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時雨の止む頃に

「小説家の集い」企画小説です。

バレンタインデー企画です。

今回初めてラブコメ小説を書きます。

至らない点もあると思いますが、最後まで読んでいただけるとありがたいです。


―今日の天気予報は晴れの予想だったのに、小雨が降っていた。これが、『時雨』というやつか。

私、『日比野藍香ひびのあいか』は今好きな人とバス停で雨宿りをしている。とても幸せな気分だ。

―だけどこんな幸せもすぐに終わってしまう。まさに時雨みたいに……


曇り空を眺める。空一面灰色の雲に覆われ、私達を明るく、暖かく照らす太陽は見えない。


「はぁ……」


ふと、気を抜いた瞬間ため息が口から漏れてしまった。最悪だ。

隣には好きな人がいるのに。

彼の名は『立花蒼真たちばなそうま』。サッカー部のエースで、学力優秀、そしてイケメンというまるで何かの少女漫画に出てきそうなキャラクターだ。

勿論そんな人にファンクラブが無いわけがない。

学校の大半の女子はファンクラブ加入済みという謎学校だ。

ちなみに私はファンクラブには加入していない。(というか、あれに加入するのは少々気が引けた)

彼と私の接点といえば、精々学校の席が隣になることが多い、と言うだけである。

この前は、ファンクラブ加入済みの友達が万札を出して、土下座。更には大きな声で「私を彼の隣にしてください!」と、来たものだからかなり困ってしまった。


「どうしたの?浮かない顔してるね?」


私の顔の前にジュースを握った彼の手が差し出された。

そこで、「飲む?」と笑顔で言われる。こんなの惚れてしまうやろ……


「う……うん。ありがと」


ドキマギしながらもお礼を言った。


「雨。なかなか止まないね……」


「そうだね~でも、俺はこうやってお前と一緒に居られることが幸せだからこのまま止まなくてもいいかなって思ってるよ?」


ん?彼の言った言葉が理解できない。

ワタシトイッショニイラレルコトガシアワセ?

言葉が出てこない。顔全体が熱くなり、脳は沸騰し始める。


「ねぇ……」


「ふぁっ、ふぁい!」


「そんな緊張しなくていいって。お前はさ、俺のことどう思ってる?」


「か、か、かっこよくて、イケメンで、頭いい人です!」


「いやいや、かっこいいとイケメンって同じじゃない?わかんないけどさ」


「ごっ、ごめんなさい!」


何言ってんだ私。自分でも言ってる事を理解できない。

クスクスと彼は私の言動を聞きながら笑う。何も笑わなくてもいいじゃないか。


「―」


「―」


二人の間に沈黙が生まれた。

その沈黙を掻き消すかのように、雨足は強くなり、雨宿りしているバス停の屋根を強く叩きつける。

これはもう、『時雨』とは言わないだろう……


―雨が屋根を叩きつける音を耳にしながら、私は少々悦に浸った。

なんというか、―今思うと私はとてつもない状況に身を置いているのではないのだろうか。

そう思うと、身体中が熱くなる。

今すぐにでもここを立ち去りたい身体と、まだ彼と話していたい心が綱引きを始めた。


「どうしたの?風邪?」


と、彼の声が聞こえたので慌てて彼の方を振り向き手を振って弁解する。―はずだった。

私の目の前に彼の顔があった。

何も考えられない。何も考えたくない。なにやってんの、と彼を両手で押し戻そうとするが、彼は心配そうに私の額に手を当てる。


「良かった。熱は無いみたいだ」


ますます惚れそうだ。


―そうこうしているうちにバスがやってきた。

二人でバスに乗り、私は窓側、彼は通路側に並んで座った。


「なんでここに座るの?ほか空いてるよ?」


「どこに座ろうが俺の自由だろ」


「ふにゃっ!」


彼はそう言いながら私にデコピンした。痛い。

雨降りの空を車窓から眺め、彼はイヤホンをして音楽を聴いていた。


「あっ……ここだ」


彼はイヤホンを取ると、バスの『降りますボタン』をポチっと押す。私たち以外に誰も居ないので、車内はずっと静かだった。


「なぁ、俺さ……お前のこと好きだわ」


「じょ、冗談はやめ……」


冗談はやめて、そう言うつもりだった。

しかし、その後彼は、私の顎を軽く掴み、唇にキスをした。


「冗談なんかじゃないよ。俺はお前が好きだ」


「ふぇっ?えぇっ!?」


「また明日この告白の答え聞かせてよ。じゃあ、また明日」


そう言って彼はバスを降り、再び次の目的地へ向けて走り出す。

―また明日。この言葉がまだ頭の中を駆け巡った。

―明日、あいつにいい返事してやろう。そう決めた。

車窓から空を覗くと、雨は止み、晴天に虹がかかっていた。

最後までお読みいただきありがとうございます。

今回「小説家の集い」企画ということでバレンタインに通じてラブコメ小説を書く。ということになっております。

お読みいただいた方なら感じたかも知れませんが、

季節違くね?という質問は受け付けませんw

実はこの小説ずっと前から書きたかったものを手を加えて書いたものなのです。

では、自分のあとがきはこの辺りに致しましょう。

「小説家の集い」はtwitter上で活動しております。今回みたいな企画小説も書いているので、どんどん声をかけていただけるとありがたいです。

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