十五話 思考習慣
登場人物に名前を付けようとして、どんなものが適切だろうと無駄に長く考えてずっと決まらなかったのですが、流石に苦しくなってきたのでパッと思い浮かんだのを付けました。冒険者さんがヨシザキ氏です。
「おいおい、大丈夫かよ。」
心配そうに駆け寄ってくるヨシザキ氏を見て、思う。
――ああ、またか。
「別に支障は出ていませんよ?」
その言葉にヨシザキ氏はイラっとしたのか、声を強くする。
「作戦じゃねぇ、あんたの体を心配してんだ。血も出てるみたいだし。」
「行動に支障は出ません。それより、奴らも退きました。町の様子を確認しに行きましょう。」
自分は地球にいた頃ほとんど家に閉じこもっていて、その外見はヒョロッと痩せて、肌の色も薄い。故なのか、ちょっとした怪我でも周りの人がいささか過剰に心配することが多かった。こういったやり取りをするのも、もう何度目か。
「ま、大丈夫ならそれでいいけどよ。でも、あいつら倒しきらなくていいのかよ?」
「私達の目的は、あの町の中の偵察と可能な限り敵を攪乱・攻撃し、平穏な場所にできるか模索すること。その為に奴らの包囲網に穴をあける必要があった。だから今それをする必要は無い。」
「ああ、そうだったな。」
まったく、一寸は頭を使ってから質問して欲しいものだ。直ぐに解答を求めるようじゃ、バカになるぞ。それとも、戦いの最中にその目的を忘れている時点で、既に戦うことしか頭に無い系のバカなのか?
◆
「誰もいないなー。」
堂々と正門から町に入ってみたのだが、そこから伸びる通りには死体が幾つか転がるだけで、生きてるらしき動きを見せる者はいない。仮に生きてる者がいたとしても、自分もヨシザキ氏も怪我を治すような魔法や道具を持ち合わせていないので、動けない程の重傷を負っていたら助けられない。
「ま、壁の中で大戦闘が起きるとしたら、城の辺りだろうからな。」
「あっちの煙が上がってる方ですか?」
「そうだ。行くか?」
「まぁ、どうせここにいてもやれることなんて――。」
あ、あった。
◆
冷やかしの吠え声の中を進んで、儂は群れの幹部達のもとへ向かう。
〔仇は取れなかったようだな。〕
〔情けない、相手はスキルも使っておらんかったのだろう。〕
着いた瞬間にそんな念話が送られてくる。
〔ふっ、ボス失格だな!〕
〔そうか、ならば今回は主らが指揮を執れ。その中で最も功績をあげた者にボスの座をくれてやるわ。〕
〔〔〔面白い、乗った!二言は無えだろうな。〕〕〕
まったく、単純な奴らじゃ。
〔無論じゃ、安心せい。それと儂はこれから行かねばならんところがあるんでの、もう後は主らに任せたぞ。〕
何処へ行くという声を聞き捨て、儂はその場を後にする。その表情は、ただただ険しいものであった。




