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戦いの前に

 アッティスさんがドス黒いオーラを溢れさせているのだがまだ肝心なことが判っていない


「術者本人の居場所はどうじゃ?」

「はい、村を見張る邪教徒達を尾行して帝都にある拠点を、複数の場所で確認できていますが、術者本人までは断定出来てはいません」

「そう簡単には尻尾は出さぬか・・・」


 ナティさんの調査で邪教徒達の拠点までは確認できた、しかもそれが複数ある事に驚いたが、術者本人の特定までは出来ていないようだ。幾ら邪教徒とは言っても破壊活動の証拠も無しに踏み込むわけにもいかないし、その上術者本人に逃げられたのでは意味が無いのだ。


「いえ、少なくても近いうちに術者本人も村に来るはずです」

「伶、随分自信ありげじゃの」


 伶が自分の言葉を説明していく。本来であれば今回の呪術は少しの情報も漏らしたくない筈だ。それを態々(わざわざ)帝都に近い村で行った理由。前の報告に会ったスラム街の住民の行方不明者。そして各地の墓から盗まれた死体。ここから伶が導き出した答えは呪術の最終実験ではないかという事だった


 おそらく呪術の効果は、行方不明者を使った実験を人目の付かない所で既に終えていて、ある程度の成果は確認しているのだろう。そして今回はそれを見破られるかどうかを試しているのだ。その為に選ばれたこの村、帝都の近くとは言っても所詮は街道から外れた村だ。人の往来はあるが限られているという理由が一つ


 そして、帝都の近くを選んだもう一つの理由が証拠隠滅。魂ごと封じ込めた新しいアンデッドの呪法とはいえ、生命活動が止まったままの肉体が長期間その姿を変えないという事は無い筈だ。いつかは腐って普通のアンデッドと変わらなくなるだろう


 それを最終的には墓から暴いた死体で創ったアンデッドに村ごと襲わせれば、呪術で生まれたアンデッドか普通のアンデッドかの区別は付きにくい。しかも帝都の近くでのアンデッドの出現だ、騎士団が威信をかけて殲滅するだろう。殲滅した後は復活防止に焼却するのが当たり前なので証拠隠滅には御誂(おあつら)え向きって訳だ


「成程、胸糞悪くなる計画じゃが、計画としては見事な物じゃの」

「はい、そしてアンデッドに襲わせる際には術者本人が来て最終的な確認をする筈です」

「判ったわ、そこを捕えるつもりなのね。でも出来ればアンデッドに襲われるまえに救ってあげたいわ~」


 それはそうだろう、理不尽に呪術に巻き込まれた挙句(あげく)、さらにアンデッドに襲われたのであれば魂に救いが無くなってしまう


「では、邪教徒達の動きが判り次第お知らせしましょう。おそらく襲撃は夜になる筈、道案内もお任せください」


 術者が動くならば護衛なども含めるだろうから大きな動きになる筈だ。ナティさんならばその動きは察知できるので事前に知らせて貰える筈だ。気付かれるのを避ける為、村から距離をとってる俺達が急いで向かうには、夜の強行軍になるので道案内もして貰えるのであれば完璧だ


「じゃあ(しばら)くは明け方から昼に寝て夜は起きている様にしましょう」


 伶の言葉に皆が(うなず)き、ナティさんが(うやうや)しく礼をして来た時と同じようにそのまま姿を消した





 始めは明るくなってから眠る事に慣れなかった俺達。如何(どう)しても明るい内の睡眠、しかも野営をしている為、日の光を遮る物が無いのだ。そんな状態だと眠っているつもりでも眠りが浅いのか夜になると眠くなってしまう。いつも昼寝をして慣れているローラさんが一番文句を言っていたのがおもしろかった


 そんな日々を過ごして昼夜逆転にも慣れてきた頃、待っていた人が訪れる


「皆さま、今朝方より邪教徒達の動きが激しくなっております。おそらく今夜が決行だと思われますのでご準備をお願いします」

「やっときたわね、(たぎ)るわ~」

「お姉さま・・・素敵です」


 ストレッチをしながら気合を入れているアッティスさんをハルカさんがウットリと見つめている

 しかし、あのサスペンダーどんなに動いても大切な部分からずれない。どんな仕組みになってるんだ?


「よし、それではこちらも作戦を打ち合わせましょう」

「ふむ、予想される敵の戦力は判るか?」

「はい、邪教徒達は二十名ほどですが戦闘に参加出来そうなのは半分位でしょう。暴かれた墓の数から考えればアンデッドが四十体程度。後は村の住人が二十人程でしたのでそれも敵に回るでしょう」

「それに邪人が召喚されるであろうな」


 うわ、何だよその数・・・戦力比でいったら二十倍以上か?如何(いか)に不意を突けるかが鍵か・・・


「アンデッドは任せて頂戴。私もお母さまの眷属ですもの、綺麗に浄化してあげるわ」

「では、邪教徒達は私達で始末しましょう。邪人を召喚される前に召喚士をどれだけ減らせるかが勝負ね」

「問題は術者の確保じゃな。生死は問わんがそこまでの余裕があるかどうか・・・」


 例え術者を倒したとしてもブロックの時の様に気が付いたらいませんでしたって訳にはいかないのだ。呪術を使えるものは確実に倒さねばならない。しかしブロックがいなくなった時の、その仕組みも解明されていない状態で本当に確保する事が出来るのだろうか・・・


「その事については私に心当たりが御座います。お任せいただければ対処できると思いますが」

「ふむ、魔族は調査だけでは無かったのか?」

「魔族としてはそうです。しかし、先日の智大様のお言葉、個人的にそのお気持ちに報いたいのでございます」


 ん?俺、なんか言った?心当たりがないぞ


「にゃはは。やっぱり少年は大物じゃの」


 いつもの(ごと)く?マークを浮かべる俺をローラさんとナティさんが嬉しそうに笑っている

 スラちゃんも俺を、いい子いい子って感じで撫でてくれる


「ハハハ、智大様お気になさらず。そのままの貴方でいて下されば良いのです」

「智大、難しい事なんて考えないで素直に受け取ればいいのよ」


 アッティスさんもウインクしてくれるし何故かよく判らないけど受け取っておこう。


 ハルカさん(天然娘)は・・・あぁアッティスさんの真似してウインクしようとしてるんだ。両目を(つぶ)ったらウインクにならないですよ。出来ないなら無理しなければいいのに


 少数対多数の不利な戦いの前だというのにすっかり和んでしまった雰囲気の中、みんな静かに闘志を胸に燃やしていた


 宗教の事などよくは判らない。例え邪神を信仰しても迷惑を掛けないのならばそれも良いのかもしれない


 しかし目的の為には手段を選ばない、そのやり方を許す訳にはいかない


 理不尽なやり方で村人たちの命を(もてあそ)んだ(むく)いは必ず受けて貰うぞ


次回バトルです。

シリアス先生もう少し頑張ってください。次こそはお願いします


読んでいただいて有難う御座います

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