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ご褒美のお宝

「はぁ~。結局はドゥルジ様の(てのひら)の上で遊ばれてた感じやな」


 ナティさんが影の中に消えて行ったのを確認してから、恨めしそうにシトールさんが話しかけてくる。確かに最初から最後までナティさんのペースで終わった気がする。きっとトーラスやリッチだって俺達が倒せる範囲で選んできたのだろう


「確かに、なんでもお見通しって感じでしたね」

「ホンマや。ワイがロダの魔境に来たのもドゥルジ様に操られたのかもしれんて」


 流石にそれは無いと思うが、やりかねない気がするのも確かだ。俺の為の防具といい、伶への小瓶にスラちゃんの進化に必要な物まで集めて、俺がこの迷宮に来るのが最初から判っていたような感じだ


「その魔石だって、『古き迷宮』から獲ってきたとか言うてましたやろ。『古き迷宮』言うたらA級魔境に有る難攻不落って言われてる迷宮でっせ」

「・・・」


 最後の魔石を見ながら絶句してしまう。リッチの魔石と違い属性などは付いてい無さそうだが、大きさや質が他と違うのが俺でも判る位に純度の高い魔石だ


「はぁ~。もうため息しかでんわ。どんな魔物から獲ってきた魔石か想像もつかへん」

「そんな人に呼び出しを喰らったんですね。ご愁傷様です」

「そこ!。他人事(ひとごと)やと思うてからに」


 同じ魔族にも恐れられるような人なのに、俺の為には随分親切にしてくれるナティさん。次に会う時はきちんと御礼を言っておかないといけないな


「さて、兄さん。今日はこのまま此処で一泊して、明日はゆっくり帰りましょか」

「そうですね。ドライアドに森を繋いでもらえば、直ぐに帰れますから、今日はゆっくりしましょう」

「いやいや。明日もゆっくり歩いて帰った方が・・・」


 諦めの悪い人だ。あんまり時間を掛けるとそれはそれで怒られるだろうに・・・




 翌朝、渋るシトールさんを放っておいて、さっさとカイとクイに乗って馬車まで戻る。そこから森の端まで移動してドライアドを呼び出し町の近くまで繋いでもらう。


「・・・」

「・・・」

「どうした?今日は何もなし?」

「・・・怒られた」

「え!?」

「だから、妖精の女王様にあんまりふざけるなって怒られたの!」


 そうか、ここにも上司に怒られた奴がいたのか。何故かシトールさんと固い握手をしているドライアド。まぁ異世界で上役という物は厄介らしい。しかも異世界の方が実力行使できる分怖いのかもしれない。まさかパワハラ防止委員会とかないだろうし・・・


 あっさりと森を抜け、獣人族の町の近くまで戻ってくる


「シトールさん。此処までで大丈夫ですよ。」

「兄さん。そんな殺生な事言わんといてや。きっちり家まで送るさかい、もう少し一緒にいさせてや」


 なんか馴染みのキャバ嬢の家まで付いて行こうとする酔っ払いのおっさんみたいな事を言い出すシトールさん。そんなにナティさんが嫌なのか・・・しょうがない、なるべくゆっくり馬車を走らせよう


 あれだけ賑やかだったシトールさんが、段々静かになっていく様は流石に少し可哀想になる。とはいえ、森から町までは大した距離でもないのであっさり着いてしまう。


「良かったら、少し休んでいきます?」

「に、兄さん。感謝しまっせ!」


 俺の手を両手で握りしめ、(はしゃ)ぐシトールさん。


「ただいまー」


 そう言って玄関の扉を開けると、奥から伶が出てきて出迎えてくれる


「だから!遅くなるなら連絡を寄越しなさいって言ってるでしょう!!」


 午前様の旦那さんの様に伶に怒られる。


「なんや、兄さんも怒られるんかい」


 後ろにいるシトールさんに気付くと、俺の頭をグリグリしていた手を離し「あら。オホホホホ」と、取り繕う伶。解放された俺はバツが悪い処を見られたと思いつつ、リビングにシトールさんを案内する


「おや、少年。帰ったか」

「智大さん。お帰りなさい」


 リビングではローラさんとハルカさんが出迎えてくれる。伶もキッチンからお茶を用意してリビングに来る


「なんや、兄さん別嬪さんばっかやな。隅に置けんで、しかし」

「その話し方は魔族か?」

「そや、姐さんよう知ってますな。シトール言いますねん、よろしゅう」


 ローラさんによると、このエセ関西弁は魔族の一部で使われている言葉らしい。シトールさんが特別でも無いし、魔族全体がこの話し方って訳でも無い様だ。


 実は駄女神さまの翻訳機能が壊れたかと心配になっていたが、皆もエセ関西弁で聞こえている様なので安心したのだった


「という訳で、魔境であったシトールさんと迷宮探索してたら、実はナティさんの(てのひら)の上だったって事なんだ」


 掻い摘(かいつま)んでだが簡単にシトールさんとの出会いや迷宮の事などを話していく。


「にゃはは、ナティの奴も随分少年の事を気に入ったようだな」

「ね、姐さん。ドゥルジ様とは親しいので?」


 恐る恐る聞くシトールさん。シトールさんにしてみれば恐怖の対象の筈が、此処では随分親しく受け入れられている事に驚きを隠せないようだ


「あれ~でもローラ様は魔王様と親しいのでは無かったのですか~?」

「うむ、あれとの飲み比べの後、二日酔いの魔王を介抱した時に親しくなっての。少々お堅い奴じゃが悪い奴では無いよ」

「って、まさか魔の七日間の相手って・・・」

「それが何を指すのか知らんが飲み比べの後、二日酔いで随分八つ当たりをしておったの」


 シトールさんによると、三日三晩の飲み比べとその後の魔王様の八つ当たりを称して、魔の七日間という御大層な呼び名が付いているそうだ


「あの時はそりゃ大変やったんや。魔族総出で酒の用意をさせられるわ、終わったら終わったで書類の認可を貰いに行けば殴られるわで、みんなエライ目に合ったんや」

「にゃはは、もう過ぎた事ではないか。それに伶が創った酒で再戦の約束もしたしな」

「か、堪忍してや」


 どうやら、魔族にとってはトラウマ級の騒ぎだったようである。そういえばあのナティさんでさえ勘弁して欲しい様な事を言っていたっけ・・・


「あ!そうそう。お土産もあるんだった」


 ナティさんから貰った小瓶を伶に渡して、スラちゃんの進化の事や俺の防具の事とかを話す


「これって・・・」


 小瓶の中身を見て驚いている伶。


「ふむ。儂らじゃ中に何が入っているのかさっぱりじゃの」


 ローラさんの言葉にハルカさんも頷く。俺だって何かのキラキラした液体が入ってるとしか判らない


「『解析鑑定』で見ると賢者の石になってるのよ」


 賢者の石・・・錬金術の触媒に使う物だった筈だけど、どんな物語やゲームでだってかなりの貴重品だし効果は最上級って言う、まさにお宝だ。まぁ石って言っておいて液体になってる時点で不思議な物質って事は判るがどう使うかはサッパリだ


「スラちゃんの分って言われた小瓶はエリクサーと賢者の石が混ざってるわね」

「なんとまぁ贅沢な事じゃの」


 ローラさんも驚くというよりは呆れている


 エリクサー。此方も錬金術に出てくる他にもゲームでは最上級の回復薬の扱いになってる場合もあるが貴重品なのは間違いない。ゲームなんかでは貴重過ぎて使わないままアイテムボックスの肥やしになる場合が多々ある位だ


「ナティがやる事じゃ間違いはあるまいて。きっと進化にいい影響が出るのじゃろ」

「はい。エルフの里でも聞いたことがあります。伝説ではハイエルフの始祖がそれを使って絶大な力を得たそうですよ」


 これは楽しみになってきた。スラちゃんも俺の膝の上で楽しそうにしている。スラちゃん無双への道がグッと近づいたな


「賢者の石もこれを使ったら、智大の刀とかゴーレムにどんな影響が出るか楽しみだわ」

「そりゃ、ワイも楽しみや。是非見てみたいで」


 シトールさんがシレッと仲間に入っている


「いや、ナティさん所へ行かなきゃ駄目なんでしょ?」

「兄さん。そこを何とか」


 顔の前で両手を合わせながらお願いしてくるシトールさん


 スラちゃんがポンポンとシトールさんの肩を叩く。そりゃあ自分の進化に手を貸してくれたナティさんの方が大事だよね。勿論、防具を貰った上に稽古をつけて貰えた俺もそうです


「きゅ!きゅ!」


 ほら、諦めろってさ


 誰も味方の居ないシトールさんは渋々諦めた様だった


読んでいただいて有難う御座います

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