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いざ異世界へ2

週末なので、夜にもう一話投稿します

通された部屋はラクトリンさんの執務室の様だ

とはいっても、窓際に小さな机、横に本棚があるだけで、部屋の中央に応接用なのだろう二人掛けのソファーが簡素なテーブルを挟んで置いてある

実家の門下生の中には会社のお偉いさんとかも居たので、その人達の執務室と比べるとかなり質素だ

テーブルの向こう側のソファーでラクトリンさんが両手を広げ迎えてくれた。その顔には満面の笑みが浮かんでおり先程よりは落ち着いた様だが、まだ興奮冷めやらずといった感じで


「改めまして、ようこそ使徒様。先ほどは失礼を…さぁどうぞお寛ぎ下さい」


ラクトリンさんの言葉と共に案内役の女性神官が伶を席に促す

伶が案内に従ってソファーの中央に移動すると、もう一人の神官がカップに入ったお茶の様な物をテーブルに2つ置き、案内役と共にラクトリンさんの後ろに控える

カップは伶の前とラクトリンさんの前に置いてあり、ソファーの中央には伶がいる

(あれ!?、俺の分は…)

席に案内されなかった俺は、仕方なく伶の後ろに黙って立つ。


「まずは身分証明書を作成いたしますので、こちらに手を置いて頂けますか?」


ラクトリンさんの言葉で神官達が台座に乗せた赤い球状の物を俺達に差し出す。

手を置くと一瞬強く光った後、神官たちがそれを持って部屋を出て行く


「作成には少し時間が掛かりますので、お話を進めていきましょう」


ラクトリンさんの言葉に異存はないので頷くと初めの神託が出たあたりからの話をしてくれた


「一か月程前に慈愛と豊穣の神アスタルテ様より、『世界に危機が迫っているので各々備えを始めなさい』という、神託が有ったのが始まりです」


全ての神殿にあったその信託は、すぐに王国や帝国、小さな村々に至るまで報告され軍隊の準備や有事の際の避難先等を確認する等の対策が取られたらしい

今も警戒態勢は続いており街の出入りや国境沿いの警戒は厳重で、軍隊の居る所では食料等も規制されているそうだ

皆が不安も抱きつつも、思いつく限りの準備を進めて行く事で大陸中が一致したらしい


「10日程前になって、今度は『危機に対応するための使徒を遣わせるので、協力して解決にあたりなさい』という神託が有ったので、一転して使徒様を受け入れる体制を整えたのです」

「そして先程、新たな神託が有り神殿に向かうと使徒様がいらしゃったのです」


話を聞いているとこの世界では神託がかなり重要視されているようだ

日本で神託が有ったなんて言っても誰も信じないだろう。せいぜいネットのオカルト板で話題になる程度だ

俺たちの世界よりも神々が身近なのだろうが、いまいちその重要性が理解できない

しかも神託を出してるのが先程まで伶に苛められていた、あの表情豊かな女神さまなのだというのだから尚更だ

神託も命令形で威厳があって、あの間延びした話し方とはまるで違う…

そういえば、俺達の前に出てきた時はちょっと威厳が有ったので、きっと演技しているのだろう。

神託を出すマイクの前で胸を反らして威厳を出そうとする女神さま…想像すると少し笑える


「……、その際、神殿の周りで一番魔力の強いものを紹介する事と、各個別神殿の場所を伝える事を指示されたのです」

(やばい、想像が楽しくてまた話を聞いてなかった)

「そうですか、それはご苦労をお掛けします」

「何を仰います。使徒様を迎える名誉を受けたのです。身命を賭す事を誓います」

「有難う御座います」


伶が余所行きモードで対応している。

普段は感情を表に出さず、親しい人以外とは言葉も交わさないタイプだが必要があれば笑顔も見せるし頭も下げるのだ

主に近所のおしゃべりおばさんや学校の先生になのだが…


「それで、魔力の強い方はどのような方なのでしょう?」

「はい、この地方の獣人族の集落にかなり魔力の強い個体がいるそうですが残念ながら詳しい事は判らないのです」

(獣人!来たよ猫耳にうさ耳、もふもふ尻尾だー!)

「実は人族と獣人族は集落としては交流が少ないのです。この村にも少数ですが獣人も居ますし、獣人の集落に人族も居ます」

「ですが、主に我々の側に差別感情を持つ者がいるのです。特に裕福な者程そういう傾向が強いので集落として交流しようとすると邪魔が入るのです」

「ですので先触れを出しますので、獣人族の集落で詳しい話を聞いて欲しいのです」


逸れがちな話を相槌と表情のみで促す伶にラクトリンさんが答える

獣人族の集落は歩いて半日程度の場所にあるらしい。馬車で送ってくれるので1~2時間で着くそうだ

それにしても、伶は女神さまにも魔力が高いものの居る場所への転移を希望していたが、何の意味があるのだろう?

俺と伶で世界を救ってハッピーエンドでいいと思うのだが…


「ところで使徒様にお聞きしたいのですが…」

「はい、なんでしょう?」

「アスタルテ様が仰る世界の危機とはどのようなものなのでしょう?」

(えっ!?知らないの!?)

「私達も具体的には聞いておりませんが…」

「そうですか… 実はアスタルテ様の神託は何時も謎めいているのです」

「わざと曖昧にして我々の試練としているというのが通説ですが、今回は世界の危機という大事なので具体的な事が判ると思ったのですが…」

(あんのバカ女神が~!、絶対伝えるのを忘れてる!アスタルテなんてカッコいい名前じゃなく駄女神さんと呼んでやろう)

「ラクトリンさん、個別に神を祀っている神殿の場所を伝える事という神託から考えれば、そこへ行けという事でしょう。」

「なるほど、それが試練に当たるのでしょうね」

(いや、他の神々にフォローさせる気に違いない)

「何か世界の危機に当たる様な出来事や予兆はあるのですか?」

「このような田舎なので中央の話などは入りづらいのですが、特に変わったことは報告されていません」

「では、試練を受けてみるしかなさそうですね」


コンコン

今後の方針が決まりそうなところで、部屋の扉がノックされてラクトリンさんが入室を許可する

お茶のお替りと持った神官と、赤い布を掛けたお盆の上に身分証を乗せた神官が入ってきた

どうやら、身分証ができたらしい


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