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哀戦士

始めに謝っときます。すいません。ごめんなさい。

 お断りの書簡を持った使者が夜叉からの返事を持って帰って来た。時間間隔の違うエルフは勿論、俺達もその返事の速さに驚きはしたがその内容にはもっと驚かされた


「よっぽどハルカさんと離れたくないのね」

「うぅ~こういう処が嫌なんです。寒気がします」


 夜叉さんもう諦めた方が良さそうだよ…


 ハルカさんの意見は兎も角、夜叉側からの返事を要約すると


 ①ハルカさんの補助が無くても使徒の使命は果たせるのではないのか

 ②ハルカさんの身の安全は保障されるのか

 ③ハルカさんが選ばれた理由に疑問が残る

 ④ハルカさんの護衛が十分か試験してやる、若しくは俺が護衛として付いていく


 見事にハルカさん、ハルカさん、ハルカさんとそれから始まる事ばかりだった。愛されてますねハルカさん…迷惑な愛だけれども

 夜叉さんも一応神様サイドなんだけど使徒に不満だらけになってる上に④の条件はどうなんだろう?本文には俺の嫁に手を出すなとか、ハルカは俺の女だとか書いて有るし…


「どうやら少年の事が気に食わんようじゃな」

「俺ですか?」

「まぁ頭のまわるタイプじゃないからね~彼。そもそも好き勝手に暴れまわってた処をレシェフ様に怒られてこの森に縛り付けられているのに護衛に付いてくって無理だって気づいてないみたいだしかなり頭に血が上っているみたいだね」


 タンドさんが軽~いキャラで答える。たぶん使者のオーガ君を倒した俺が男だったってのも拙かったらしいのだが、だからってこの反応は…どうもかなりの脳筋君らしい


「ま、使徒様。一度彼と話し合ってみる必要が有るみたいだね」

「話して判ってくれますかね」

「大丈夫!ちょっと筋肉言語になるけどね♪」


 テヘペロ!って表情でサムズアップするタンドさん。あんたが問題を複雑化させたのは判っているのだろうか?いや、判っているんだろうなこの人ならば…


「仕方ありません。一度戦って納得させるしかないでしょう。但しタンドさん!これは依頼として正式に報酬を頂きますので!!」

「オッケー。達成条件はハルカちゃんの保護で良いのかな?」

「それでは条件が曖昧です。夜叉側からの婚姻申し入れの一時引き伸ばしが条件です」


 少し苛ついている伶の言葉で使徒としてではなく冒険者としてのクエストになった。どっちにしろ面倒事だとは思うが伶なりに何か考えが有るのだろう。ローラさんは…ニヤニヤしてるだけで考えが読めないな。結局、三日後に話合い(筋肉言語にて)の場を作る内容の書簡を出す事で纏まった



 三日経ちエルフの隠れ里の広場にて話し合いの場が設けられていた。勿論この話し合いは筋肉を使った話し合いになる事が予想されているので、その場所は強化された魔法の土壁に覆われたかなり異質な会談場所となっている


「てめえか!俺の女に手ぇ出しやがった奴は!」

「若、建前、建前を忘れてはいけませんぞ」

「うるせぇ!若って呼ぶな。もうアクバルの名前も継いだんだ!!」


 会談場所に現れ開口一番にそう叫んだ夜叉さんを、お付きのオーガさんが必死になって止めている。

 上半身裸で下半身は袴。怒りからなのか赤い素肌は盛り上がった筋肉に覆われており首には金色の首飾りに手には錫杖。その姿は動く仁王像って感じだ


「ウォッホン。えー若君…いやアクバル殿だったかな。本日は態々お越しいて頂いてすいません。ご要望通り使徒様との面談の場所を設けさせていただきました。流石は勇猛さで知られる若…失礼、アクバル殿。まさか神々から遣わされた使徒様の事を試そうとは我々エルフには思いもつかぬ事で大変驚きました」


 タンドさんが微妙に煽りながら挨拶をしている。若干、若じゃなく馬鹿と聞こえるのは気のせいじゃ無い筈だ


「うるせぇ、御託はいいんだよ。さっさと使徒とやらを前に出せ!」

「判りました。それではトモヒロ・クロカワとの面談の時間とさせて頂きましょう。一応お知らせしますが彼はレシェフ様と直接お会いになり教えを頂いたレシェフ様の弟子様のお方なのでお気を付け下さい」


 流石にお付きのオーガ達はタンドさんの嫌味にも気が付いているが、更にレシェフの名前が出た事で事態の重さに固まっている。レシェフによってこの地に封じられている夜叉がその弟子に喧嘩を吹っ掛けているのだ問題が無い訳がない。残念ながら頭に血が上っている若君様改め馬鹿君様は気付いてないようだが…


「へっ使徒だろうと俺の女に手を出す奴はゆるさねぇ」

「誰が何時お前の女になったかは知らんがとっとと掛かってこい」


 錫杖を手にして突っ込んでくる馬鹿君様はその暑苦しい筋肉をピクピクさせながら意外に鋭い動きをしていた。まぁ意外にってレベルであって躱せない訳じゃない、寧ろ余裕で躱せてしまう。


 刀も抜かずヒラリと躱す俺を振り向きざまに同じように突進してくる。その手に持っている錫杖は何の意味が有るんだ?


 そんな事を繰り返す光景はまるで闘牛とマタドールの様相を呈してきた。誰か赤い布をくれ!


「ぜぇぜぇ…躱してばかりで卑怯なやつめ!」

「卑怯って言われてもな男と組み合う趣味は無いし。ところでその手の錫杖は使わないのか?」


 言われて手にした錫杖を見つめて俺を見る。もう一度、錫杖を見つめてから構えを取る馬鹿君様


「ここからが本気の俺だ」

「いや、今まで忘れてたろ!」


 唸りを上げて振り下ろされる錫杖はその速度に付いていけないのか真ん中から反っているように見える。柄に手を掛けたまま後ろに躱す俺を追撃するように繰り出される突きの連撃。それを上半身の動きのみで躱しきった俺は最後の突きの引きに合わせて踏み込んでいく俺の右手が紅く輝くと鞘から解き放たれた刀が紅軌跡を惹きながら馬鹿君様を斬り裂く。


「キンッ」


 澄んだ金属音とギリギリで間に合った錫杖で刀を受けた馬鹿君。俺の刀を止めた事でドヤ顔で自慢しようとしたがその時にはもう俺の姿は掻き消えている。横に回った俺が繰り出す三段付き。紅い光を帯びた軌跡は馬鹿君の腕に突き刺さる


 レシェフの神殿を出てからから毎日繰り返してきた修練は技の完成度と発動までの速度に格段の進歩をもたらしていた。手加減をしたとはいえ、右手は使い物にならないだろうに左手のみで錫杖を構える馬鹿君様


「まだだ、まだ終わらんよ」

「…そのセリフはやめた方がいいと思うぞ」


 有名なそのセリフは言った後の赤い人の末路に繋がるかのように一方的に攻撃をされる馬鹿君。彼の驚異的な筋肉は確かに俺の攻撃を防いでいるが斬り裂かれるダメージは蓄積される一方だ。流れる血に染まる大地に膝を付いたのは暫くしてからだった。


 少し距離を取り刀を納めた俺に後ろから伶やローラさん他みんなが近づいてくる。馬鹿君様にもオーガ達が駆け寄り傷の具合を確かめている。


「何故だ、何故俺の愛が届かねぇんだ」

「若、動いてはいけません。医療班!早く治療を進めろ!!」


 お付きのオーガさんが抑えるのも構わず筋肉をピクピクさせながら立ち上がろうとする彼、或いは真剣な愛に生きる愛の戦士なのかもしれない。


「だから、初めから言ってるじゃないですか!その暑苦しい所が嫌いなんです!!」


 って、初めっからフラれてたのかよ!それでよく俺の女とか言えたな。

 ハルカさんの言葉に止めを刺された馬鹿君はその筋肉と共に遂に力尽き大地に倒れ込んでしまった


 哀れなり…

 彼もまた哀戦士…



 って、哀戦士ってこんなのだったか!?


最後ネタに走ってしまいました。ファンの方ごめんなさい。古くて判らない方もごめんなさい。

ガンダムネタ&哀戦士好きなんですよ~


いつも読んでいただいて有難う御座います

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