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死と再生の神キュベレー

「さて、使徒の皆にはキュベレー様に会いに行って貰うとして、僕たちも出来る事をやらないとね」

「タンド殿。下水道の調査はギルドに任せれるか?」

「そうだね。危険度が高いけど、冒険者がウロウロしてたら邪教徒達も手が出し難いだろうし、適当な調査依頼を各ギルドに出しておくよ。」

「それでは、私達は皆さんの手の届きにくい所を中心に調査してみましょう」


 タンドさんとポンタさんが方針を決めて打ち合わせをしていく。そこにナティさんが補足を入れていく感じで俺が何かに怪しい物に目覚める前に会議は終わった。・・・大丈夫だよね、俺!?


 他の皆が銘々の方法で帰って行く。残された俺達は次の神さまについての予習に励む


 死と再生を司る神キュベレー。

 先に言っておく。語尾はレーであってレイじゃないので注意してもらいたい。レイになると『あれ』になってしまう


 キュベレーは元々は大地母神の一人で多産や豊穣など実りの母としての象徴であった。多くの大地母神がそうである様に彼女も自然のサイクル、種が芽を出し花になる。枯れた花からまた種が出来る様に死と再生を司る素養はあった。しかし彼女が信仰を集めたのはそれだけではない。実はかなりファンキーな神さまなのだ


 まずは彼女、元々は彼だったのだ。・・・いきなりだが、そうなのだからしょうがない

 生まれた時の名前をアグディスティスという乱暴者の神さまだったのだが、その乱暴さ故に去勢されてしまう。その時切られたナニは木になり、その実を食べた乙女から息子が生まれるのだ。


 さらに、去勢されて女性になったアグディスティスはキュベレーとなり、桃から生まれた桃太郎も裸足で逃げ出すであろう、ナニから生まれた息子(ナニ太郎)と恋に落ちるのだ。しかし浮気をしてしまった息子(ナニ太郎)はキュベレーによって狂わされてしまい(みずか)ら去勢して自害してしまう。・・・また去勢だ


 しかし、それを悲しんだキュベレーは息子(ナニ太郎)を甦らせ彼を永遠の存在として変えたのだ・・・なら初めから殺さなければいいのにね


 さらにさらに、息子(ナニ太郎)が去勢された後に甦ったのを神聖視した信者たちは(みずか)らも去勢したうえで女装しキュベレーを祀ったというのだ。・・・はい、三回目の去勢+女装です


 お判りいただけただろうか・・・それではもう一度


 乱暴者過ぎて去勢された神さまのナニから生まれた息子(ナニ太郎)が浮気した挙句に去勢されて死んだけど、ナニの持ち主の力で甦り、去勢した信者(女装子)が、去勢された神さまを祀った。これが彼女が信仰を集め他の神よりも力を得た理由だった。ファンキーとしか言いようがないだろう・・・


「なぁ、伶。これって他の物を司ってないか?」

「いいえ、死と再生を司る神よ」

「いや、確かに性別的には死と再生(男から女)だけど、どう考えてもニューハー「ストップ!!」・・・」

「智大。それ以上は言っては駄目!、それはフラグよ。決して立ててはいけないフラグよ!!」


 そう言われるとこれ以上考えない方がいい気がしてきた。なにせこれからその御本人と会わなくてはならないのだ。


 いや、レシェフのおっさんだって凶暴だとか悪疫をばらまくとか言われてたけど、会ってみたら只の気のいいおっさんだったんだし大丈夫だ。・・・たぶん


 嫌な予感を必死に回避しようとする俺達を、そういう知識は無いのだろうローラさんとハルカさんが不思議そうに見つめていた


「二人が何を心配しているかは知らんが、取敢えず地図で場所を確認しておこう」

「はわわ、大人の世界の匂いがします」


 ローラさんの言葉で正気を取り戻した俺達は鞄から駄女神さまの地図を取り出す。俺達が今いる場所からは西にだいぶ離れた場所にキュベレー様の神殿があった。


 キュベレー()・・・問題無い!、問題無い筈だ!、敬称を付けただけだ!

 それなのに、普通の事の筈なのに、『様』を付けると妖しさが上がるのは何故だ?


「・・・」

「智大、考えてる事は判るけどスルー!、スルー推奨の精神よ!!」


 伶、スルー推奨ってどこで知った?掲示板とか見てるのか!?お前はキャラ的に本を読むタイプの筈だろ!


「さっきから二人ともおかしいぞ!もう少し真面目に考えろ!!」


 ローラさんに怒られた・・・




 気を取り直して、神殿の場所だ。その場所は帝国領、広大なこの大陸でも大きな領土を占めるその国の最果(さいは)てにあった。


 かつて、大陸の西には沢山の小国が在ったという。その小国群の中から英雄が生まれ周りの国々を併呑し今の帝国の元となったという。英雄は初代皇帝となりその子孫たちは大陸統一の夢を見てその国を大きくしていった。


 西の帝国と東の王国。今の平和の時代には争うことは無いが、かつては大陸統一の最終戦争を繰り広げた間柄(あいだがら)であり因縁の相手であった。そして両国の長く続いた戦いは魔道具を生み、世界の在り様すら変えていった。


 最終的に戦争は終わった。無理に奪う事をせずとも人が住み暮らしていくには十分な実りが在る世界だ。長く続く戦いに飽きた両国は、国境線を引き実りを分ける事で暮らしていける事に気づいたのである。初代皇帝が夢見た大陸統一という迷惑な考えは、それでも世界の在り様を変え最終的には平和な暮らしを(もたら)したのであった


「今の皇帝と王は親戚同士じゃし基本的に両国は仲が良い。しかし、帝国が興った西部は別での、昔からあの地域は帝国こそが優秀だという奴らが多い場所じゃ」

「それはまた物騒な地域ですね」

「でも~色んな種族や文化があって、差別も無いので私達には暮らしやすい所ですよ」


 王国は単一民族が興した国である為に人間族至上主義とかの考えがあるが、基本的には単一の文化や法律なので判り易い。逆に帝国は地域ごとで文化や法律が違いややこしいのだが、西部には間族至上主義の様な考えは無く、獣人やエルフ、その他の人間族以外の種族が暮らすにはいい場所の様だ


 地図を見た感じでは森から神殿までは距離があり、今回は野営だけではなく途中の町に寄りながらの旅になるだろう。ローラさんやハルカさんが教えてくれる特徴や注意する事などを聞きつつ準備を進めて行った


 次に会う神さまはどんな神さまだろう・・・


 今まであった神さまは非常に人間臭いフランクな神様達だった


 今度は・・・


 あまり考えたくない。


 普通に死と再生の女神(・・)さまでありますように


 せめて女神に見える(・・・)タイプにしてください


 どうか漢女(おとめ)タイプだけは勘弁してください・・・


読んでいただいてありがとうございます

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