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「今日こそは返事を聞かせてもらうぞ。まぁ断る事は無いだろうがな」


 クックックと笑いを浮かべる。後ろには体格のいい戦士たちが控えており、前に出て口上を述べた奴も体格が良く毛深い腕を腰に当て毛の生えた胸を反らしこれでもかって感じでドヤ顔をしている。エルフたちは門の上で弓を構えて臨戦態勢に入っているが戦いになれば分が悪いのは目に見えているので手出しはしないようだ


「前回も言ったが長老たちの会議の結果が出るまで待ってくれと言っておるだろう。何度来られてもその会議の結果が出るまでは答える事が出来ん」

「ではその答えはいつ出るというのだ。もう半年も待っておるのだぞ」

「まだ半年ではないか。少しくらい我慢しろ」


 エルフ側の返事にグヌヌヌって感じで口上を述べたオーガが不満げな顔をしている

 そう、エルフの隠れ里に集まっているのはオーガの集団だった。森の奥深くに住み戦闘を好む種族だという。神々との対戦でも傭兵として両陣営に参加したとの伝承が残ってるくらいだ。他にもドラゴンと戦っただの戦争に参加しただの、ともかく強い者を見ると我慢できない性のようだ


「いやはや、原因はともかく問題なのはエルフの時間間隔ってのもあってね。詳しい事は後で話すからチャチャッとあいつ等を追い払ってもらえるかい?」

「いや、タンドさん簡単に言いますけどね結構強そうですよ。しかもそんなことしたら更に問題が大きくなりません?」

「大丈夫!あいつ等強い奴には従うからさ。ちょっと頼むよ」


 両手を合わせて頭を下げるタンドさんを見ているとハイエルフに対するイメージが音をたてて崩れていく

 後ろを振り返れば伶とローラさんも苦笑いしながら手を振って行けと合図している。まぁ訓練の成果を試してみるかという事で門をくぐってオーガの前に出て行く


「此方の言い分は聞いた筈です。会議の結果が出るまでもう少し待ってください」

「なんだ、人間風情が!良く知りもしないで首を突っ込むな!!」


 うん、ごもっともなお言葉です。事情も知らないのに追っ払えって言われてこっちも心苦しいのだ

 今回は伶に訓練の成果も見せたいのでちょっと強気に出てみるかと思い刀に手を掛けながら威圧をぶつけてみる


「ほう、人間にしてはなかなかのものだな。それなら言葉じゃなくその腰にぶら下げた物で話を付けようじゃねえか」


 オーガは仲間から長い棍棒のようなものを受け取ると片手でブ~ゥンと振り回す。イメージしていたファンタジーのオーガというよりも赤茶けたその姿は鬼ヶ島の赤鬼みたいな感じだ。


「行きますよ」


 一言断った俺は鞘に納めた刀の柄に手を掛けたままスキルも使いつつ一挙に間合いを詰める。


「な、いきなり数が増えやがった」


 何の事は無い『縮地』も含めて高速でジグザグに緩急を付けて移動する中で一瞬速度を落とした時にしか姿を捉えられないオーガには複数の俺が現れたように見えるのだろう。さらに分身した俺の姿にはノドアさんから教わった気配の出し入れまでも使っている。そのまま間合いを詰めた俺が抜刀の勢いも乗せた一撃を放つ


「ギィン」


 それなりには実力が有ったのだろうオーガが持つ鉄棒でその一撃は防がれるが、俺は防がれた事を気にせずあえてその鉄棒めがけて連続の斬撃を加えていく。初めの一撃を何とか防いだまでは良かったが態勢を崩したままのオーガは防戦一方になり遂に大きく体勢を崩す。そこに放った突きが鉄棒を真っ二つに破壊しその余波で吹き飛ばされ地面に仰向けに倒れた。俺は倒れたオーガの目の前に刀を突きだしながら


「此方も会議の結果が出れば正式に答えを出しますので今日の所は引き上げて貰えませんか」

「ヌゥ。判った、一度里に戻り親方様に報告しよう」


 敢えて丁寧な言葉で語りかける俺に渋々ながらも納得したオーガに刀を納め距離を取ると、他のオーガ達に手を借りながら引き揚げていく。そのまま森の奥に引き上げていくのを確認してから門をくぐると拍手をしながら近づいてくるタンドさんがいた


「いやーお見事。少し腕を上げた様だね。相手も怪我してなかったみたいだし満点ですよ」

「お世辞は良いから事情を話してください。あと、なんかキャラ変わってません?」

「ん、そうかい?前からこんな感じだよ」


 笑いながら俺達を先程の屋敷に案内していくタンドさん。一緒に出迎えてくれた伶からスラちゃんが俺の頭に飛び移り頭を撫でる様にして褒めてくれる横で、ローラさんがタンドさんに呆れる様に肩を竦め両手を広げていた




 屋敷で通された部屋は先程とは違う部屋で目の前にはタンドさんとべジンさん、もう一人俯いたエルフの少女が座っている。俺たちもテーブルを挟んで席に着くとベジンさんが事情を話してくれた


 この少女はまだ生まれて二十年程の年若いハイエルフで名前をハルカというらしい

 事の発端はやっと成人を迎えこの集落に来た時に、ハルカさんをたまたま見かけた夜叉に見初められたらしいのだ。


 夜叉というのはオーガが進化した個体でこの森に棲むオーガたちを束ねているらしい。伝承ではかつて人に害を為す位暴れていたが神々に打ちのめされその支配下に下ったとされ、改心した夜叉は森林に棲み森を守る神霊になったと言われている。その夜叉からハルカさんを嫁に欲しいと求められたという


「夜叉に率いられたオーガ達もこの森を守護する者達じゃから儂等とも別段対立している訳ではないのじゃ。長老たちとの会議でハルカの意向も聞いたうえで判断しようという事になったのじゃが…」

「何せハイエルフは寿命が無いからさ、結論が出るまでに時間が掛かってもその事に頓着しない。ところが相手は大人しくなったとはいえ短気な夜叉なもんだから拗れちゃってさ」


 べジンさんの説明とは対照的に軽~い感じで説明してくれるタンドさん


「それで肝心のハルカさんの意向はどうなのですか?」

「うむ、それなんじゃがの…」

「夜叉さんはいい人なんですけど、私ああいう暑苦しい人は苦手なんです…」

「ね、仮にも一族を率いる人に暑苦しいから嫌ですなんて言えないからさ、断るのにも困ってるんだよね。それでさ使徒様なら何とかできるかなと思って相談してみようとした訳」


 おい、そんな相手の使者を倒しちゃったらかえって問題になるんじゃないのか…

 嫌な予感マックスな俺と額に手を当て呆れる伶。流石にいつもの様に「にゃはは」とは言えないローラさんと三人とも困惑するしかないのであった

遂に新キャラ登場です。一応ヒロイン候補ですがどういう感じに動いていくか作者も楽しみです


いつも読んでいただいて有難う御座います

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