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決戦前

 タンドさんとの会談の後、俺たちは忙しかった

 伶が準備のために作業のできる建物が無いか聞いてみたら、タンドさんはメインストリートからは外れているが日当たりのいい空き家をすぐ用意してくれた

 宿を引き払ってそこに移った俺たちはすぐに行動に移った。因みに日当たりのよい場所が良いといったのはローラさんだ


 俺は紹介された狩人のノドアさんと拠点の調査に向かった

 ノドアさんは少し白髪の混じった男性だが身体つきはしっかりしていて動きの素早さとしなやかさが感じられる寡黙な人だった

 流石に狩人をしているだけあって気配の消し方と森の中での移動は見事なもので、拠点に近づいても気づかれる事なく調査が出来た

 時間を変えて調査する為に野営をしつつ拠点へと通っていた俺たちだったが空いた時間でノドアさんが教えてくれる知識が素晴らしかった


 罠の作り方や仕掛け方、獲物の見つけ方や行動の予測。一番驚いたのは気配の出し方だった

 気配を消すのは判る。ノドアさんがやってみせたのは自分のいない場所に自分の気配を出す方法だった

 言葉にするのは難しいのだが、気配だけその場に残し本人は別の場所に移動したり、本人は留まっているのに気配のみ移動させたりと自由自在に気配を操るのだ


 獲物を罠に追い込むのに使ったり、弓を射る隙を作ったりしてるうちに出来る様になったと言っていたが近接戦でもこれを使えたらと思った俺はノドアさんに必死になって教えてもらった

 後日、伶を驚かせることに成功した俺だったが、その代償にほっぺたを抓られながらのお説教をされたのは内緒だ


 調査を終え、ギルドへ結果を報告しに行く

 盗賊の数は全部で十六名。魔法使いと思われる人物が四名、こいつらは小屋の中にいる

 見張りとか雑用をしている男が五名、獣人が四名、魔道具を使うであろう女性が三名だ

 俺たちが調査している間は人の出入りはなく、おそらくはこれで全員だと思われる


 ギルドへの報告を終え、家に戻った俺は伶やローラさんと情報交換をして夕食までの時間で風呂に入りに町へ出かけていく

 残念ながら家には風呂が無かったのだが街道沿いの宿屋が共同経営する銭湯が有るのだ

 広いお風呂はいいよね。命の洗濯とは誰のセリフだっけ?



 夕食の後、タンドさんとノドアさんが家に訪ねてきた

 伶が出してくれたお茶を飲みながら明日の打ち合わせをする

 明日の夜、町を出発し森の入り口で夜明けを待ち早朝に突入するとの事だ


「智大の分とノドアさんも良かったら使ってください」


 伶が俺の新しい刀とノドアさんにコンジットボウを渡してくれた

 レシェフの所で貰った『鍛冶』スキルで得た知識を使って作ってみたのだという

 刀鍛冶を行うには炉や素材集めなど時間がなかったので、知識を生かして錬成で創ったというその刀は以前の物よりも鈍いそれでいて吸い込まれるような光を放っていた


 作業場でその性能を試してみた俺とノドアさんはその出来の素晴らしさに感心したのであった

 特にノドアさんはその性能に驚いていた

 コンジットボウ。日本語に直すと複合弓と言われるそれは、二種類以上の素材を使い弓の反発力を上げた弓でロングボウと比べ小型化した上で威力を増した物だ

 元の世界では最大射程600m、六秒に一発打てたという逸話が残っている


 実はあまり知られていないが、複合弓はいっぱいまで引いて打つものではない。

 遠距離に特化して威力を上げるために大型化したロングボウと違い、コンジットボウは馬上や近距離でも使える様に小型化かつ、弓を引く量が少なくても威力が出せる様にした物である

 弓を持った左手の肘から肩くらいまでで十分な威力が出る様に設計してありその事で連射が可能になっていると伶は説明していた


 説明を聞きながら試射しているノドアさんは少年の様に目を輝かせ的に向かって次々と矢を放っていく

 タンドさんは長い付き合いでも初めて見たというその表情を見ながら、私の武器はないのかと伶に聞いていたがあっさりと断られていた


「今回はすまない。ギルドの長として貴方達にも参加してもらうしか手が無かった。しかし年若い者達が傷付くのを見たくはないのだ。決して無理だけはしないでくれ」

「ふむ、年若くない私は除外されるのかの」


 ローラさんの冗談に笑って明日は頼むとタンドさん達は帰って行った

 別れ際にタンドさんが語ったのは本音なのだろう。きっと優しい人なんだと思う


 やれるだけの準備はできた。明日は徹夜になるだろう早めに身体を休めて英気を養っておく

 今までの様に魔獣や邪人が相手ではない人が相手なのだ。

 自分に人が斬れるだろうか…

 躊躇すれば自分がやられるだろう…

 自分よりも伶やローラさんが危険にさらされる。それだけは防がなければいけない


 いつまで経っても消えない不安でその日はなかなか眠れなかった











いつも読んでいただいて有難う御座います

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