いざ決戦
今日は時間が押してしまって書き上げたのが投稿の30分前でした
一応確認していますが、誤字等あったらすいません
俺とノドアさんは拠点手前の見張りの所まで先行している
(いつも通りだな)
(これなら突入の連絡しても大丈夫そうですね)
見張りの交代の時間などを調査していた俺達は、いつもと変わらぬ様子を確認すると少し森の入り口側に戻る
駄女神さまから貰った腕輪の交信範囲に入った所で伶に異常なしと連絡し進んでくる討伐隊を待っていると、先ほど会ったエルフの少女が一人が先に着いた
俺達と目線だけ合わせ頷いたエルフの少女は近くの木に手をあて小声で話している
「木の精霊ドライアドよ、我の求めに応じて力を貸したまえ」
その声に緑色の髪をした少女が見張りの元に表れる。宙に浮いたまま見張りの頭を抱きかかえ何事かを話しかけると見張りはその場に崩れ去る
ドライアドの魅了に抵抗できなかった見張りは暫らく目を覚まさないそうだ
合流した皆と先に進み盗賊たちの拠点が見えたところで、俺とノドアさんは散開し他の皆は冒険者達が召喚したゴーレムが姿を現すとそのまま突入していった
ゴーレムの足音と魔法で生じた巻き上がる突風で飛ばされたテントから慌てて盗賊たちが飛び出してくる
その態勢の整っていない盗賊たちをエルフの魔法で伸びてきた草や木の根が縛り上げていく
「まだだ、気を抜くんじゃない」
タンドさんが警戒の声を出すのと小屋から魔法使いたちが出てくるのは同時であった
姿を現した魔法使いたちは現状を把握するとすぐに詠唱を始める
それを見ながら此方も打ち合わせ通り、盗賊の拘束を一時中断してエルフ達が障壁を張っていく。
冒険者の魔法使いは相手に風の刃をぶつけるため詠唱を続けている
「チッ、相手の詠唱が早い」
盗賊の魔法使い達の詠唱が終わり広場にいたゴーレムが動き始める。そして幾本もの魔法の矢が飛んでくる
「これは相当慣れていますね」
敵は威力よりも発動の早さを重視した魔法でこちらの足止めを狙っているのだろう
先程の魔法で拘束を免れた盗賊たちは仲間の拘束を解きながら後ろへ下がっていく。その間にやっと詠唱の終わった冒険者から放たれた風の刃は、しかし相手の張った障壁に阻まれ散っていった
相手のゴーレムが間に入り、こちらのゴーレムと対峙する。拘束を解かれた盗賊たちは魔道具で攻撃して来るもの、人狼に変身して襲い掛かってくるものと態勢を整え此方を押し返す
しかし、状況ははこちらに傾いている
今は拮抗しているがゴーレムの数で上回っているうえ、タンドさん、伶、ローラさんは待機している状態
相手の魔法使いの状況判断の良さで奇襲の効果は押し戻されたが、このままなら押し切れるだろう
そう思っていた矢先だった
相手のゴーレムの後ろに赤い光を放つ魔法陣が幾つか現れる
そこから這い出してきたのは…
「なっ邪人だと!まさか…」
「邪人を召喚?そんな事が出来る召喚魔法なんて聞いたことがないぞ」
魔法陣から這い出してきたのは三十匹ほどのゴブリとオークだった
他の魔法陣からもキメラやハーピィー達、さらに大きな魔法陣からも何かが這い出してきている
ゴブリンキングの洞窟の時もそうだったが動きの遅いゴーレムでは大量の敵を捌ききれない
正面からぶつかってしまうと回り込んだゴブリン達に対処しきれないのだ
「これが隊商を襲ったやり方か…」
「これでは、護衛の冒険者達では防ぎきれなかっただろうな」
大量に這い出てきた邪人たちはまだ拘束されたままだった盗賊たちを蹂躙しながら襲い掛かり、空中からはハーピィー達がゴーレム達を飛び越え後衛のエルフや魔法使いたちにその爪で引き裂こうとしている
キメラ達はその場で障壁にブレスを吐き、魔法使いたちは新たな詠唱を始めていた
召喚術で呼び出されたゴーレムやシルフ達の障壁だけでは到底持ちこたえられそうもない状態に、伶たちとは離れ戦場になっている広場の真横にいた俺は腰の刀に手を掛け飛び出そうとしていた
『智大、まだよ。そのまま待機していて』
伶の念話が届き飛び出そうとしていた足を止める
すると、伶が小さな赤い石を数個空中に投げつけると、一瞬の光を放ったそれは1m位のゴーレムに変わる
その透き通るように紅い身体のゴーレムは非常に身軽な動きでゴブリン達をぶん殴っていく
伶が新たに作ったルビーゴーレムだ。
キングの洞窟の中には宝石もあった。それは元の世界にあった宝石と同じものだと知った伶は宝石でゴーレムを作れないかと考えたらしい
ダイアモンドが最も硬いと思われているがこれは傷つきにくいという意味で、実は欠け難さという意味ではルビーの方が優れている
そして金属よりも宝石の方が圧倒的に密度が低いという点に注目したのだ。密度が低いという事は同じ大きさならばその重量は軽くなる
ルビーは酸化アルミニウムの単結晶にクロムが混ざる宝石。アルミニウム自体は何処にでもある元素なので練成を使える伶にとっては作りやすい部類に入る
普通に作れば高価すぎるゴーレムも伶にとってはその辺の土から作れてしまう。これに魔力を通し高硬度のゴーレムとした上で魔力で覆い割れ難くした。
各関節部は球体を使って動きやすくし脚部にはスラスターを着け動きに加速をつけやすくなっている
重量が軽くなった分、速さで衝撃を生む設計になっておりその強化されたスピードで数の不利をカバーしている
そして動きが止まった邪人たちはローラさんが生み出した竜巻に巻き込まれ空中にいた魔物共々その数を減らしていく
ローラさんの魔法を逃れた邪人たちもノドアさんが放つ矢に貫かれエルフたちが呼び出したシルフ達に切り裂かれていく
もう一度押し返す流れが出来かけた時、最後の魔方陣から這い出してきた物に皆の動きが止められた
「ミドルジャイアント…」
四メートル程の身長に長い腕、一つ目の巨人がその姿を現しゆっくりと周りを見渡す
その手に握られた石の棍棒を振り上げると、その一撃はまだ残っていた邪人たちと盗賊たちに向かって振るわれる
その標的になった哀れな邪人を叩き潰してなお止まらない一撃は地面に大きなクレータを作り出す
そしてまた、自分の視界に入るものに向かってその一撃を振り上げた
「制御できていない、みな距離を取っていったん離れろ」
タンドさんの声で皆が後ろに下がる。動きの遅いゴーレムやパニックに陥った邪人や盗賊達はその無慈悲な一撃でただの肉塊に変わっていく
呼び出した側の魔法使いたちも攻撃の的になる事を恐れて距離を取ろうとするが所詮は魔法使い、素早い動きが出来るはずもなく足を縺れさせミドルジャイアントの標的になってしまう
『智大、相手の魔法使いを確保して! ジャイアントの注意はこちらで引くわ』
伶の慌てた念話が届くと同時に、ジャイアントの後頭部に魔法が炸裂する
ローラさんが放った火の玉もエルフたちが放った風の刃も大したダメージを与えてはいないようだが、ジャイアントは確かに標的を変えた様だ
ジャイアントの視線に入らない様に魔法使いたちの元に向かった俺は、恐怖で動く事も出来ないそいつらに当身を喰らわせ拘束しておく
そしてジャイアントの方に向き直ると刀を抜いて向かおうとするが身長差を考えれば有効打を与える事は出来そうにない
「全員右足に攻撃を集中しろ。ノドアと智博君は後ろに回りつつ膝を狙え。ローラ君と私は魔法で目くらましだ」
タンドさんが大声で指示を出していく
盗賊たちの討伐は新たな幕が開いた。先ほどよりも困難な幕になりそうだが…
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