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ロダの魔境~迷宮探索編4

 さて、シトールさんが頑張っている間に、ノーライフキング、リッチについて少しお(さら)いしておこう。アンデッドの上位種で死霊術の極意をもって進化した個体と言われており永遠の命を得ている。実体はあるがその力の源は異界のアストラルボディにあり、肉体はその受け皿でしかない。なので消滅させる為には異界のアストラルボディの方を叩かねばならず物理攻撃では消滅させることはほぼ不可能だ。


 また元が高位の魔術師だった事も有って魔法防御はかなり高く、攻防に優れた厄介な奴だ。弱点は日光や浄化魔法。聖水や浄化の魔道具でも力を弱める事が出来るという


 手持ちの情報を調べれば調べる程、俺達が相手取るには非常に相性が悪いという事が判る。役に立つアイテムなんかは無いし、浄化魔法なんてものが使える訳がない。基本物理攻撃しか手札が無い状態だ。


 しかし、今回はリッチを消滅させる必要は無く、あくまでも肉体を倒せば良いだけだろう。別にゲームのクエストとかでは無いのだ。存在を消滅させなくてもいいと思う・・・というかそれしか出来ない


「ちょ~、兄さんいい加減にしてや!」


 おっといよいよシトールさんが危ないので、そろそろ加勢に向かおう


「ごめん、少し考え事してた」

「時と場合を考えてや」


 トーラスと戦った時の様に三角形の包囲をして攻撃を加える事にする。リッチの攻撃は魔法が主体だ。此方も魔法防御の高いブルーベルを壁役にして攻撃してくのが最善だろう。身長などは俺達とあまり変わらない姿だ、急所めがけての攻撃も可能なのはまだ救いだ。


「近づくと瘴気にあてられるで!きっちり身体を闘気(おーら)で覆ってから突っ込むんや」


 シトールさんがアドバイスをくれる。普段から戦闘中は闘気(おーら)を纏っているが、もう一度意識して穴が無いか確認してから間合いを詰める。雑魚アンデッドより動きは遅くないが元々近接職では無いので竜牙兵に比べれば攻撃するのは楽だ。しかし攻撃して肉体に傷をつけても異界からの魔力を補充され肉体は直ぐに修復されてしまう。その上防御する事を考えていないので、攻撃されている最中だろうと魔法を放ってくるので油断はできない


 囲まれた状態では時間のかかる魔法は不利だと思っているのか、威力の小さい魔法を無数に全方位に向かって放ってくるリッチ。闘気(おーら)を纏った刀で斬り裂き、弾き飛ばし、受け流す。そうして間合いを詰めて必殺の一撃を加えると、強めの魔法を放ってくるので後ろに下がって間合いを開ける。


 先程からこれの繰り返しだ。必殺の一撃の筈なのに躊躇(ちゅうちょ)なく帰ってくる反撃。目の前で傷が高速再生されていく(さま)を見ると少し(くじ)けそうになる


「シトールさん、弱点とかないんですか」

「ない!。だからこそキングを名乗れるんや」


 取敢えずは現状の攻撃を続けるしか手が無いのか・・・

 しかし、傷が再生でき魔力の補充も出来るリッチと違って、此方は傷が治る訳でもないし疲労だって溜まっていく。今のところ三人とも大きな攻撃を喰らってはいないので何とかなっているが、このままじゃあジリ貧なのは間違いない


 そんな事を考えつつ、何回目かの一撃を入れリッチの魔法で迎撃され間合いを取る。その時ふと思ったのだ、何故リッチは俺達を下がらせる?。初めは攻撃されるのを防ぐ為だと思っていた。でもよく考えればリッチは攻撃を受けても再生が可能なのだ。それならば間合いが近い方が魔法を回避されにくいと考えるのでは無いだろうか?


 ほぼ自動でリッチの攻撃を躱しながら思考を積み重ねていく。リッチは明らかに俺達に間合いを詰められるのを嫌っている。しかし攻撃を受けるまではそれほど気にしていない様にも感じられるのだ


 導き出される答えは・・・


「シトールさん、ブルーベル!フォローを頼む!!」


 二人の返答も聞かず一挙に間合いを詰める。出来るだけコンパクトに刀を振るい無理に避けるのでは無く、最小限の動きで最短距離を詰める。肩口から袈裟懸けに斬り付けると、リッチが強めの魔法を放ってくる。今まではそれを避ける為に間合いを取っていたが今回は引かない。最低限急所だけを守り、(あえ)て魔法の攻撃の中に身を(さら)


 最初に攻撃した袈裟懸けの一撃の傷が目の前で再生していく。魔法の攻撃に身を晒しつつ横薙ぎに身体に斬り付ける


「ギャァアアア!」


 今までどんな攻撃を受けようとも「カカカカ」と笑う様に開いていた口から初めて苦痛の声が響く


「再生している時だ!その時だけは攻撃が通る!!」


 リッチの魔法で焦げた部分から煙をあげながら、再び間合いを開けつつ叫ぶと意図を理解したシトールさんとブルーベルが連携を取り始める。シトールさんが間合いを詰め一撃を加え直ぐに間合いを取る。リッチが回復の為にシトールさんへと魔法を放つタイミングでブルーベルが突っ込み、傷の再生のタイミングで一撃を加えてまた離れるのだ。


 生身ならば致命傷になるだけの傷を高速で再生するには相当の魔力が必要になる。そして、その時だけは仮初めの肉体と異界のアストラルボディと繋がりが大きくなるのだろう。そのタイミングで攻撃すれば本体にもダメージが通るという訳だ。戦闘中の僅かな違和感から攻略法が見えた。これを生かさなければリッチを倒す事は不可能になるだろう


「迅雷」


 囁くように属性を解放する。紫電を纏った身体でリッチの魔法を叩き落としながら突っ込む。加速された身体能力とそれを処理する思考、リッチの身体に一撃を加えても下がらない。目の前で炸裂する炎を刀で一閃して、そのまま返す刀で斬り付ける。胴を薙ぎ肩口から腕を斬り飛ばす。杖を持った腕ごと失ったリッチの魔法が少し弱まるのを幸いに傷が再生された箇所に斬り付ける。斬撃のスピードにリッチの再生が追い付いて行かない。傷が無い所が無い位まで徹底的に攻撃を加えていく


「グ、グゥア、ガ」


 (うめ)く様に声を漏らすリッチ。天上を見つめる様にして、まるでそこにある物を掴むように手を伸ばす。勿論伸ばした先に何かある訳でもなく力なく伸ばされた腕は、やがてガックリと下される。同時に崩れ落ちる身体からは紫がかった(もや)の様な物が噴出していた


「兄さん、見事や。あっちの世界の身体ごと切り刻んだみたいやな」


 シトールさんが声を掛けてくれるが、俺にも返答する余裕は無い。属性を解放したツケで体がいう事を聞かない。初めて使った時に比べれば楽にはなっているが、今日はもう動けないだろう。


「ありゃ、兄さんもボロボロやないか。どないしろっちゅうんや」


 俺が倒れそうになるのを支えてくれたシトールさんの言葉にそのまま意識を失ってしまった




 意識が戻ると、几帳面にも引いてくれた毛布の上で寝かせて貰えたらしい。額の上には水タオルも置いて有ったので、それなりに心配してくれたみたいだ


「おっ!兄さん気付いたか」


 嬉しそうに言うシトールさんは夕食の準備だろう、火にかけた鍋をかき混ぜながら声を掛けてくれる


「どれくらい寝てましたか?」

「う~ん、二時間くらいやないか!?。今日は此処で一泊や、もう少しゆっくりしとき」


 身体の傷も治っているので、ポーションか魔法で治してくれたのだろう。


 心配そうにスラちゃんも枕もとに居てくれたらしい。ブルーベルは・・・まぁいつも通り無言で立っている


 ちょっと無理しすぎたかもしれないが、全員無事で良かった。ふと見ると宝箱と魔石が置いて有る。律儀に俺が起きるまで開けなかったみたいだ。言葉遣いのせいで如何(いかが)わしい所が有るが、ああ見えて結構しっかりしてるんだな


 そんな事を考えながら、うつらうつらしてしまう。やっぱり属性解放のツケは大きい。早く使いこなせるように成りたいなと思いながら、そのまま意識を手放してしまった


もう少し、次でバトルも終わる予定です。思ったよりも長くなってしまってます

字数も多めにしてるのですが、書いていると、あれもこれもと、ついつい詰め込んでしまって・・・

上手な人の話を読んでいると、その辺りを上手に管理してるなぁ、と思ってしまいます

誰かコツを教えて下さい(笑)


いつも読んでいただいて有難うございます

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