ゴブリンの巣
またまたバトルです
ちょっと長めのバトルになります
翌朝、神殿へ向かう前にゴブリンの巣を調査する事になった
当初、俺を慰める為に出た話で巣の場所を捜索していたのでは時間が掛かるし、周りの被害と言っても一番近い集落でもポンタさん達の集落だ。獣人達の戦闘力ならゴブリン程度問題ないだろう
手間と時間を考えたらスルーしてもいいかなと思っていたのだが、あっさり場所が判ってしまった
実は駄女神さまから貰った地図にしっかり記載されていたのだ
野営する前には載っていなかったのに、俺達が巣の場所の話をしていたらいつの間にか載っていたのだ
「私達に必要な情報が更新されていくみたいね」
「う~ん駄女神さまからのアイテムとは思えないな…」
俺と伶にしてみるとカンペを見ながら話していた女神さまとアイテムの有能さが結びつかない
むしろ、使えないアイテムであっても「駄女神さまがくれたものだし…」とか納得してしまいそうだ
「にゃはは、アイテムが便利なのはいい事ではないか。それに神話で女神アスタルテといえば主神の側近で有能な神という位置づけだぞ」
「それが納得できないんだよな~ 神話が美化され過ぎてるんじゃないか?」
女神さまが聞いていても「もぉ~ひどいです~」とか言ってプンスカしてるイメージで汝に天罰を与えるとか言うイメージにはならない
一応、アスタルテ神殿も行く予定なので会えばローラさんも納得するはずだ
ゴブリンの巣だが、森の中に在るのかと思っていたが道なりに半日程進んだ森の反対側の出口付近にあるようだ
丁度、道が森を迂回するようになっていたので地図なしで進んだ場合、森の中を突っ切る形になっていたので相当時間が掛かっていただろう
ゴブリンの巣に近く少し開けた森の入り口にゴーレム馬車を止める
ゴーレム達に周辺の警戒と馬車の守りを命じて森の中に踏み入っていく
「本来ゴブリンは魔獣ではなく精霊が受肉した種族になるのだ」
「精霊!?、それなら敵じゃないのか?」
ローラさんが俺に説明してくれる
神話の時代、神々とそれを祀った人々が暮らしていた。その世界では様々な種族がおり精霊たちも同じ世界に暮らし、争いもなく豊かな自然と共に暮らす平和な世界だった
しかし人は平和な暮らしに満足しなくなり、徐々に欲望を膨らましていった
行き過ぎた欲望は邪な気となり、その邪気が集まって神と言える程の存在が出来た。その邪神とそれを祀る人々が神々との大戦を引き起こした
その時、邪神の気に侵された精霊が受肉したのが邪人と言われる種族で邪神の先兵になり人々と戦ったと神話に伝わっている
「魔獣は獣が魔力に染まって変貌した奴らだからの。ちょっと力のある獣じゃ、しかし邪人は邪な気に染まったと言っても知能はある。もっとも代が変わる度に知能も落ちての、今のゴブリン等は大した知能はないがの」
「ふ~ん、じゃあ気にしないで倒してもいいのか」
「にゃはは、少年は考えがシンプルでいいの」
「見えてきたわよ。智大油断しないでね」
少し先に洞窟の入り口が見えてくる。森が丁度切れて少し広めの空間が洞窟の前に広がっている
俺達は木の陰に隠れながら様子を窺うとそこには十五匹程のゴブリン達が集まって何かをしている
「これはちょっと不味いかもしれんな」
「そうね、洞窟の中だけで収まってないかもしれないわね」
ローラさんと伶が警戒を強めている
ゴブリンは夜行性で昼間に洞窟の外に出る事は少ない。外にいるゴブリン達の数は見張りにしては多いので、洞窟に入れないくらい数がいるのではという予測が出来るらしい
「間違いなくキングがいるの」
目を細め獲物を狩る目つきのローラさんが呟く
群れを統率するキングがいると、ゴブリンも連携を取ってくるので戦いづらくなる
こちらも戦略を練らなければ不意をつかれて怪我をすることも有るだろう
「伶、洞窟の入り口までゴーレムを飛ばせるかの?」
「ちょっと難しいです。それに此処でゴーレムを造ってもウッドかクレイにしかならないです」
伶のゴーレムは核の周辺にある素材で作成するので、木か土しかない場所で創っても大した防御力は無い物しか創れない
「せめて洞窟の入り口まで近づけばストーンゴーレムが出来ると思います」
「フム、では洞窟の前の奴らは魔法でなんとかしよう。伶と少年は入り口まで走れ」
不意を着く為に先に洞窟の入り口から、ゴーレムを侵入させたかったが少し距離も離れているので難しい
ので不意打ちを諦め、なるべく早く入り口に近づきゴーレムで封鎖してしまう事にした
封鎖されるまでに出てくるゴブリン達を始末するのは俺の役目になる
「では、行くぞ」
俺と伶が森から飛び出し洞窟の入り口へと走る。こちらに気付いたゴブリン達は立ち上がると混乱しているのか各々叫び声を上げはするが、此方へ向かってくることはない
するとローラさんの魔法で土が盛り上がり高さ2m程の壁になる。それはクルリとゴブリン達の周りを囲いその中に閉じ込める
それを横目に入り口まで走り抜けると、中から三匹程のゴブリンが何事かと飛び出してきた
武器も持たないゴブリン達へ向かってオーラを纏わした刀を振りぬく
抜き打ちで放った一撃はあっさりとした手応えで先頭のゴブリンを切り裂き、横に薙いだ勢いを殺さずその横にいたゴブリンに振り下ろす
返す刀で下段から切り上げれば三匹いたゴーレム達は全て倒れていた
伶はゴブリン達を俺に任せ、入り口の横の岩盤に手を当てゴーレムを生み出していた
昨日の様に「ズズーン」という地響きと共に入り口に二体のゴーレムが生み出され、続いて出てこようとしたゴブリン達の行く手を阻む
ほぼ初の集団戦に高ぶる気持ちを抑えつつゴーレムの向こうのゴブリン達を睨みつけていた
いつも読んでいただいてありがとうございます