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ロダの魔境~迷宮探索編2

 身構えた俺の目の前でトーラスが放った攻撃は、俺達を直接狙ったものでは無く地面に叩きつける一撃。攻撃の余波で地面が揺れ三人とも体勢を崩す。そこに襲い掛かる巻き上げられた土砂と飛礫。


 壁際に追い込まれていた俺にとって直撃を受けるよりは、まだましだったが結構なダメージが通ってしまった。その上軽いスタン状態になっているのか、直ぐに立ち上がる事が出来ない。唯一素早く立ち上がったシトールさんが、トーラスのタゲを引き付けてくれているので良かったが全員が状態異常を受けていたら洒落になっていなかった


「に、兄さん。立てる様になったら、はよ手伝ってや」


 シトールさんがなんとか攻撃を受け流しながら、余裕が無さそうに叫ぶ。ただエセ関西弁のせいでいまいち緊迫感が出てこない。ほっといても大丈夫じゃないのか?


 とはいえ、本当に助け無い訳にもいかないので先程と同じく三角形を描く様に囲んでしまう。今度は後ろに注意しながら、部屋の中央に来るように位置取りにも気を使いながら相手の動きをよく見つつ攻撃の手を加えていく


 基本は頑丈なブルーベルを正面に置いて、トーラスの攻撃を受け止めながら隙を見て俺とシトールさんでダメージを積み重ねていく。上半身の急所には届きそうもないので、足元や膝裏の急所めがけて一撃を入れては下がるの繰り返しだ。最近、膝裏ばかり攻撃してる俺には勇者や英雄って感じは間違いなくゼロだ


 繰り返されるチマチマとした攻撃。しかし確実なダメージを与え続けた結果、下半身が血塗れになったトーラスは最早狙いを付けた攻撃では無く、ただ無茶苦茶に両手持ちのバトルアックスを振り回すだけになっていた。


「兄さん。もう少しやで。気ぃ引き締めや!」


 シトールさんが声を掛けてくれる。俺もあと少しで倒せそうだと思っていたが、その言葉でもう一度、気を引き締める。


 大振りの一撃をブルーベルが力に逆らわず大きく受け流すとその勢いに体勢を崩したトーラス。もはや下半身のダメージで踏ん張りが効か無くなっていたトーラスは、そのまま自分の攻撃の勢いを消す事が出来ずに膝と両手をついてしまう。この大きな隙を見逃す事無く俺達は三方向から各々の武器に光を纏わせ止めの一撃をその身体に叩きつける。俺達の渾身の一撃を受けたトーラスは遂に大地にひれ伏すように動かなくなった


「ふう~何とか無事に倒せたな」

「二人で倒したみたいにせぇへんで、ワイも頑張ったんやから仲間に入れてや」


 ブルーギルと拳を合わせてお互いの健闘を称え合っていると、疲れた様にバルディッシュを杖の様にして体重を預けながらシトールさんがぼやいていた


「ホンマかなわんわ」とぼやき続けるシトールさんを宥めていると、トーラスの身体が徐々にぼやけていきその跡には宝箱と魔石が残り、地下へと続く階段がゴゴゴという音と共に出現した


「階層のボスを倒すとご褒美と次への道が出来るんは、他の迷宮と同じやな」

「そうなんですか?」


 迷宮初体験の俺にとっては初めて見る光景だがシトールさんには見慣れた光景らしい。迷宮に現れる魔物を倒すとその身体は吸い込まれる様に消えてしまい、稀にアイテムや魔石を残すのだという。この迷宮は途中で魔物が出現せず、いきなりボス戦になったので俺にとって迷宮で初めて倒したのがこいつだった訳だ


「ボスが残す宝箱には罠とか心配せんでいいから、はよ開けてみ」


 シトールさんの言葉に宝箱を開ける。何か、こうドキドキする気分を味わえるのはゲームと同じかもしれない


「これは・・・手甲?」

「お、中々エエもん出たんとちゃうか?」


 銀色に輝く左右一対の手甲は、何かしらの効果を持っていると思えるくらい不思議な存在感があった。


「でも、装備するのは後できちんと鑑定してからやで。呪われた武器とか普通にあるさかいな」

「呪われるんですか?」


 呪われたらどうすればいいんだ?神殿とか魔法とかで解決できるのか?でもこの世界の神殿ってゲームに有りがちな役割持っている様な感じじゃないんだけど・・・おお~死んでしまうとは情けないとか言いつつも生き返らせてくれるのならば安心なのだが


「まっ、呪われても気にせんかったら大したことないしな」

「そうなんですか?」

「そや、ちょっと枕もとに誰かが立ったり、金縛りに合うぐらいや」

「って、そっちかよ!そっちの呪いかよ!!」

「って兄さん!何してますのん」


 シトールさんのボケに突っ込みを入れつつ、トーラスが残した魔石をいつもの様にスラちゃんにあげていると、シトールさんが突っ込んでくる。突っ込みに突っ込みを返すとは関西人の風上にも置けない奴だ


「いや、なんで?みたいな顔してますけど、それ売ったら結構な金になりますで」

「別にお金に困ってないし、スラちゃん無双の為には必要なのだよ。ワトソン君」

「ワトソンって誰や!」


 小さいボケを加えつつ答える俺にシトールさんの電光石火の突っ込みが入る。やっぱり関西人の血が流れてるな。


「なんか魔王さまの話だとスラちゃんも進化するらしいし、その為には魔石とかあげると良いって聞いたんですよ」

「ま、魔王様!?魔王様ってあの魔王様?」

「他に魔王様がいるかは知らないけど、お酒の大好きな魔王様だよ」

「ひょ、ひょっとして・・・兄さんの知り合いって・・・」

「そうですよ。あっ、後はナティさんもそうですね」

「ナティって・・・七大魔族のドゥルジ・ナース様?」

「あぁそんな事言ってた、でも自分はただの執事だって言ってたからなぁ。七大魔族ってそんなに偉いの?」


 俺の答えに顎が外れるくらい驚いてるシトールさん。暫くフリーズしていたが急に動き出したと思ったら


「すんませんでした。どうかこの事は内密にしてください」


 土下座しつつ叫ぶシトールさん。いや、これは土下座というより五体投地に近い。よっぽど知られるのが拙いのか?


「ど、どうしたんです急に。ナティさんや魔王様に知られると拙いんですか?」

「ま、拙いも何も・・・兄さん一生付いて行くさかい何とか内密で頼んます」


 取敢えず五体投地の土下座をやめさせて事情を聴いてみると、長く生きるシトールさんは退屈な生活に飽き、世界に溢れる不思議という物や色んな所を旅しながら謎を解き明かすって事を生き甲斐にしているそうだ。しかし、それは世界に干渉する気が無い魔王様の方針とはまるで逆方向、つまり真っ向から逆らっている事になる可能性(・・・)があるのだ


 あくまでも可能性(・・・)だが、未発見の迷宮を探索する事で得られる宝の中にはアーティファクトに匹敵するような世界に影響を与える力が有る物が出るかも(・・)しれないし、そもそも世界の不思議や謎を解明する事で、今の世界の在り様(ありよう)を変える力を得るかも(・・)しれないのだ


「あくまでも可能性の話や。仮にそんな力を得たってそんな物に興味なんて無いんや。ただそこに不思議や謎が有るなら答えを知りたいだけなんや」

「それなら、あの魔王様ならきちんと話せば許してくれそうですけど・・・」

「そや、ひょっとしたら魔王様なら大丈夫かも知れへん。だけど、だけどなドゥルジ・ナース様は・・・」


 どうやら、魔王様の執事を自任するナティさんに知られると可能性の段階でも処罰されるらしい。ナティさんにしてみると、『かも』って時点でアウト。それは如何(どう)してか?、つまり魔王さまの『方針に逆らう可能性のある事をする』って時点でギルティって訳だ


「・・・シートルさん聞いてください」

「な、なんや兄さん改まって・・・」

「たぶん、俺にはナティさんの使い魔が付いてると思うからもう遅いと思いますよ」


 ローラさんが姿の見えないナティさんを呼んだ時、スッと現れた事や話していた内容を知っていた事から、普段から俺達には使い魔が付いているのだろう。多分、監視しているというよりも護衛や執事としての役割を果たす為だと思うので気にもしていなかったが、シトールさんの事やこの会話は筒抜けだと思う


「あ、あかん・・・」


 そのまま、泡を吹いて気絶してしまったシトールさん


 ごめんなさい。俺にはどうしようもないです


 癒し担当のスラちゃんにもどうにもならないだろう・・・


「きゅぅ」


 主の居なくなったボス部屋にスラちゃんの寂しい鳴き声が響いた・・・


もう少しバトルが続きます。

新キャラシトールさん。中々動かしやすいです。名前の由来は脂肪を落とすあの薬だったりします


読んでいただいて有難う御座います

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