帰還
あの後、指をツンツンさせて落ち込む主神のケツをひっぱたいて転移で邪神の封印の地の結界を抜けた。そのまま神域に移動しようとも思ったが、教祖と使徒ちゃん、それに邪教徒の幹部たちを放っておく訳にはいかず、面倒だったので教祖の生まれ故郷まで運んでやった。
突然、行方不明の息子が帰って来たのだから家族は感謝感激雨霰って感じで喜んでいた。報奨金は後日ギルドを通して振り込んでくれるそうなので遠慮なく貰って置く。異世界に来て殆ど使う事の無かった冒険者ギルドが此処に来て役に立ったのは嬉しい誤算だ。
ああ、そうそう。教祖の母親と妹、こりゃマザコン&シスコンになるよって位、美人さんだ。タプンっと揺れる胸で教祖が窒息しかけていたのが印象的だった。
あと、主神が妹に一目ぼれしていたのだが、「将来は母親みたいな胸になるんだぞ」と教えたらあっさり諦めた・・・筋金入りだな、コイツ
まぁそんな感じで再開を喜ぶ家族に、「行方不明の間支えてくれた仲間ですよ」といって幹部たちを押し付けておいたが、嘘は言ってないし貴族の家だ。これ位の人数は余裕で養えるだろう
一応は元の世界に戻れる事を伝えたのだが、「ニートで暮らせるのに元の世界に戻るつもりは無い」と赤毛の魔法使いに言われてしまった。
他の幹部、特にブロックなんかは「社畜生活よりよっぽどましだ」とニコニコしながら笑っていた。元の世界に戻れば高校生の俺達にとってはかなり不安の残る言葉だ
まぁ、そんなこんなで今は神界に来ている。神の饗宴で使った部屋に勢ぞろいの神さまと俺達が並んで座っている。
あの時使った円卓では無く長テーブルに神さまサイドと俺達サイドに別れて座っており、司会役のアスタルテ様がお誕生日席に座って進行役を務めている。
えっ?主神が帰って来たのだから代行が司会役はおかしい?・・・主神は正座で座らされて反省中だよ。
「さて、皆さまのお蔭で無事邪神の復活を食い止められました。お蔭で世界は救われ元の平穏な生活に戻っていく事でしょう。改めて感謝いたします」
アスタルテ様の言葉に頷く俺達。お礼は既に言われているし本題に入る前の社交辞令の様なものだろう
「伶さんと智大さんについてですか、元の世界にお戻しする準備に二日程掛かります。」
「まぁそれはいいよ。それで、元の世界に戻ったらもうこの世界には来れないのか?」
「はい、残念ながら。世界の壁を超えるには座標の検索が必要です。しかしそれは私達神でも容易に行える事では出来ません」
「私達に対する報酬は?」
「はい。まずは不躾ですが金銭での報酬。並びにそちらの世界の神にお願いして幸運値の上昇を考えています」
アスタルテ様が申し訳なさそうに報酬の中身を話す。実際、こんな報酬で済ませる様な事では無いのだという事を理解しているのだろう
借りにも命を懸けて世界を救ったのだ。
もっとも最後に教祖を倒したのは魔王様達だし俺達はチョッビと悪戯した位で大した役には立っていないのだが・・・
「いや、お金は要らないな。こう見えて実家は結構金持ちだしさ」
爺ちゃんの弟子には官僚とか大会社の社長とか重役が多い。そんな人達がいるんだから道場を継ぐ予定の俺には先々の心配はない。
更に実家は都内にある道場付きの一軒家。しかも三世代同居で子供が伶を入れて四人もいるのだ。資産的にも裕福な俺の実家なのだから、正直、お金での報酬に魅力は感じない
「さっき幸運値を弄れるって言ってたよな。それならこっちのステータスをそのまま向こうでも使える様に出来ないか?」
「そんな事で良いのですか?」
「ああ。爺ちゃんを吃驚させてやりたい」
俺達の出す条件は神さま達にとっては簡単な事だったみたいで全員一致で了解を得る事が出来た。これがローラさんみたいに強力な魔法を使えたりしたら制限が掛かったろうが、俺は魔法を使えないし伶も生産系の能力が主だ。
使い方次第では向こうの世界でも色々やらかせるのだが、世界征服だとかの大それた事までは出来ないと思われたようだ・・・実際、そんな面倒なことするつもりも無いのでアスタルテ様の判断は正しいと言える
まぁ、そんなこんなで報酬も決まって神界を去る時間が来てしまう。準備が出来るまではチュータ(仮)さんの集落で過ごす事になっている
人間味溢れる楽しい神さま達だった。いざこの世界を去る事になると少し寂しさが込み上げてくる。
それでも最後は笑顔で別れよう。転移の魔方陣の上で神さま達と最後の言葉を交わす
「それではお元気で」
「ああ。異世界も結構楽しかったよ」
「そう言って貰えると助かります」
八柱の神さま達が勢ぞろいで見送ってくれる。主神だけが痺れているのかプルプルしているが、みんな神さまらしい威厳に包まれた表情をしている
「転移!」
アスタルテ様の声が響くと一瞬にして景色が変わる
獣人達の集落の広場。そこに転移された俺達を出迎えてくれたのはこの世界で出会った人々。
「お帰り。ご苦労だったな」
代表してあいさつしてくれるチュータ(仮)さん。短い言葉だが喜びでその顔ははち切れそうな笑顔になっている
「皆も沢山聞きたい事も有るじゃろう。という事で・・・」
「「「「「宴会だーー!!」」」」
獣人さん達の声が唱和する・・・この人たち飲みたいだけじゃないのか?
そうして俺達が元の世界に戻るまで続く宴会が始まった。
食って飲んで潰れたら寝る。起きたらまた宴会というエンドレスな状態。ローラさんと伶は途中抜け出して何かしていたようだが、結局俺は逃げる事が出来ず最後まで飲みっぱなしだった。一応未成年なんだけど・・・
そうして過ぎた二日間、俺達が元の世界に戻る日が来た。
態々その為に来たのは主神マルドゥック様だ。神々の頂点に立つ主神が顕現するとは思ってなかった他の皆は吃驚して思わず跪いていた
主神と握手する振りをして打ち合わせていた事を確認する
「準備はバッチリじゃ。他の奴等にも気付かれてはおらんから心配ないぞ」
「よし、それじゃあこれが報酬だ。直ぐに使うなよ、こっちの準備が出来てからだからな」
「判っておる。じゃが速めに頼むぞ」
固い握手の裏で悪い笑顔を浮かべる主神。それにニヤって感じで返す
「ではこの世界を救ってくれた英雄の帰還じゃ。みな拍手で送るのじゃ」
主神の一言で皆が拍手してくれる。涙を流す人や笑顔で送ってくれる人。ポンタさんやタンドさんも笑っている。昨日から泣き通しで目を真っ赤に腫らしたハルカさんをローラさんが慰める様に肩を抱いている
「それじゃあ、みんな!また会おう!!」
俺の言葉で転移された俺達は召喚された時と同じ校舎に向かう通路に立っていた。勿論二人とも制服を着て鞄を持っている
時計を見ると時間もそのままだ。このまま校舎に行けば普通通りの日常になるのだろう・・・
とは言え、流石に学校に行く気分では無い。
二人で踵を返すと通学路を逆に家へと戻る。
「ハァハァ。た、ただいま」
「あら、忘れ物?」
「いや、ちょっとね。あはは、行ってきます」
母親の怪訝な顔を放っておいてそのまま家を出る
「伶!戻って来たな俺達」
「ええ、戻って来たわ」
丘の上の公園まで手を繋いで走ってきた俺達は街を見下ろす展望台で見つめ合う
そのまま軽くキスを交わすと、どちらからでも無く吹き出すように「あはははは」と笑いだす
色の違う景色。元の世界に戻ってきた喜びに浸る俺達だった・・・
無事帰還できました。
短い筈が結局いつも通りの文字数に焦りながら書いてたら少し半端になったかな?
明日で最後です。エピローグはどんな展開になるかお楽しみに
読んで頂いて有難う御座います




