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ポンタの受難~2

 城門の前で野営かと思っていたが、門番たちが増員されたようで無事に街に入る事が出来た。どうやら城門が締まる時間あたりに合わせて日勤と夜勤の交代の時間が有るようで順番待ちの列を捌いた後、交代という流れらしい


 王都の中はスチルの様に整然とした街では無いが衛兵も見回っており治安は高い様だ。そして圧巻されるのはその人の多さ。この世界に来てなんとなく中世ヨーロッパ位の時代考証で良いのかと思っていたが此処まで人が多い街が有るとは思っていなかった


「もう少し行った先にいい宿が有るから今夜はそこに泊まろう」


 タンドさんの言葉に従い馬車を進めて行く


「タンドさんはよく王都にいらっしゃるんですか?」

「ん~そういう訳じゃないけどね。ただ人が多いと色んな考えが有るからね、不快な思いはしないに越した事は無いよ」


 その言葉になんとなく理解する。人族至上主義というか人間族以外を下に見る傾向を持つ奴らが一定数いるのは知っている、これだけ人が多ければ軋轢を生む事も有る、避けられるのならば避けてしまった方が楽なんだろう


 タンドさんお勧めの宿は馬車も停められて種族も気にしない、その上お風呂も完備と文句の無い宿だった。タンドさんの顔を見ると店主が直ぐに出迎えてくれた処を見ると、やはり結構王都には来ているのだろう・・・何しに来てるのかは謎のままだが



 翌朝、朝食を摂った後に神殿へと向かう。前日、宿の主人に頼んで訪問の先触れは出してあったので直ぐに待合室に案内してくれる


「八柱教団本部、枢機卿を務めておりますイストと申します。皆さま本日はようこそ」


 イストと名乗った女性はそう言って頭を下げる。教団関係者には人族至上主義の奴らが多いのだがエルフや獣人のいる俺達に頭を下げれるのであれば少なくとも話は出来るであろう


 お互いに自己紹介をした後、本題に入っていこうとするとイストさんが先に発言したいことが有るという


「実は私は枢機卿の位にはおりますが司祭の資格はございません。あくまでも聖女様のお付きを果たすために教皇様より枢機卿の位を授かっております。その為、私は教団内に権力や影響力は一切ありません、ですので今回のお話は聖女様のお気持ち一つでございます」

「そうですか。それで聖女様にはいつお会いできますでしょうか?」

「申し訳ございません。聖女様は少々朝が弱くて・・・まだおねむ・・・ンッホン失礼。まだ準備中でございまして。」


 いま、おねむって言ったよな!? まだ寝てるって事か?

 場の雰囲気が悪くなった事を察したイスト様が必死に誤解だとフォローを始める


「あのミデア様・・・!じゃなくて、聖女様は昨日の御公務が遅くまで続いただけなのです。決して貴方達とお会いするのが嫌な訳じゃないんです。頑張ってるんです」


 流石に聖女様付きの枢機卿。かなり私情も入ってそうだが必死に弁解している


「まあまあ、そう慌てなくても大丈夫ですよ。でしたら先にイスト様と打ち合わせした方が宜しいでしょうか?」

「いえ、聖女様が直接ユースティティア様とお話になられておりますので内容は伝わっております」

「ちょ、直接ですか!?」


 通常、神託は一方的に神様から伝えられる。受ける側が質問などは出来ない方が多い。その為直接話したという表現にはならない。アスタルテ様(駄女神さま)は慈愛の神だけあって比較的質問に答えてくれるそうだが基本的には曖昧な表現で終わる事が多い様だ


「はい、聖女様がその名で呼ばれる所以(ゆえん)がそこにあります」

「神々と直接意思を交わす事ができるという事ですか?」


 タンドさんの疑問にイスト様は頷く事でその言葉を肯定する。神さまに会った事が無いタンドさんにしてみれば、やはり神さまは天上におられる方々というイメージなのでその驚きも大きいだろう。まぁ親しみやすいこの世界の神さま達ならばそんなことも有るのかな?という感想の俺達とはだいぶ違う


 ユースティティア様の提案する調査団の内容も伝わっているようなので聖女様の準備が出来るまで雑談しながら過ごしていたのだが、最終的にはイストさんの聖女様自慢になっていく


「本当に愛らしいお方で、その小さい身体で必死になって公務を果たしているお姿に涙が出てくる思いです。教団の方針で外に出る事が叶わぬ為、室内にいる事が多いのですが経典の他にも大変本を読んでおられており、最近では動物の図鑑等を読んで外の世界を想像するのがお好きな様なのですが、大変お忙しい身の為そのお時間も中断されることが多いのに文句も言わず・・・・」


「・・・・・・」


 教団の人たちは熱くなると見境のない人たちばかりなのかマシンガントークが終わらない

 簡単に説明すると、動物好きな素直な女の子で大変忙しく余り自由が無い様だ。イスト様の愛情表現が多分に含まれるため話が長くなるのだが聖女様っていうのも大変らしい


 そうこうしている間に聖女様の準備が整ったようだ

 案内役のシスターの後ろに従って謁見用の部屋に入る。一段高い所にある椅子の前には御簾が架けられており直接姿は見れなくなっている。


 先程マシンガントークが始まる前の冷静なイストさんが説明してくれた通りだった。教団の方針で神聖化を進める為に取敢えずは我慢して謁見という形にして後ほど別室で話をして欲しいとの事なので赤絨毯の手前で膝を付けて頭を垂れる


「それでは此れより八柱教団聖女さ・・・」

「くまたん!」


 なんだか偉そうな人が謁見の開始を宣言している途中で御簾の向こうから叫びながら飛び出してくる聖女様


「くまたん!くまたんがいる」


 そう叫びながらポンタさんに抱きついて離れない聖女様はどう見ても三歳くらいの幼女だった。話し方や口調からして本当に幼いのだろう。周りの偉い人たちがアワアワするなか嬉しそうな聖女様と目元をハンカチで拭うイスト様。


 誰かきちんと説明してくれ・・・


ブクマと評価いただきました。ありがとうございます

やっぱり読んでいただいているというのが実感出来る事は創作意欲も湧いてくるし嬉しいです。


重ね重ね有難う御座います

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