たまには活躍!?
タイトル悩んでいたのですが、頂いた感想がヒントになりました
有難う御座います
俺の提案に早速苦い顔をする伶
「伶、そんな顔したってこのままじゃジリ貧だぞ」
「でも…」
キングは此方を睨みながら、支配下にあるゴブリン達の態勢が揃うのを待つつもりのようだ
洞窟の奥から出てきたゴブリン達はあと40~50匹程だろうか? 流石にもう出てくることは無さそうだが十分脅威になる数だ
「にゃはは、伶よ、心配なのは判るが少年の言う事の方が理があるぞ」
キングの動きから目を離さずローラさんが肯定の意を示す
これで二対一だ
ため息を出しつつ伶も渋々話に乗る事にしたようだ
「よし、行くぞ」
「智大、無茶しちゃ駄目よ」
どうもこの世界に来てから伶の保護者的発言が多い…
そこは「無茶しないでね」と言って欲しい。 いや「け、怪我したら許さないんだから」とかでもいいな
下らない事を考えながら行動に移った俺は拾い上げた石を数個、オーラを纏わせキングに投げつける
そのまま、右に移動しつつキングを挑発した
「グゥギャァー!」
ダメージが通っているとは思えないが攻撃されたことが気に食わなかったのだろう、キングのタゲが明らかに俺に向きこちらへと向かってくる
一方、伶とローラさんは反対側に回り込みつつキングから距離を取りながらゴブリン達を魔法で攻撃していく
キングが全体の指揮よりも俺への敵意を優先した為、命令から解放されたゴブリン達は遠距離からの一方的な魔法攻撃の元を断とうと伶とローラさんへ向かっていく
そのまま俺達はキングとゴブリン達が一直線上になるように移動してその両端から攻撃する形に持っていく事が出来た
ターン制のRPGでは関係ないがMMORPGなら位置取りは基本だ
先ほどまでの様な形で多数を相手取ると此方の攻撃は分散される上に、囲まれない様に動かなければならない為連携など取りようもない
少数で多数を相手取る時には配置の問題をクリアする事で状況を有利に展開できる。知能の低いゴブリン達はこちらの思惑にうまくはまったくれた
俺の方に向かってきたキングは石の棍棒を振り上げると無造作に殴りつけてくる
刀を鞘に戻した俺は、威力は有るが速さも鋭さもないその一撃を身体を半身にすることで躱す
力任せに振るわれるそれは通り過ぎる時に『ブォ』と風を切る嫌な音を出すが、『神眼』で攻撃の軌跡を見切っている俺にとって躱すだけなら造作もない事だ
斜めに振り下ろされた棍棒が躱されるとそのまま横に払らい躱される。また持ち上げ振り下す
躱されても工夫することなく上半身の力だけで迫る単調で大振りの攻撃を、俺はその場から動かず一定の距離を保ったまま上半身の動きと足さばきで躱しつつ時間を稼ぐ
俺が時間を稼いでいる間にキングの後ろではローラさんの魔法が、時に爆発を起こしてゴブリン達を吹き飛ばし時に竜巻で切り裂きながら巻き上げる
本能のまま直線的に動くゴブリン達は伶とローラさんの前に立つゴーレム達に阻まれ一塊になったところを三本の尻尾になったローラさんが放つ複数の範囲魔法の餌食になっていく
これは相性の問題だ
先程のキングとアイアンゴーレムの戦いはパワータイプ同士の戦いだった
おそらく単体ではアイアンゴーレムの方が強いと思うがキングにはスキルが有る。お互いに相手を警戒している為にけん制しあい時間が掛かる
その間にスピードタイプの俺と防御主体の伶はゴブリン達の数の力で消耗させられてしまうのだ
しかし、俺がキングを受け持てば状況が変わる。
ローラさんの範囲魔法なら複数を攻撃できるしゴブリン達ではゴーレムの守備力を抜く攻撃も出来ない
こちらの長所が生きてきて相手の弱点を突くことができるのだ
腰に佩いた刀を押えながらキングの攻撃を躱していく事を続けていると、両手で棍棒を振り上げ何かを溜める様に動きを止める
同時に赤い光を発し始める
キングがスキルを発動させようとしている
状況を変えるべくスキルを使うのではなく、ただ攻撃が当たらない事に苛立ちを押えきれなくなったのだろう
伶が一番心配していた状況だ
俺の防御力では直撃でなくとも土砂の礫でも大きなダメージになるだろう
伶の創ってくれた防具は素晴らしい防御力を発揮できるがその為には魔力を通す必要がある。しかし俺がそれを行うと一瞬で魔力が枯渇してしまうのだ
防御できない以上、大きく跳んで避けるしか手はないだろう。実際、伶とローラさんにはキングがスキルを使ったら大きく避けると言って提案を飲ませた
しかし、俺は避けなかった
左足を半歩後ろに下げ横に開く。腰を落とし上半身を少し前のめりにして柄を押えた左手で鯉口を切る。柄を右手で掴み視線を目標に固定する
(出来るか? いや出来るはずだ…)
おれの身体からも赤い…いやキングよりも透き通った紅い光が溢れだす
全身から溢れるその光が右手に集中した時、刀を鞘から抜き放つ
鞘から抜いた勢いのまま切り上げた刀から溢れる紅い光でその軌跡をも紅く染め上げる
キングが赤い光を全身に纏いながら振り下ろしてきた一撃は刹那の間、紅い光とぶつかり合うがすぐに紅い光に飲み込まれた
棍棒を振り切った姿勢のキングの両手は肘から先を失っていた
右手一本で切り上げた刀を頭上で返し後方へ振りかぶりながら左手で空いた柄を握る。伸びきった姿勢から左足で踏込み全身の力を使って振り下ろす
まだ光を失わないその一撃は、両手を振り下ろしたことで低くなったキングの首筋へ吸い込まれ確かな手応えを残しつつその身体を斬り捨てた
キングの身体が崩れ落ち動かなくなったのを見て、残心を解いた俺は刀に付いた血糊を振り払いつつ鞘に納める
前を見るとゴブリン達を殲滅した伶が片手を上げながら小走りに近づいてくる。その後ろからはいつもの様に頭の後ろで両手を組んだローラさんが歩いてくる
俺は伶の上げた手にハイタッチしようと自分の手を合わせようとする
「無茶したら駄目って言ったでしょう!」
開口一番のセリフと共に伶に平手打ちされた…
「にゃはは、少年わきが甘いな」
うん、前も聞きましたよそのセリフ…
今年最後の投稿です
まだ初めて2週ちょっとですが今年も有難う御座いました
来年もよろしくお願いします
それではよいお年を