ポスト
あの後、ツッキー先輩達はサッカーの顧問に下校時間まで鬼ごっこをしていたらしいが
捕まらず、途中から野球部の顧問の先生も加わったという話を聞いたが結局捕まらなかったらしい
どんな卑劣な方法で逃げ回っていたのか
そっちの方が気になるな
おはよと甲斐くんが声を掛けてきてくれた
おはようと返し、僕はまた本を読み始めた
読書タイムというのが朝学校であるのだが、
僕はなにもすることもなかったし、早めの読書タイムに入っていた
そこへ、一人の女の子が一緒に来てた子にじゃーねーといいながら入ってきた
クラス全員で列をつくるときに隣になる子だ
初日にスリッパに慣れていなかったせいか階段で滑っていたり脱げたりとドジを発揮していた
あれが天然というものなのだろう
いつも、クラスでは5人グループに入っている
ちょっと珍しい
男二人と女三人という組み合わせだ
そんな情報も僕には関係ないが…
前に一回か二回程度話しかけてきた珍しいタイプの女子だった
まぁ、あんまり話すタイプではなさそうだが
気が合いそうだなと思った。
それでも、僕はヘタレで話しかけられずにいる
そう思っているうちに担任が来てHRが始まった
そうして、あっという間に放課後になった
今日は甲斐くんとともに生物部にいくという約束をしていたため帰りの準備をすませ生物部に二人で向かった
トントン
綺麗なノックの音をさせドアを開けて二人で失礼しますと中に入った
中には珍しく大人しい2人組がいた
何かで怒られてぶすくれているのかと思ったがこの二人が簡単に怒られるような人達には到底思えなかった
ツッキー先輩は何かを考えるように椅子に座って頬ずえをついて外を眺めている
ケイ先輩は立ったまま前の壁をガン見していた
ツッキー先輩はまぁ分かるが、ケイ先輩は何故か考える時前の壁を見るのか…そこが気になった
ど、どうしたんですか…?
と甲斐くんが話しかけてみるが、ケイ先輩は無反応
ツッキー先輩は、こちらに今気づいたかのように少し驚いたように目を少しだけ大きく開けて頬杖をやめて立ってから、もとのニヤニヤ顔に戻った
いやいやぁ、すいません
と、浅くお辞儀をして
「考え事をしていたものですから、ところで何の用ですか?」と不思議そうな顔をした
え、部活に行ったのに何の用かと聞かれるとは思わなかったな
「いや、部活に入らされたので部活をしに来たんですけど」
と語尾に力を入れて、苛立っていますよというのを僕なりの方法で伝えようとした
隣の甲斐くんは、部活見学に来ましたと運動部独特のハツラツとした声で言った
すると、ツッキー先輩は
…そう、ですかぁと少し考え込むように顎を手で触る仕草をした
あっと呟くように声に出したと思ったら、
「貴方達も手伝って下さいよ」
といきなり言われた
こっちはポカーンとした顔を二人してしていた
どういうことだ
なにを手伝えばいいのか
それがさっぱり分からなかった
おっと、とわざとらしく言ってから失礼失礼頭の中で説明している気になってしまいました
とわるぎれもなく言った
「実は…ですねぇここは生物部のはずなのですが、たまに変な事が起きると此処のポストに入れるというこの学校の制度みたいなものがありましてね」
どういう制度だよ、聞いた時ない
ポストって、けけけの〇太郎でもあるまいし
「そのポストってどんな具体的にどんな内容のお手紙なんですか」
と不思議そうに甲斐くんが聞いた
その反応を知ってたと言うばかりに。
食い気味に。
「例えば、無くし物の捜索や荒らされたトイレの犯人を探したり、学校の七不思議を解明してくれという内容が多いですかね」
と言った。
そうなんですか
で、今回のはどんなお手紙だったんですか
と聞いた
「これだけで、その手紙のせいだと言うのは結論が軽率なような気がしますが…いいでしょう、話が進まないので」
とやれやれというような顔と手の仕草をした
なんだよ、僕の読み取り能力を褒めて欲しいもんだな
「では、本筋はあそこにいる壁に恋をして見つめているケイにでも聞いてください。
僕が説明しようとすると余計な事ばかり言って、進まなくなりそうなので」
ねっと区切りを付けて
未だに
壁愛者となっているケイ先輩に声をかけた。
無反応。
揺すってみる。
無反応。
軽く顔を叩く。
無反応。
思いっきり殴る…いや、殴ろうとした時に見事に溝内を殴られ倒れ込むツッキー先輩…
ご愁傷様です。
惜しくない人だった。
で、とケイ先輩が圧力のある声でこっちに話しかけてきた
「何の用かな、今忙しいんだけど」
と容赦ない言葉に空気が張り詰める
甲斐くんは平気なのか
「初めまして、甲斐と申します。今日から生物部に所属になります。よろしくお願いします」とハッキリと言って腰を90度におってお辞儀をした
あ、うん、よろしく
とあまり興味も無さそうに答えて、目でそれだけなのかと聞いてきているような気がする
怖い
絶対、友達いないだろ。この人
「なにか」と僕だけに威圧をかけて、睨まれた
なんだよ。超能力者なの。
勘弁してくれ
あ、怯えている場合では無かった
「さっき、そこに転がってるツッキー先輩から今回の手紙の件の説明を受けろ的な事を聞いたんですけど…」
と少し怯えながら聞いてみた
そうすると、さっきの機嫌が悪そうなのが嘘のように
あれ、そうだったのと疑問を投げかけられた
そうですよと甲斐くんが答えると
そうか、そうなのかと1人でブツブツと呟くと
「うんじゃあ、説明するよ。お手紙のお話を」
と、いつも無表情のケイ先輩は珍しく微笑んだ