七話 旅路荷物
大まかな構想ばかりを練りすぎて直近の話を考えていないという悪い癖により、偶に更新停滞します。すみません。
肌寒さに目を覚ました。
周りはまだ薄暗く、地面は少し湿っている。目の前に大の字で転がる生物を見て、寝ぼけた頭が動き始める。時折、木々の間から見える空を鳥が飛んでいく。チュンチュンという雀のような可愛らしい声ではなく、グァーグァーという濁った声とともに。
「地球じゃないんだよな。」
呟いた声は、木々の中に吸い込まれていく。
小腹が空いて、手元にあった例の木の実を少し食べる。やっぱり、一寸痺れた。
目の前の木々を見ながら、ふと気が付いた。空気がおいしい。少し冷えたその空気は、地球で登山なんかをした時よりおいしく感じられた。肺いっぱいに息を吸い込んで、吐き出す。あっ待てよ、僕が普通に呼吸できるってことは、地球と大気の構成がほぼ同じということか?好奇心が眠気を吹き飛ばして、僕はあれを探す。
「どこに・・・」
視界の中にそれがない。
焦りがどんどん大きくなって、駆け出すように立ち上がる。
パサリと背後で小さな物音がした。
振り返って見つけた。本は背中に挟んでいたんだった。
それから二時間余りのワグが起きるまでの間、僕は無駄に高ぶった心を落ち着かせながら、その本を読むのだった。
雲一つない快晴、すがすがしい気分だ・・・と言いたいところだが、実は今一つ問題が発生している。
「喉、渇いたー」
水が無いのである。
ワグが起きてから、僕たちは元の道に戻って歩みを再開した。空腹対策に例の木の実も持って。『測定』によると、町までは30km程。頑張れば八時間程で夕方前には着くだろうと判断した。
だが、水は転移後から飲んでいないし、木の実もほとんど水分を含んでいない。僕が最後にまともに水分をとったのは、地球で図書館に入る前に飲んだお茶ぐらいだ。
一度水のことを考え出すと逆に喉が渇いて、さらにこの日差しである。
実は少し前に馬?車が通りかかったのだが、呼び止めようとしたときに御者がワグを見て「邪魔だ!」と一声。そのまま走り去ってしまった。
「ワグ、魔法で飲み水って出せないのかな?」
「ワレ、ハ、デキナイ。」
わらしべ長者が通りかかって、蜜柑でも貰えないものか・・・。
そんなことを考えていると、前を歩く人影を見つけた。
「今度こそ!」