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キング登場

『ゴウッ』という音と共に土の壁の中に炎を纏った竜巻が天を衝き、悲鳴を上げる暇もなくゴブリン達が焼き尽くされる


「伶、無理に全部抑えようとするな。後ろに逸らしてもいいからゴーレムの消耗を抑えるのだ。少年、抜けてきたゴブリン達を任せた。オーラを抑えても斬れるはずだ慎重に始末するのだ」


 壁の中のゴブリン達を始末したローラさんがこちらに近づきながら指示を出していく

 伶が指示に従って洞窟の入り口でゴブリン達を抑えていたゴーレムを一歩下げると出来た隙間からゴブリン達が出てくる

 そのゴブリンを袈裟懸けに斬って捨てて次の奴に備える

 やはり、知能が低いようで隙間から出てきて俺達を囲もうとするのではなく、押されて出てきた感じなので余裕を持って始末していける


「伶、アイアンゴーレムは準備できるか?」

「呼ぶことは出来ますが、魔力がまだ溜まってないです」

「それでいい。キングが出てくるまでに動かせればいい」

「わかりました。『アポート、アイアンゴレーム』」


 伶が白く細いワンドを天に掲げると魔法が発動する。召喚魔法ではなく物を引き寄せる魔法だ

 流石に鉄で出来たゴーレムを連れ歩くわけにはいかないので馬車の荷台に仕舞ってあったそれが、転送され地上に降り立つ


 その黒色の鈍い光を放つゴーレムにローラさんが魔力を通していく

 ストーンゴーレムに比べて大きさは一回り程小さい。全体的にすっきりとしたフォルムで関節もあるのが判る

 ストーンゴーレムがモアイの様な感じだとするとアイアンゴーレムは中世の全身鎧みたいな感じだ


「ゥマッ!!」


 魔力の補充が終わったのか両拳を頭の上で合わせて気合の声を上げる

 何か古いアニメで見たぞ…どこの28号だよ

 隙間を抜けてくるゴブリン達を倒しながら横目でチラチラ見ていた俺がちょっと呆れていると


「ドゴォオン」


 洞窟の入り口で赤い光が広がったと思うと轟音と共にストーンゴーレムが砕け散る。


「チッ、スキル持ちか。キングが出てくるぞ。伶、少年、気をつけろ」


 キングが片手に持った石の棍棒を下げ姿を現した

 腹回りは太く短い手足に極端ななで肩で頭が小さいその姿は達磨さんに手足が生えた様な感じだ

 達磨さんの上にちょこんと頭が乗っているどこかコミカルな姿は、しかしストーンゴーレムを一撃で倒したことからも判るように異様な雰囲気を発していた


 魔力を補充していた時は一本だった尻尾を三本にしたローラさんがキングに向かってアイアンゴーレムを進ませながら魔法の詠唱を始める。強力な魔法で一気にけりを付けるつもりだろう

 しかし、それより早くキングは先程の赤い光を発しながら棍棒を振り上げ地面に叩きつけると、飛び散った土砂が礫となって辺りを蹂躙する


 土煙が収まるとそこには土埃に塗れた、しかし傷一つないアイアンゴーレムと巻き込まれたゴブリン達が倒れていた

 咄嗟に後ろに跳んだ俺と伶は被害を逃れたが、洞窟の入り口は完全に解放され仲間の死体を踏み越えゴブリン達が溢れてくる


 キングを中心にして左右にゴブリン達が広がっている。対して俺達はアイアンゴーレムを先頭にして後ろにローラさん。その左右に俺と伶がいる状態で睨み合っていた


 暫く睨み合っていた状態がキングの叫び声で動く

 キングが振りかぶった棍棒を、前に出たアイアンゴーレムが振り下ろされる前に手首をつかむことで防ぎ、殴りつけようとしたゴーレムの拳をキングが掴む。そのままがっぷり四つに組んだまま力比べの様相を呈している

 キングの左右にいたゴブリン達も動き出す。数の暴力の前に今度はオーラを出し惜しみせず、向かってくるゴブリン達を一太刀で斬り伏せていく

 次々に向かってくるゴブリン達にローラさんがゴーレムを操作しつつ魔法で援護してくれるが、動きの遅いストーンゴーレム一体で身を守る伶の援護に多くを割いているので俺の方も余裕がなくなる


 力比べをしていたキングとゴーレム。

 ゴーレムが繰り出した頭突きをまともに喰らったキングがよろけて後ろに下がるが、その分距離が出来てしまった

 頭突きを喰らった鼻っ面を押えつつ、再び赤い光を発しながらキングがスキル『ヘビーインパクト』を地面に叩きつける

 ゴブリン達の相手で余裕のなかった俺と伶は土砂の礫をまともに食らう所だったが、咄嗟に張ってくれたローラさんの魔法障壁で難を逃れる事が出来た


 結果的にキングが放ったその攻撃はゴブリン達を巻き込んだだけではあったが、後ろからは新たなゴブリン達が湧いてきており状況は良くなかった


「良くない状況じゃの…」


 ローラさんが呻く様につぶやく

 状態としては初めの対峙の時に戻った様に見えるが、ローラさんの言うように状況は良くない

 キングに対しては決定打がなく膠着状態だし、ゴブリン達は強くはないがともかく数が多い

 しかも、油断するとキングのスキルを使った攻撃が炸裂する


「伶、ちょっと聞きたいんだが、キングの攻撃はあれはなんだ?」

「槌術の攻撃スキルね。技と思えばいいのかしら…。キングが槌術を使えるとは思えないから、あの技だけ使えるのだと思うわ」


 本来、この世界でもメイスや棍棒といった槌を使っていくと『槌術』のスキルを習得するしスキルの熟練度が上がっていくと様々な技を使える様になる

 しかし、魔道具が有るのでメイスや棍棒等を使って戦う訓練をする人達はいないし、邪人たちはその知能の低さゆえに武器として使いこなそうとか考える事はない

 だから、この世界では『剣術』や『槌術』等の武器を使ったスキルを持つ者はいない


 当然、キングも『槌術』のスキルは持っていない。しかし力任せに振るう一撃が槌術の技と同じものになっているのだ

 そういった場合は単一の技がスキルとしてセットされるのだと、きちんとスキル一覧と説明書を読んでいる伶が説明してくれる


「伶、ローラさん、俺に考えがある」


 一か八かの賭けだが勝機はあるように思えた、その考えを二人に説明していく

 上手くいけば状況の打破は出来るであろうと…


いつも読んでいただきありがとうございます

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