スチル~法と秩序の街
タンドさん達と別れて一度、獣人の町に帰って来た俺達は長と丁度町に戻っていたポンタさんにエルフの里で起こった事や神殿への旅を再開する事を話し、町の家の管理を頼んでおく
「エルフの隠れ里にそんな秘密があったのか。宿場町のギルドマスターとは面識が有るが中々の曲者だからな、まだ何か隠してるかもしれんが好意は受け取っておいた方が好かろう」
実際にタンドさんの曲者ぶりを知っている俺達は苦笑いしかできない。長やポンタさんとも面識が有るようだし何処まで暗躍しているのやら…
「うぅぅ何か申し訳ないです。ハイエルフの中でも古い者なのですが…」
「あぁ気になされるな、迷惑な訳ではない。ただ何故かいつも気が付くと彼のペースに振り回される事になるだけじゃ」
「にゃはは、ポンタよ。それではフォローになっておらんぞ」
ポンタさんが入れたフォローに恐縮しまくりのハルカさんとしっかり突っ込みを入れるローラさん
憮然とするポンタさん以外は和やかな雰囲気で報告を終える
家に戻った俺達は早速神殿に向かう準備に入る
とは言っても必要な荷物は馬車に積んであるし旅路が短くなった分、食料とかも少なくて済むので大した手間はかからない。その辺は伶がテキパキと済ませてしまうので俺はスラちゃんとお風呂の準備、ローラさんはお昼寝に出かけてしまう。ハルカさんは空いてる客間に自分の荷物を解いていた
夕食を取り終わった俺達はリビングでお茶を飲みながら明日以降の相談を始める
「伶、今度の神さまはどんな奴なんだ?」
「次に向かうのは女神ユースティティア、法と秩序を司る女神よ。」
「それはまた、堅そうな神さまじゃの」
「ええ。いい加減まともな神さまに会わないと話が進みそうもないですから」
「えっと、何か皆さん八柱の神々に不信感でもお持ちなのですか?」
駄女神さまやレシェフのおっさんに会ったことの無いハルカさんが困惑している。こればかりは神々に会ってみない事には実感できないだろう…。っていうか神さまが全員あの二人みたいのだったら俺達が困る
「いや、まぁう~ん、親しみやすい方達だよ…」
「はぁそうですか」
「にゃはは、取敢えずは使命の内容とレシェフが出す筈だった神託を頼まねばならないからの。しっかりした女神さまである事を願うしかあるまい」
ハルカさんは納得してない様子だが追及もしてこないのでそのまま放っておいて話を進める
駄女神さまの地図で調べるとエルフの隠れ里が有る森から二日程の所に有る神殿で今いる町から見ると北の海岸に近い街『スチル』に在るようだ。
謂れとしては神話の大戦の後、勝利に酔いしれ堕落した人間を断罪するために表れこの世界の法を授けたとされている。右手に剣を持ち左手に天秤を持つ女神で天秤が悪に傾く者には右手の剣で罰を与えるという厳しい神さまだと言われている
「海に近い街なら魚とか貝とか食べられないかな」
「その辺は行ってみないと判らないわね。それよりも今回は八柱教団に管理されている神殿だからその事の方が心配ね」
レシェフの神殿は教団の人がいない場所だったからいいが今回はそうもいかないだろう。ラクトリンさんの話でも教団の資金源になりそうな神殿だし気を付けていた方がいいかもしれない
翌朝、近くの森からドライアドに道を開いて貰いスチルに近い場所に出る。
隠れ里にはちゃんと連絡が来ており問題なく通る事が出来た、事情も判っているのか変に拘束される事もなく何気にタンドさんの優秀さが光る。一応、里を納める長には挨拶だけして森を抜ける。
「ほわー。トモヒロ様、あれはなんなのですか?」
隣に座ったハルカさんは俺側の窓を指さし興奮した様子で聞いてくる。興奮して気が付いていないのか俺の腕を掴んだ状態で腕を伸ばすので必然的に胸が押し付けられる。残念ながらこの世界のハイエルフは某呪われた島にいるハイエルフさんと同じ体型なので感触的にはあまり有り難くない
「智大…楽しそうね」
読んでいた本から顔を上げた伶のにっこり微笑むその視線は氷の様に冷たい。
ちょっと待て、俺は悪くないぞ。大した恩恵も無いのに伶に睨まれるのは割に合わない…
「ハ、ハルカさん落ち着いて。取敢えずその腕を離してもらえるかな」
「はっ、私ったら興奮してなんてはしたない…伶さんすいません。旦那様の腕を掴んでしまいました」
「だ、旦那さまって。智大とはまだその…」
あの伶が顔を真っ赤にして俯いてしまった。ハルカさん恐ろしい子…
そんな感じで道中は時たまハルカさんの天然ぶりに翻弄されながらも特に問題なくスチルに到着する
門番に身分証を提示すると、念入りにチェックされた後に他の街では無い注意事項の説明が有った
「この街では何をするにもルールが決められている。全てに罰金刑が有るので旅人は特に注意するようにしてください」
そういいながら渡してくれたガイドブックはかなり厚く、街の内部の説明よりもルールの説明に重きが置かれていた。街行く人たちは左右にきちんと別れ右側通行を、馬車は左側通行が徹底されておりゴミひとつ落ちていない。流れに従い移動していると案内看板が出てきたのでまずは宿屋に向かう
「この街は同一金額、同一サービスの方針を取っていますのでどの宿でも安心して泊まれます。なお飲食店などは夜の鐘がなると一斉に閉まってしまいますのでご注意ください」
受付の男性の説明もどこかマニュアルを読んでいるかの徹底ぶりだ。婚姻関係にない男女の同室は認められないそうで女性陣は三人部屋、俺は一人部屋に案内される
宿の夕食も選べるタイプではなく、全員同じメニューで統一されており海が近いのに魚介類が出てくるわけでもない。味付けも不味くも美味くもないある意味絶妙な味付けであった
しかも食事中も事細かくルールが決まっており、それはもうマナーというレベルではなく堅苦しい事この上ない。
「ルールが決まっているのは良いのじゃが肩が凝らぬかこの街。うっかり昼寝でもしたら逮捕とかされかねん」
「秩序の神さまの御膝元だからね。仕方ないかもしれないわね」
「ふぇも、ふぉういうふぁちふぇもふぁもしいふぇす」
街の雰囲気が合わないローラさんと案外気にしていない伶。二人の会話に食事を口一杯に頬張りながら答えるハルカさんにタンドさんとは別の意味でハイエルフのイメージが崩れていく
「ゴクン。失礼しました。でもこういう街でも楽しいです。」
「取り合えず観光しに来たわけでもないから、明日神殿によってユースティティア様に会ってきましょう」
試練を果たしに来て罰金を取られたら堪らないのでさっさと神殿に行く事にした俺達は同じ理由で早めに部屋に戻り休むことにしたのであった
あまり深く考えずに出したタンドさんが面白いキャラに成長してくれたので
ちょいちょい出していこうかなと思っています
読んでいただいてありがとうございます




