界突破ってどの位ですか?」
「そうだね。『翼無しで空を飛ぶ程度』かな、現状は」
何だろう、どうして僕の背中から汗が止まらないのだろう。彼のにこやかな笑みが恐ろしく感じる。他には質問が無いようだから、必然的に俺に視線が送られる。
覚悟を決め僕は口を開いた。
「はじゅ!!」「ブフォオオオ!!」
口頭初っ端から噛んだ。後思いっきりアザゼルさんがお茶を吐いた。モルもグレイスも銅も失笑している。だから自己紹介は嫌いなんだ。何だか自爆した感が凄いが「ゴホン」と咳を払い、改めて自己紹介をした。
「初めまして、ホムンクルスのパストです。能力は今のところ発動出来ないらしいです。」
「パストの能力って何?」
「さぁ。」
何だか三人はとても可哀想な目で見つめてくる。違うぞ、決して自分が能力者であると妄想して現実と区別がつかなくなった奴じゃないからな。見るに見かえたのか、アザゼルさんが説明してくれた。
「成程な、だが能力も使えん様な奴を何故このチームに入れたのじゃ?」
「実は此奴にはもう一つ特技があるんだよな、そうだろ?パスト。」
「え、えぇ。」
「ほぅ。ならば聞かせて貰おうか、その特技を。」
「……。」
どうしよう、決して弱くはないのだが物凄く疲れてしまう、そんな究極のホムンクルスとして生まれた僕の使いどころはあるがデメリットがある特技を少し興奮気味にアザゼルさんが言った。
「此奴は『人の能力を見て、自分が使える様にオリジナルの能力を生成』が出来るんだ!!」「バンッ!!」
と、アザゼルさんが言い終わると同時に何者かが部屋に入って来た。入って来たのは、
「「「!!」」」
美しい少女だった。歳は13~15であろう少女は身長は年相応の高さだったが、服はボロボロだった。しかし、少女の瞳に僕は目を奪われた。瞳には青みが加わった灰色の青鈍と黒みを帯びた赤色の蘇芳色のオッドアイだった。そして瞳にハイライトが無かった。髪の色は翠色だが走って来たのかボサボサ。だが俺はその髪の色に引っ掛かりを感じた。
(アレ?この色何処かで見覚えが…確かリューシャと居た時)
「……ルイン様、何か御用でありましょうか。」
アザゼルさんが敬語を使っていたがそんな事は眼中に無かった。今目の前に居るのはルイン様、そう『彼女を沈静化する為のチームの顔合わせ』をしている途中で乱入してきたのだ。
「ははっ……。」
理解する間もなく、周囲の時は止まった。
思いの外時間が掛かってしまいました。どうも五十嵐 林です。
書きたい事を一杯書きたかったのですが、勢いに乗って書くとカオスな事にしかならないので一旦区切りました。
前回からの投稿から遅れまして申し訳なく思っています。ごめんなさい。
次回からは出来るだけ早く投稿したいと思います。
今後もよろしくお願い致します。