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十二話 落木注意

「お前、結構不気味だな。本来ならそんなの無理だって突っぱねるところだが、面白え企みあると見た。乗ってやるよ。」


 不気味とは失礼な!反論は・・・思いつかない。


「だけど、俺を都合良く使おうとしたのはいけねえな。俺はいつからお前さんの手下になったていうんだい?」


「あ、ごめんなさい。」


 僕としては、彼らは水を与えてくれた恩人であるのだ。行き先が同じだっただけで、今、仲間としていてくれることに本当に感謝しなければいけない。自分の考えを聞いてくれたことで、調子に乗ってしまっていたな。


「あの、それでどうするのです?」


「そうですね、先ずは一寸移動します。ついてきて下さい、説明は歩きながらで。」



 斜面の上から町の方を見る。最初の位置から見えなかった場所には畑がある。だいぶ荒らされてしまっているが。


 そんなことを思いつつ、自分の作業に戻る。


 作戦はこうだ。斜面の上から丸太を転がす、陽地犬は多分逃げる、そこを少しずつ狩る。群れて厄介なら散らせばいい、という単純な作戦だ。


 ということで今、木を切っている。ワグが。


 5人の持ち物の中で、まともに木を伐れるのはワグの斧だけだった。冒険者さんの剣でも切れないことはないようだが、この後の戦いを考えて大事にしてもらった。仕方無いので短剣を借りて、二人で伐った木の枝葉を黙々と落としていた。


「やっぱり私も戦った方が良いんではないでしょうか。」


「こんな状況であなたがここを離れたら、娘さんは怖くてたまらないでしょう。僕達は大丈夫ですから、あなたは娘さんのそばにいてあげて下さい。」


「そうですよね。」


 作業に戻ろう。


「へぇ、意外と優しいとこあんじゃねえか。」


「いつから怖い奴だと思ってた!?」


 目を上げるとワグが7本目を倒すところだった。予想よりだいぶ早いな。


「取り敢えず一旦そこらへんにしとけ。こっち手伝ってくれるか。」


 どうやら、伐るのが早かったのは『斧技』というスキルを併用してやったかららしい。流石は異世界。



 ゴロゴロと丸太が転がる。それにつれて前の地面が魔法で平らに整備されていく。


「ね、役に立ったでしょう。」


「ええ、とっても。」


 隣の女性にそう返事しながら、僕はただ足を走らせる。


「戦いになったらすぐに逃げて下さいね。」


「分かってますって。」


 どうしても手伝いたかったらしい。実際のところ、結構ありがたい。丸太のスピードが目に見えて違うし。


「ギャウ?!」


 丸太が犬の群れに達し、犬が散る。


 僕は逃げ遅れた一匹に狙いを定め、斧を振り下ろした。


 それがこの世界で初めて、僕が動物の命を奪った瞬間である。

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