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ポンタの受難

 スチルから戻った俺達は真っ直ぐロダの魔境の野営地に向かった。途中のエルフの隠れ里でタンドさんへのお使いを頼んだので、もうすぐこちらに来ることに成るだろう


「智大、獣人の戦士団もだいぶ恰好が付いてきたぞ」

「ポンタさんお疲れ様です」


 野営地で再会したポンタさんはいつもと変わらない笑顔で迎えてくれるのだがローラさんに対してだけは何か警戒する空気を醸し出している


「にゃはは、ポンタよそう邪険にするでない。今回は重要な役目が有るのじゃ」

「断る!お前が持ってきたからには絶対碌でも無い物に決まっておる」

「あれあれ?ポンタさん達との共同作戦って聞いてたけど?」


 いつもの笑顔で突然現れたタンドさん。まさか一人でロダの魔境の中程に有る野営地に来るとは思っていなかった俺もその軽~い挨拶に驚いてしまう


「タンドさん・・・」

「ん~使徒様もお久しぶり。ハルカちゃんもうまい事やってるかな?」

「はわわ、タンド様お久しぶりでございます」


 ロダの秘境の外周部からこの野営地までは比較的難易度が低いとは言え魔物が複数で出たりして、決して一人で来る様な場所ではない。それなのに、いかにもお散歩の途中ですって感じで現れたらハルカさんとて吃驚するだろう


「まっ立ち話も何だし何処か落ち着いて話そうか」


 タンドさんの言葉に野営地にある集会場に場所を移す。ってか何故タンドさんが仕切る・・・

 因みにタンドさんと相性が合わない伶は距離を取りながら俺の後ろに隠れる様にしてスラちゃんを抱いている。うん、スラちゃんの癒し効果は万能だね


 場所を集会場に移して席に着き本題に入る。みなの前には紅茶が並んでおり、お茶請けにクッキーが中央に置いてある。獣人族は基本和風なので紅茶が野営地に置いて有る筈もなくこれを持ち込んだのは勿論タンドさんだ。因みに緑茶と紅茶は同じ茶の木から採れる。違いは茶葉を発酵させるかさせないかなので両方とも流通はしている。流通はしているが野営地に持ち込むかどうかは別問題だが・・・


「さて、それではお話を聞かせて貰えますか?」

「うむ、先頃の女神ユースティティアの試練の話から始めようか」


 伶が俺に後ろに隠れているのでローラさんが話をしていく。タンドさんにユースティティア様(行き遅れ)の試練の途中で出会った邪教徒の話やブロックの話をしていく。勿論使徒の使命や神さま達の作戦についても話せる範囲で話していく


「邪教徒たちが召喚魔法をね~。って事はあの盗賊たちも邪教徒だった可能性があるわけだ」


 優雅に紅茶を飲みながらタンドさんが答える


「おい、ローラよ。その盗賊とやらの話は聞いていないぞ」


 一方、伶ではなくローラさんが話を進めている為、扱いの悪いポンタさんが情報の不足を指摘する。如何(いか)にも仕方ないという感じでローラさんが説明するのでポンタさんは憮然としている


「それでじゃ、ユースティティア様は調査団を作って邪教徒たちの動きを調べようとしている訳じゃ」

「ふ~ん。それに聖女様を噛ませようって訳だ」

「おいおい、簡単に言うが聖女様なんて俺達にとっては雲の上の存在だぞ」

「何を言っておるのだ。聖女様の相手はポンタ、お前の担当じゃぞ」


 ローラさんの言葉に固まるポンタさん

 まぁ、別段嫌がらせだけでで言っている訳でもない。タンドさんはギルドとエルフの纏め役だし俺達は使徒としての使命もある。そうなるとこの場で手が空くのはポンタさんという事になる。但し獣人の長老たちでも良い筈なので、若干の悪意が有る様な無い様な・・・





 _____________________________



 王都に向かう馬車の中、ポンタさんには変わらず災難が続く・・・単純に馬車の中に入れないのだ。

 伶が創ったゴーレム馬車は広さや積載量などこの世界の馬車の中でもかなり広めに作ってある。大人が六人乗っても余裕の広さは有るものの、ポンタさんが乗れば流石に狭すぎる。しかも今回は女性陣も居るので紳士なポンタさんは過度な接近を避ける為、御者席に陣取っている訳だ。


 王都の近くにはそれ程大きな森が無いためエルフの隠れ里からでも四日ほど掛かってしまう。その間ずっと御者席で風に当たっているのは地味に体力が奪われている筈なのだが、休憩の度にローラさんにこき使われているのを見ると流石に可哀想にもなる


「おい、態々(わざわざ)水汲みに行かなくても魔法で出す事も出来るだろう」

「何を言っている。非常時でもなければ自然の水を汲んでくる方が身体に良いに決まっておるじゃろ」

「まあまあ、ポンタさん俺も手伝いますから」


 ポンタさんと一緒に桶をを手に水場に向かう。ポンタさんの肩にはスラちゃんが乗っており何時もの如く慰め役になっていた


「うんうん、お前が気にする事は無いぞ」

「きゅ、きゅぅ~」


 スラちゃんの頭を撫でながら目尻が下がっているポンタさん。神様までも魅了したスラちゃんの癒しは、ささくれた獣人の心にも響いてくれるみたいだ




 そんな道中を繰り返しながら馬車は遂に王都にたどり着く

 今までの街とは違い取り囲む城壁と跳ね橋が旅人達を向い入れている。街に入る行列に並びながらもまだ距離が有る為、城壁の向こうには王城だろうか立派な西洋風のお城の屋根が見えている。


「これ、今日中に入れるのか?」

「心配するな、ポンタに並んで貰ってそれ以外は休んでいればいいのじゃ」


 流石にそれは出来ないですよローラさん、それをしたら人間として大切な物を捨てる気がします・・・

 キチンと馬車で並びましょうよ。但しポンタさんは御者席ですが・・・


いつも読んでいただいてありがとうございます

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