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幕間2~ローラさんの作戦

「今日はここにするかの」


 いつものように日当たりのいい場所を見つけると、獣化した身体を丸め尻尾を枕の様にしてお昼寝の態勢を取る。お気に入りの場所も在るのだが、いつも同じ場所だと飽きてしまうので定期的に新しい場所を開拓しておくのは大事なことだと思っている


 眠りに入るまで時間で考え事をするのが好きだった。起きている時に考えてしまうと深刻になってしまう事も眠りに入るまでの僅かな時間であれば、それは夢の一部だと思えるからだ


 もう何百年こうしてきただろう…

 始めは普通の獣人だった。昼寝が好きではあったがあくまでも普通の狐人だった筈だ。仲間たちと旅をして面白可笑しく暮らしていた。


 それがいつだったのかもう覚えていない。ある時目覚めると尻尾が二つに分かれ毛色も金に近い細い毛になっていた。集落に戻ると大騒ぎになり、長老達の前に連れていかれ進化した金狐になったのだと知らされた。


 私にしてみれば何が変わったのか判らないし、楽しく旅をして昼寝が出来れば良かったので特に気にもしていなかった。一部私を神の様に扱う者たちもいたが「何をしているのだ?」と疑問にしか思えなかった

 あっ!そんな者達がくれる酒と油揚げは非常に美味しかった事は覚えている


 進化して何年経った頃だろう…

 自分は変わらないのに気の合う仲間はみな年老いていく…

 一緒に旅をして、酒を飲んで騒いだ連中はみな土に還って行った…

 自分が厄介な存在になったと初めて思った


 きっとこの先、周りの者は私より先に土に還っていくのだろう。最後の旅仲間を看取った後、私は皆から離れ一人で旅をする事にした


 その間の事はよく覚えていない…

 私の事や獣人族を馬鹿にした人間族の町を怒りに任せた魔法で消してしまったのもこの頃だった筈だ

 そのとき、私を処刑して人間族に謝罪するべきだという他の者達を制した長老がいた。

 何故わざわざ私なんかを助けるのか理解できなかった


「そう、荒れなさんな。生きていれば楽しいことも出てくるさ」


 そういうその長老も私より先に土に還った…

 何となくその集落で暮らしていた私は色々諦めていたんだろう。その長老の死に涙も出なかった


 私の尻尾が三本になった頃だろう…

 亡くなった長老の家系に一人の子供が生まれた

 熊人のその子はかつて自分と旅した幼馴染にそっくりだった

 嬉しかった

 ただただ嬉しかった


 決して幼馴染本人ではないと判っている。でも再び会えた様な感動が胸の奥から湧き出してきたのだ


 その日から風景に色が付いた


 食べ物に味が戻ってきた


 いつもの昼寝が気持ちのいいものになった


 あまりに構いすぎてやや嫌われている気もするが、成長したその子が小さな集落を任せられた時付いて行く事にした

 暫くその集落で暮らしていると、また新たな出会いが在った


 幼馴染にそっくりなあの子を投げ飛ばした神々の使徒。退屈していた自分には丁度いい暇つぶしに思えた

 最初はそれだけ。いつかは別れの時が来るだろうが一時の暇つぶしにはなるだろうと


 しかし一緒に旅をしていれば情も湧く

 いや、それだけではない。この二人の考えや雰囲気が好きになってしまったのだろう

 そうなると別れが寂しくなる

 人間族、しかも他の世界から来たという二人に似た者達に会う事はないだろう

 そう思い少し距離を取ってみた事もあった


 だが、やはりこの二人は好ましい人物だ

 どうすれば…

 …

 ……

 ………ピコン!

 閃いた

 私は長い時を生きるだろう

 しかし智大と伶は元の世界に帰るか土に還るかのどちらかだろう

 ならば、その子供達はどうだろう?

 うん、二人の子供や孫たちと一緒に暮らしていくのならば寂しさも少ないかもしれない


 だが、元の世界に戻ってしまったら子供も連れて行ってしまうのでは?

 う~それでは困る。

 よし、智大に他の女をあてがってしまえばいいだろう。

 どうせ子供が生まれれば女はそちらに意識が向いてしまうし、男も番になってしまえば他の女にも目が行くようになる


 そうと決まればあの二人を早く、番にしなければいけないな

 長い付き合いだけにきっかけが無いと行動しないかもしれないな…

 先ずはお互いを意識させて…

 そこまで考えて、その先は夢の中だった


 日が落ちて眠りから覚めると、寝る前に考えていたことの半分は忘れていた

 覚えていたのは智大と伶をくっ付ける事だけっだったが、それは非常に面白そうなことだった

 早速、伶をけしかけよう


 誰かが何故、伶の方を?と聞けば

 その方が面白そうだからと答えるだろう


 二人にとってはとても迷惑な、あるいは有り難いになるのか…

 ともかくローラさんの作戦はこうしてスタートを切ったのだった


いつも読んで頂いてありがとうございます

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