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巣の中

あけましておめでとうございます

本年もよろしくお願いします

 無事キングも倒し戦闘も終了して、これで終わりという訳にもいかないのがこの世界の大変な所だ

 ゴブリン達の死骸の始末をしないとアンデットになってしまったり、単純に腐ってしまって迷惑をかけてしまう

 ゴーレム達が死骸の処理をしている傍らで伶のお説教タイムは続いている


「だから、なんであんな無理する必要があるの?」

「いや、無理というか出来そうな気がして…」

「時間を稼いで最後はローラさんの魔法で倒すって話だったでしょう?」


 伶が珍しく感情を高ぶらせている

 普段の冷たい視線ではなく目じりを吊り上げて本当に怒っている

 確かに、打ち合わせとは違う行動であったが俺にしてみれば自信があっての事なのだ


 スキルの熟練度が上がっていくと、そのレベルに応じて技を使えるようになる

 俺や伶はギフトという形でスキルを覚え熟練度も上げてもらっている。当然途中の過程が無いので技までは覚えていない

 しかし、キングのスキルの説明を受けた時ただ力任せに振るう一撃が技になるのならば俺が道場で習ってきた技が剣技として発動しない訳がないと思ったのだ


 うちの道場は戦国時代から連綿と続く由緒正しい古武術らしい

 由緒正しいとは爺ちゃんの弁で、習ってみると如何に相手を倒すかという事に重きを置いた武術でぶっちゃけ何でもありな部分が多く奥義や一子相伝の技とかが有る訳ではない

 基本の型は一応あるが、型そのものよりも相手の動きに合わせた型の選択こそが大事と習う

 その中で一番、技として成立しそうだったのが、抜刀術いわゆる居合抜きだ


『柄に八寸の徳、見越しに三重の利」という言葉を残した抜刀術の開祖がいた。本当は続きがあって小難しい事を言っているのだが要は柄が長いとちょっと有利よ、という訳だ

 うちのご先祖様はそれなら、刀の形が他と違えばもっと有利になるんじゃね?、とばかりに刀の形を研究して魔改造を施してしまったのだ


 いや、魔改造は言い過ぎか…刀身が二尺九寸、反りは緩く文字通りちょっと長い(ちょっと=一寸)、柄は通常より三寸長い物を使う

 刀という武器の切れ味は有名だが実は刀の振り方にもコツがある

 刀はただ振り下ろすのではなく手前に引きながら振り下ろすのだ。

 この時、刀の反りが強い方が切れ味が増す。反りの緩いうちの刀は切れ味が落ちる訳だから巻き藁を斬るのに俺も一苦労した

 そんな刀を使って独自の斬り方を研究した抜刀術だからこそ剣技として成立するだろう思ったのだ

 しかも、俺のスキルは『剣術』。使っているのは刀だ、独自の技があって当然じゃないか



 なんてことを正座させられながらも伶に説明してみたのだが…


「そういう事を言っているんじゃないの!!」


 と、また平手打ちを喰らってしまった

 キングの攻撃は全て躱したのに…




 その後、ローラさんがとりなしてくれたお蔭で何とか正座から解放され、巣の中を探索してみようという事になった

 100匹位のゴブリン達が暮らしていたのだから内部はかなり広い

 入り口から奥へ向かって通路の様に広い空間があり、横穴の様な小さな部屋が幾つかある


「この辺はゴブリン達の部屋かな?」

「ゴブリン達に部屋という考え方が有るのか判らんがの」


 横穴の中は、何かの毛皮や布きれなどが散乱してゴチャゴチャしていた

 獣臭いその部屋は何匹かのゴブリン達がいたのであろう事は判ったが、特にめぼしい物はなかった

 通路を進みつつ同じような横穴を覗いていくが同じような状態の部屋ばかりで一か所だけ違う様子だったが獣の骨が積み上がっている様子から、ゴミ部屋のようだった。


「ゴブリンでもゴミは纏めておくんだな」

「分別はしてないみたいだけどね」


 ローラさんと伶が魔法の灯りで照らしてくれる先を見ながら俺が言うと伶が冗談で返してきた

 少しは機嫌が直ったようだ

 …ちなみに魔法の灯りは簡単な魔法で誰でも使えるらしいが、案の定俺には使えなかった



 通路を進んで奥まで行くと、天井の高い空間に出た。

 ローラさんが大きめの灯りを天井に灯すと奥に一段高い場所が有るのが見えた


 きっと、ここにキングがいたんだろうな

 きっと、左右にゴブリナとか侍らせてハーレム作ってたんだろな

 きっと、毎晩…


 足を止めて妄想の世界へ旅立っていた俺を現実に引き戻したのは、振り返った伶のいつもの視線だった


「お、奥にまだ部屋があるぞ。きっと宝物があるに違いないぞ」


 誤魔化しながら言ってみたセリフは、しかし何の効果も発揮せず女性陣は黙って前に進んでいく

 慌てて後ろに付いていく俺…


 君たち、一応ね邪人の住処だったんだしもう少し警戒して、なんて言えばいいのかな?

 こう、男の後ろで背中にくっついて肩越しに恐る恐る前を見るとかさ、そういうのは無いのかい?

 …

 ……

 ………無いんですね。ハイ判りました


「お~流石にキングが発生するくらいの巣じゃな。結構ため込んでるの」

「あちらは食糧庫みたいですね、ちょっと食べる気はしませんが」


心の中で抗議していた俺の事は無視して頼れる我が女性陣は奥の部屋を見て回っていた

ドラゴンが光るものを集めるなんて話は良く物語りで出てくるが、邪人たちも光るものが好きなようで奥の小部屋の一つは、そんな物が沢山集められていた


早速、伶に鑑定してもらうと案外お値打ちな物が転がっていた

ゴブリン達が拾ってきた宝石や鉱石に旅人でも襲ったのか金貨や銀貨に魔道具もあった

女神さまから貰ったアイテムの中にはお金は入っていなかったのでちょっと助かった

主人を失ったお宝を魔法の鞄に詰め込んで出口へ向かう。


洞窟を出ると、ゴーレム達が後始末を終えて俺達の帰りを待っていた

魔法で吹き飛ばされなかったゴブリンの核が山盛りに積んである。その横には少し大きいキングの核もある

それらも魔法の鞄に詰め込んで馬車へ戻る


日は落ち始めているが何とか馬車まではもつだろう

ほぼ初の実戦から得た教訓は伶を怒らせない事…

いや、剣技の使い方とか色々有った。うん、大丈夫思い出してきた。


伶の平手打ちのインパクトで忘れてた。軍神と言われ俺と同じ『剣聖』を称号に持つレシェフに聞きたいことも出来たのだ

駄女神さま以外の神様がどんな相手なのか不安もあるが、明日には神殿へ着くことだし、着けば判るだろう


そんな事を考えながら日が暮れる前に馬車に付こうと足を速めるのだった


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