十六話 目覚之音
慌ただしい場所というところは、嫌いだ。
道を進むと町を区切るように壁があった。その壁を越えると、建物が変わっていた。
豪勢な世界に一歩踏み入れると、兵士と思われる者達がせわしなく動いている。
「そっちの敵はどうなった!」 「逃げました!」 「そっちもか。」
「人が足りん、回復魔法が使えるものを寄越せ!」 「こっちにはいません!」 「何を言っている、そこは二番目に多く配置してあったろう!」
耳につく大声が五月蝿い。それも彼らの職務の内なんだろうが、五月蝿い。なんというか、努力が空回りしているといった感じだ。結果的に混乱している。
まぁ、自分達にとっては得なのかな?敵勢や現状なんかがどんどん入ってくるし。
「ここがこの町の城だな。でけぇだろ。」
結局、大した事も無く城にまで辿り着いた。
「あぁ、こんな城初めて見た。」
(堀も曲輪も櫓も無い、これが城か?)
「なんせ、この国で二、三番目といわれる城だからな。」
「・・・凄いな。」
(この世界は魔法やスキルがある分、自衛に関することをあまり考えないのか?)
そんな事を考えながら、三つ目の壁を越える。これまた何事も無く。こんな事では、不審者も見逃すだろう、攻め入られるわけだ。
「頑張っているな。」
「なんだか拍子抜けですね。終わるまで観てません?」
城の庭では一体の敵が兵士達と戦っていた。何十も繰り出される槍を捌き、飛来する矢や炎を避けながら、手にした棍で兵士を吹っ飛ばしている。だが、既にその体は焼け爛れ、矢が何本も突き刺さっている。勝敗は明らかであった。
「賭けにもならん、それより戻って合流した方が良いんじゃねぇか?心配してるだろうし。」
「あー、忘れてました。駄目ですね、詰めが甘くて。帰りましょうか。」
城の門から外に出ようとしたその時だった。
「ゲアアアアァー」
という絶叫か発狂か、空気をビリビリと震わす音に自分はすぐさま振り向いた。
「おいおい、そこまでするのかよ。」
ヨシザキ氏にとっては想定外だった様だ。
その敵は体中に矢を受け、槍で穴を開けられる事をいとわず、先程より一層激しく暴れ狂いながら、敵の奥深くへとズイズイと進んでいた。
(狂ってる?スキルか?)
そんなことを考えていたら、後ろからとんでもなく場違いな声・・・欠伸が聞こえた。
「フワァ、ああ、やっぱり。五月蝿くて寝とれんじゃろ。おい、お主等、投擲スキルもっとらんか?」




