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スチル大改造計画

 一夜明けて俺達は残された小屋を調べたり邪人たちの死骸を片づけたりと地味に忙しかった。小屋の中には何やら書類も残されていたのでそちらは伶が調べ、ローラさんとハルカさんは周囲に何か無いかを調査に行ってしまった


「はぁ、スラちゃん潮風が気持ちいいね~」


 迅雷を使ったことで全身筋肉痛で身動きの取れない俺はスラちゃんと死骸の片づけを担当していた。と言っても片づけるのはスラちゃんが担当してくれるので俺は座っているだけなのだが・・・


 ローラさんの魔法で原型を留めていないとはいえ結構な量を絶賛消化中であるスラちゃん。普段は俺の食事からつまみ食いする程度で満足しているのだが、気を使ってくれているのかもしれない


「テイミングされた生物は主と同じものを食べる事が一番嬉しいみたいですよ」


 座っている俺の横に来たハルカさんが俺の疑問を察したのか教えてくれる


「スラちゃんはスライムですから基本的にはその辺の魔力を食べてれば大丈夫なので量は関係ないのです」

「そうなんだ。それなら今は無理して食べてくれてるのか?」

「いいえ~あれは溶かしてから魔力にして取り込んでますから問題ないですよ。色んな魔石とか食べさせると進化するとか言われてますし今度食べさせてあげると喜ぶんじゃないですかぁ」


 エッヘンって感じに腰に手をあて胸を反らすハルカさん。年齢的には年上なのだがどうも行動的に幼い雰囲気が漂ってしまう。体型的にもどんなに反らしても無い物は無いのだが・・・

 あまり見て気付かれると困るので、スラちゃんに視線を移しつつ今度からは魔石をスラちゃんのおやつにでもしてあげようと答えておいた


 そんな感じでハルカさんと話していると難しい顔をした伶とローラさんが戻ってくる。


「少年、ブロックとか言う剣士は間違いなく倒したのか?」

「すいません、確認まではしてませんが手応えは有りました」

「ふむ、死体が無いのじゃ」


 ローラさんからの言葉に驚きながら昨日の状態を振り返る。迅雷を使った状態での一撃しかもその素早さにブロックは反応さえ出来ていなかったのだ、致命傷であったのは間違いない。


「智大の感覚を信じるなら、多分この書類に書いてある実験が関係しているようね」


 書類に書いてあるのは今回の作戦の概要、そこには大型魔物の転移実験と題されていた。


「転移・・・召喚魔法ではないという事か」

「おそらく、支配が不十分な場合の解決策を模索していたのではないでしょうか?」


 つまり、方法は不明だがゴブリンなどレベルの低い魔物を召喚する事は可能なのだろうがミドルジャイアントの様に有る程度以上になると支配が不十分になってしまうのだろう。しかし大型の魔物ならば支配できなくても街中にでも転送してしまえば十分な混乱を招くことができる


「つまり、何かしらの方法で致命傷を負ったブロックを転移させた可能性が高いって事か」

「ほえー外の世界は怖いです~」


 ハルカさんの発言に気が緩んでしまうが厄介事が続く可能性は高そうだ。あの手応えからして転移が間に合っても命が助かる可能性は低いと思う。しかし生き残っている場合、何かしらの対策を取ってくる事だろう。言い知れぬ不安を抱えながら皆黙ってしまったのであった



 ____________________________



 スチルの街に戻ってきた俺達の前には八柱教団の神官長と街の領主が座っている。


 あの後、合図の魔法を見た漁師さんが迎えに来てくれた漁師さんの案内で他の漁師さんと少し早い解決祝い(大宴会)をした後、街に戻り駄女神二号さんのもう一つの依頼を解決すべくこの街のトップを呼び出していた


「使徒様、重要なお話があるとの事でしたが何か問題でもあったのでしょうか?」


 神官長は会議室に領主の姿まである事に不安を覚えたようで伶の発言の前に聞いてくる


「はい、法と秩序の女神ユースティティア様はこの街の現状に大変失望なさっております。場合によっては神殿の破棄も検討為されているご様子でした」

「な、なんと!しかし我々はユースティティア様の教えに従い忠実に遣えて参りました。一体何故そのような事に・・・」


 伶の言葉に領主は困惑しており神官長は絶句してしまった。勿論二号様はそんな事を言っていなかったのでこれは完全に伶のハッタリである。


「確かに貴方達は女神ユースティティア様の教えを守っているでしょう。しかしそれは表層的にでしかありません、何故ユースティティア様がその法をお決めになられたのかその御心までは考えていない。その事にユースティティア様は失望なさっているのです」


「そ、それは・・・しかし女神さまの法は具体的でありそれを守る事で秩序は保たれているのです」


「ではお聞きしますが、今回我々使徒は女神さまからの試練として海岸に発生した魔物達の退治を依頼されました。ですが本来であれば教団や領主が対応すべき問題でしょう」


 伶の糾弾の言葉に領主と神官長は言葉も出ないようだ。

 伶の指摘はその後も続いていく。


 法に書かれていることを順守するあまり法に書かれていない事には対応していない事

 法を破った場合には厳しく取り締まるが破らない為の注意喚起は少ない事

 法の下の平等に過剰に反応して競争や個性を否定している事


「ユースティティア様がお望みなのは法と秩序の元に築かれた幸せな暮らしです。決して法を守るための暮らしではありません。そしてこの街に訪れた民たちにその重要性を説く事です」


「た、確かに。最近は法に縛られたこの街は楽しみが無いと言われ訪れる者達は減ってきております。しかしその者達はユースティティア様の尊さを理解できない者と蔑んでさえいました・・・」


 領主と神官長は自分たちの行いが女神さまの考えと異なる事に気付き頭を垂れている。実際に二号様はそこまで考えていないのだけれども、すっかり伶に丸め込まれてしまった


 その後も伶のお説教という名の観光振興策は続いていく。今まで溜め込んできた罰金を予算として革新的な法の解釈と大規模かつ具体的な観光客を呼ぶための手段を伝えていくのであった


 法と秩序の街スチルを生まれ変わらせるための計画はここから始まった。

 元の世界の知識まで動員した生産チートを発揮しつつスチル大改造計画という名の暴走列車は今走り始めたのだ


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