九話 上位世界
遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。今回は一寸視点を変えてみました。
火が燃えていた。
火はただぼんやりとした明るさと熱を放っていた。そこから発せられる煙はどこえともなく消えていく。
外界と離れた誰もいない空間で私は寝転がっていた。どこでもない場所を見つめて、いろいろと何かを考える。
私達は彼らに実に都合のいい事を言って、彼らを操っている。例えば、私達の世界には神などいない。ただ圧倒的な力を持った集団に過ぎない。神とは便宜上の呼称なのだ。
そうしたことが行われるようになったのにも、ちゃんとそれなりの理由がある。
この世界は実力に因る縦社会だ。かつてより強い力を持っていた私達は、いつからか他の世界への道を切り開き、次々と支配していった。そのようにして私達はいわば上位世界ともいえる場所の住人となった。そしてその中には、見栄っ張りな性格をした奴らもいた。彼らは私達を人々が敬うべき存在として位置付け、そうした風潮はたちどころに当たり前のものとなった。
他界への道を次々に切り開いた私達だったけれど、ある時を境にそれを中止した。その後、私達は割れることの無い大きな一枚岩の集団となるべく動き出した。それがこうした試験が行われる様になった起源だ。
彼は何となく奇妙であった。
転移者というものは、高慢な性格をしていれば力で屈服させ、へりくだった性格であればそのまま敬わせればいい。私はそう教わった。
彼は何となくこの試験の意味や私達について何かを察して、ひとまず素直に転移を受け入れた。そんな気がした。戸惑いはしたけど、面白そうだと私はフフッと微笑んだ。
だが、彼には悪いことをした。転移者の功績に応じ与えられるポイント。最初に貰える50ポイントをケチって標準40のところを35しかスキルにつぎ込まなかったのは間違いだった。それにしてももう少しいいものがあってもよかったと思うのだけれど・・・。質問を少し気兼ねしている様子だったので、お詫びも兼ねて3ポイントで渡したあの本を役立ててほしいと思う。
それから、転移した場所の問題もある。送った場所は彼の要望に叶う安全な場所だと思うけれど、人の住む町とかなり離れてしまった。きっと怒らせてしまったことだろう。
まあそれより問題なのは矢張りあの職業だろう。よく分からない職業に就かせて、見ず知らずの土地に送ったのはこちらの落ち度。とはいえ、古今東西で初めてであったことは確か。彼には悪いが、ゆっくり観察させていただこう。
畳の上を私はごろりと寝返りした。




